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勇者学園とスライム魔王 ~ 勇者になりたい僕と魔王になった君と ~【最終章執筆中】  作者: 冒人間
第2章

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第7話 僕と貴女との決着

 

「くっ―――!」


 今のは……!?


 わたくしの目の前にいる少年……

 フィールさんを相手にわたくしは常に戦いの流れを有利に運んできたはず……!

 彼の攻撃は全て見切り、着実に彼にダメージを蓄積させ、もはや満身創痍という有り様ですのに……!


 先程……彼の攻撃を避け、回転しながら反撃に転じる……

 何度と繰り返したそれを行うべく、彼の拳を避けた瞬間――


 わたくしの脇腹に衝撃が走った――!


 わたくしは思わずその脇腹へと片手を当てる……

 ダメージと呼べるほどのものではない……痛みも殆ど残らない程度の軽い衝撃でした……

 しかし、わたくしはマジックハーブを咥え続けなければ即座に倒れてしまう身体……

 ほんの僅かな衝撃が命取りとなってしまう………!


 一体何が起きたのか……

 彼は警戒しているこちらを見て、不敵に笑みを浮かべている……


 ―――怖いですか?


 まるでそんな言葉を投げかけているかのように……!


 ……上等ですわ!!


 わたくしは彼へ向かって走り出す!!

 何が起こったのか、見極めるために!!


 先程と全く同じ様に彼は構えを取り、待ち構えている。

 そして―――!!


 ―――ヒュンッ!!


 彼の拳をしっかりと見切り、回転しながら避け、彼の背後に――っ!!


 ―――ザッ!!


 わたくしは回転を止め、その場から離れる!!

 そうして、距離を取ったわたくしの目が捉えたのは……

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()彼の姿だった。


 ………種が割れてしまえばくだらない程に簡単なお話でしたわね。

 わたくしが避けるであろう位置に肘打ちを『置いて』おく。

 わたくしが避けてから次の攻撃を出すのでは簡単に見極められてしまうと踏んで、このような戦法を取った、と……


 姿勢はとても不安定になってしまいますし、大したダメージにはならず、本来であればとても戦法として成立はしない……

 しかし、わたくしの場合は、ちょっとした衝撃であっても、このマジックハーブを落としてしまえばそれで勝負はつく……


 中々理にかなった考え方ではありますが……

 その程度の小細工はもう通用しませんことよ!!


 わたくしは即座に、再び彼へと走る!

 余計な時間を与えて、次の手を考えられる前に決着を!!


 ――ヒュッ!!


 彼の拳をもはや当たり前のように避け、そして今度は肘打ちの距離を見極めたうえで―――


 ――ガッ!

「―――っ!!??」


 何!?わたくしの視界が急に上方向へ!!??

 これは―――転んでいる!!??


 倒れていく刹那、わたくしの目に……彼の左足が前へと蹴りだされているのを見た!!

 読まれたのを読んで……足払い!?


 その疑問に答えを出すより先にわたくしは地面へと倒れ込んでしまう!!


「ぐうっ――!!!」


 わたくしは歯を食いしばり、なんとかマジックハーブを咥え続ける!!

 そして、彼の姿を――


「――!!!!!」


 ――ズオ……!


 彼は、足を思い切り振りかぶり、今にも全力の蹴りをわたくしに浴びせようとしている!!!


「ぐうっ!!!」

 ――ダッ!!


 ――ブォン!!!


 彼の蹴りがわたくしに当たる直前、なんとか転がるように彼の前から距離を取る!!

 危なかった―――


 ――ガッ!!!

「うあっ――!?」


 何――!!!

 わたくしの肩に衝撃が――!?


 はっ!しまった!今のでマジックハーブが――!!

 わたくしの口からマジックハーブが一瞬離れかけた刹那、素早く手を口へと当て、かろうじて口元にマジックハーブを留めることが出来た……!


 い、今の衝撃は………!?


 わたくしが即座に自身の周りへと目を向けると……

 わたくしの少し前方あたりに……手の中に隠しておけそうな程の大きさの、小石が……


「――っ!!」


 彼へと目線を移すと……彼は蹴りと同時に……左手で何かを投げつけたかのような姿勢でいて……!!


 彼は……小石を既に握っていた……!?

 一体いつ!?


 地面には何度も転がされていたから、小石を手にするチャンス事態はいくらでもあった……!

 しかし、わたくしがそれを見逃すはずが………!


 いや、そういえば……!

 つい先ほど、地面に倒れ込んだままわたくしに蹴りを放ってきた時……!

 あの時ならわたくしに気付かれずに小石を手にすることが……!!


「あちゃー……

 今ので決まってくれてればなぁ……」


 彼の声が、わたくしの耳に届く……

 彼はこれですべての策を出し切ったはず……いや、本当に……?


「でも……

 まだまだこれからですよ!!」


 彼は、楽しそうに笑う……!!

 まだまだ……何かを考えているかのように……!


