第45話 イーラと黒い閃光
「「邪魔はさせない………!!」」
――――ピキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキィ………!!
『氷の胸像』から―――更に『氷人形』が生み出される。
「「『組み換え』を終えた『魔王』をこの身体に取り込めば………私自身が『アクセス・コア』へ侵入することが出来る……!!
そうすれば………私は、きっと『あの人』に会える……!!!」」
―――パキ、パキ、パキィ……!!
『氷人形』が生み出される度に―――『胸像』の胸元にいるポエナの身体が崩れていく。
だが―――そんな自分の身体のことになど目もくれず、彼女は『氷人形』を生み出し続ける。
そして――――
「「誰にも……邪魔はさせない!!!」」
―――ザッッッッッッッ!!!
『氷人形』達が――― 一斉に動き出す。
それは、もはや『氷の津波』
意志を持った『災害』にも等しかった。
だが―――そんな脅威を前に―――
フィル、アリーチェ、プランティの3人は――――
「「「はああああああああッッッッ!!!」」」
―――ダッッッッッッ!!!
臆することなく―――駆ける!!
「《キッチンナイフ》!!
『規格ー4倍』!!」
「《エミッション・アクア》+《エミッション・フレイム》!!」
「《クレイ・クロウズ》!!」
フィルは自身の背丈に匹敵するサイズの『黒い包丁』を振るい――
アリーチェは重ねた両掌から超高圧の熱湯を放ち―――
プランティは両手から『長爪』を伸ばし―――
―――ガッッ………キィィイイイッッッ!!!!
―――バシュゥッッッッッ!!!
―――ガシャアアアアアッッッッ!!!
『氷人形』の群れを―――吹き飛ばし、両断し、砕き斬る―――!!
そして、そんな彼らの後方では―――
「《リストレーション・フォース》……!」
―――シュゥゥゥゥゥ………!!
スリーチェがイーラの傷を癒し、彼女が万全の力を振るえるように回復を施していた。
「…………………」
イーラは目を閉じ―――ひたすらに集中していた。
今の彼女の背に『黒い翼』は無い。
全ての魔力を――――ただ一つの魔法に集約させる為に。
―――シュオオオォォォォォ…………!!!
イーラの右手では―――『黒い閃光』が渦を巻き続けていた。
そして、数秒後―――
彼女はその目を開き―――――
「――――行くぞ!!!!」
―――ダッッッッ!!
『氷の胸像』に―――自らの姉に向かって、駆け出す!!!
「―――っ!!!
アリーチェさん!! プランティさん!!」
「分かっておりますわ!! フィル!!」
「彼女を必ず―――ポエナ=イレースの元へ!!」
こちらへと向かってくるイーラを見やり、フィル達は未だ大量に襲い来る『氷人形』達を―――
「でやああああああああッッッ!!!」
―――ガキィィイイイイイイイイッッッ!!!
イーラの邪魔をさせない為に―――撃退し続ける―――!!
―――ダッダッダッダッダッッッッ!!!
そして、イーラは―――フィル達の奮闘により作り出された、『氷の胸像』への道を走り―――
「姉様―――――」
「―――っ……!
イーラ―――!」
自らの姉の前にまで、至り―――
―――シュオオオオオオオオ!!!!
その右掌で渦を巻く、『黒い閃光』が――――
「《ダークネス・スパークル》!!!」
―――カッッッッッッッッッッッッッッッ!!!
『氷の胸像』へ向かって―――放たれる。
同時に―――
「《フェイタル・ディレクティビティ・バースト》!!!」
―――ボアッッッッッッッッッッッ!!!
『氷の胸像』の胸元にいるポエナの片腕から―――『黒い爆発』が放たれる。
―――ドッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!
2つの魔法が、ぶつかり合い―――周囲の木々が吹き飛ばされていき―――
「姉様ぁあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
「イーラァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
その2人のエルフは―――共に、黒色の奔流に飲み込まれていった。