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


「アリスリーチェ君がわざわざくるくる回りながら、相手の攻撃を避けて反撃を行っているのは別にふざけているわけでも余裕を示しているわけでもない。

 いくら動けるようになったとはいえ彼女の膂力では普通に打撃を放ったところで大したダメージにはならない。

 遠心力を上乗せでもしなければまともにダメージを与えられないというだけのことだ」


 コーディスが完全に一変した戦況を俯瞰しながら言葉を発する。


「そして相手の前でのんきにくるくる回っている余裕などない。

 ならば相手の攻撃のスキを突くカウンターしか取れる戦法は無かったということだな。

 しかし、どうしても一瞬相手に背を向けてしまうその攻撃方法は、相手が攻撃と共に『何か』をしてくると、それを捉えるのは非常に困難となる」

「攻撃と共に、小石を得る。肘打ちを出す。足払いを掛ける。小石を投げる……」


 アリエスも、その光景を見ながら、自らの認識に間違いがあったことを認めた。


「しかし、フィル君も中々にセンスがあるじゃないか。

 相手の戦法をしっかり見極める。

 自分の策に相手が対応することも考えて、次の手を用意しておく。

 それに攻撃と同時に何かをする、というのも言うほど簡単なものではないはずだ」

「フィル君……まさか、彼には格闘技術の才能が………?」


 アリエスは自分で言葉を発しておきながら、そのフィルの見た目の印象とのギャップににわかには信じられない、といった様子であった。


「ふむ……」


 コーディスは懐からある物を取り出した。

 それはつい昨日、フィルがお近づきの印にと学園関係者へと差し出したもの。

 フィルお手製のお菓子、キュルルンゼリーであった。


「攻撃を食らって、その内容を理解。

 アレンジを利かせて飽きさせない工夫を。

 そして様々な作業を同時に行うマルチタスク」

「………コーディスさん?」


 コーディスは、合点がいったような声を出した。



「もしかして、料理の心得の応用かな?」



 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 美味しかった料理は一体どういう素材で、どんな料理法なのか、いつも思いを馳せていた!

 何度も同じ料理で食べ飽きたりしないようにいつもアレンジのストックを考えておいた!!

 村で大勢の人達に料理を振舞う時や、料理コンテストで制限時間付きの時なんかは色々な作業を同時並列的に行う技術が必要だった!!!


 僕の、これまでの道のりが……今ここでしっかりと活かされている!!!


『君さ、やっぱり『勇者』よりも『料理人』――』

 うるさい黙れ!!心の中の僕!!!!


「はあああ!!」

「――っ!!」


 アリスリーチェさんは明らかに攻めの勢いが弱まっている!

 僕が腕や足を少し動かしたり、何かを隠し持っているかのような仕草をするだけで過敏に反応してしまっている!

 さっきの一連の流れが強烈に印象に残っているんだ!!


 相変わらず攻撃は避けられ、反撃を貰ってはいるけど、僕が防御に意識を割けばダメージは最初の時より断然マシになる!!


 このまま長期戦になれば……僕の方が、有利になっていく!!


「はぁ……はぁ……!」

「ふぅー……!

 ふぅー……!」


 僕ももうかなりのダメージと疲労が溜まっているけれど……

 アリスリーチェさんの方も見るからに息が上がっている。

 単純に体力を消費しているだけでなく……例のマジックハーブの副作用の症状もおそらく出ているのかもしれない……


「アリスリーチェさん……!」

「………!!!」


 そんな有り様であっても……アリスリーチェさんの目は未だ闘志を燃やし続けている。

 僕の顔をしっかり見据え、決して揺るぎはしない……!


 僕は………!


「フィルーーーーーっ!!」


 突然――

 僕を呼ぶ声が聞こえた。

 その声の方向に目を向けると……


「きゅるーーーーっ!!

 がんばれーーーー!!!」


 漆黒の身体を持つ女の子が、声を張り上げていた。


「フィルは!いつかボクと決着付けるんだよ!!

 だから!!

 こんな所で負けちゃだめだよーーーっ!!」


 ああ、そうだ……!

 僕は……『勇者』になる……!!

 そしていつか君と………!!



「そんなヘンテコ巻貝女なんかに負けるなー!!」



「だぁぁぁーーれがヘンテコ巻貝女――!!!!」

 ――ハラリ……



「あっ」

「あっ」



 ……アリスリーチェさんはビタッ!と止まると……


 ――――ふらぁ~……バタン!!!



 盛大にぶっ倒れた……………………



「「「アっ、アリスリーチェ様あああ!!!」」」


「そこまで。

 勝者、フィル」


「きゅっきゅるーー!!

 フィルーーー!!

 やったねーーーー!!」


「ええぇぇぇ………」


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


「ふ、ふふふ……

 少々、油断してしまいましたわね……

 まぁ、貴方の頑張りに免じて今日の所は勝利をお譲りして……」

「あ、あの、少し静かに……

 身体に負担を掛けないように魔力を安定供給させるのは繊細な調整が必要で……」


「今の勝負は明らかに外部からの不当な干渉による妨害行為があり、あらゆる客観的、俯瞰的、道徳的、戦術的な視点から見て本来の勝利者はアリスリーチェ様であるということは誰の目から見ても明々白々な事実であり―――」

「えっと、そのな、嬢ちゃん達。

 この模擬戦はよぉ、実力判定が目的だから勝敗に関しては特に重要視してねぇし、記録とかにも特に残んねぇからよぉ……」


「あのところでアリエス先生!」

「えっと、何?フィル君。

 悪いけど今アリスリーチェさんの対応で精一杯で……」

「実のところ、僕ももうとっくに体力の限界で、もうこれから倒れますのでどうかよろし―――」

 ―――パタン


「きゅるーーーーっ!!!

 フィルーーーーーーっ!!!」


「うーん、この2人の測定はもう十分かな。

 では、私は他の生徒達の様子を見てくるね。

 アリエス先生、後はよろしく」

「待てぇええやぁぁああああああゴラぁぁぁあああああああああああ!!!!!」

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