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第15話 即席パーティと第三天・外縁部


さて……イーラさんが選んだ通路を進む僕達はというと………


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


「キシャアアアアアア!!!」


「《ラージ-ポットリッド》!!」


―――ガキィィ!!


上空から襲い掛かるクリーム色の『ハーピィ』の攻撃を、僕は『大鍋蓋』で受け止めた。


「今です!アルスさん!」

「ああ!《アイス・ボール》!!」


攻撃を防がれたことにより体勢を崩した『ハーピィ』に向け、先程僕が助けに入った青髪の眼鏡をかけた男子生徒……アルス=モートさんから『氷球』が放たれる。

その『氷球』は―――


―――ピキキキィ……!


「キシィッ……!?」


『ハーピィ』の片羽を凍りつかせた。

飛行能力を失い、墜落してくる『ハーピィ』に―――


「《ミートハンマー》!!!」


―――ガッキィィィイイイ!!!


黒い『肉たたき』を、渾身の力で叩きつけると―――その身体が、派手な音を立てて砕け散った。


「ふぅ……ありがとうございました!

 アルスさん!」

「いや、お礼を言われるようなことではないよ。

 君の負担に比べればね……」


アルスさんは申し訳なさそうな表情で呟いた。

「そんなことは……」と僕が彼の言葉に反応しようとすると―――


「フィルさん!

 今、体力を回復します!」

「ティアーさん!」


同じく先程僕が助けに入った栗毛のサイドポニーの女生徒……ティアー=グラッドさんが近づきながら声をかけてきた。


「《アリヴィエイト・ファティーグ》」


―――シュオオォォォ………!


彼女がその『魔法名』が唱えると共に、僕の身体が温かな光に包まれ―――

次の瞬間には、僕の身体から疲労と倦怠感が抜け去っていた。


「わぁ……!

 ありがとうございます!

 凄く助かります!」

「いえ、むしろこれぐらいしか役に立てなくてごめんなさい……

 私の回復魔法は体力の回復は出来ても、怪我を治すことは出来ないから……」


ティアーさんもまた、申し訳なさそうな表情でそんなことを告げる。

2人とも僕からしてみれば十分に役に立ってるんだけどなぁ……


「おーい!

 こっちも片付いたぞー!」


「アニーさん!」


先程イーラさんに向かって真っ先に声を荒げていた男勝りな女生徒……アニー=ウォルフさんが離れた場所から声を上げ、他の数名の生徒達と共にこちらへやってくる。

アニーさんはミルキィさんに負けないくらい大柄でダークブラウンのボサボサ髪の女性だった。

その口調に負けず劣らずにワイルドな風貌だ……

彼女は残った生徒達の中でも直接戦闘に長けた魔法の持ち主であり、僕と並んでこの即席パーティのメイン戦力の1人であった。


「最初はどうなることかと思ったけど……だいぶアタシ達で連携も取れるようになってきたし、この調子なら問題なく進めそうだな!」

「はい!」


あれから通路を進む僕達は、何度かクリーム色の魔物の襲撃にあった。

『ロック・リザード』だけでなく『ヘルハウンド』や『ハーピィ』……この前の襲撃事件で見た魔物達も現れるようになり、僕達は当初苦戦を強いられたけど……

アニーさんの言っている通り、皆で連携が出来るようになってくると対処はそう難しくなくなっていた。


僕は仲間の大切さというものを実感すると共に―――


「まぁ……『アレ』は連携なんてお構いなしみてぇだけどな」

「………あはは………」


「ふん」


ここよりもっと離れた場所で、自分ひとりで魔物を難なく撃退しているイーラさんを横目にして、何と言葉をかけるべきか分からず愛想笑いを浮かべるのであった……


「それにしても……あとどれくらい進めば外縁部の部屋に辿り着けるんでしょうかね……

 制限時間のことも気になりますし……」


『試験』がスタートして5時間以内に『宝珠』を手に入れて中央部まで戻ることが合格の条件だとコーディス先生は言っていたけど……

僕達が通路に入って、もう既に2,3時間ほどが経過してしまっている。

ここから中央部へ戻る時間を考えると……もうそろそろ『宝珠』を手に入れないと不味いよな……


そんな風に僕が不安を感じていると……


「外縁部まではもうあと少しで着くぞ」


「え?イーラさん?」


イーラさんが僕達へそんな声をかけて来たのだった。

相変わらずこちらには一切顔を向けないままだけど……


「……なんでそんなことが言えるんだよ」


アニーさんが不機嫌そうな口調でイーラさんへ疑問を投げかけた。

どうもこの人はイーラさんと相性が悪いみたいだ……まあ、大抵の人がそうなるとは思うけど。


「ふん、単にここまで移動した距離とこの建物の外観の広さから逆算しただけだ」


そんなことも分からないのか、とで言いたげな呆れ口調でそんなこと言うイーラさんに対し、「てんめぇ何を偉そうに……!」と拳を震わせるアニーさん。

そんなアニーさんを「抑えて抑えて……!」と必死に宥める僕……


それにしてもイーラさん……僕達に手助けなんかしないって言ってたけど、わざわざそんなことを教えてくれるなんて……


僕がそんな思いでイーラさんを見つめていることに彼女が気が付くと、「ふん!」というもはや聞きなれた鼻息と共に、足早に先へと進んでいくのだった。


「あっ……僕達も行きましょう!

 早く『宝珠』を手に入れて中心部に戻らないと!」

「ああ、そうだね!

 急ごう!」

「チッ……!」


僕の言葉にアルスさんが続き、何か言いたげなアニーさんもとりあえずは矛を収め……僕達はイーラさんの後を追うように先へと急いだ。


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


そうして……僕達は走り続け………


辿り着いたのは―――


「ここが………外縁部………?」


そこは最初に僕達が強制的に集められた部屋以上の広さを持つ円形状の空間だった。


「あっ、イーラさん!」


その空間の入口近くには、イーラさんの姿があった。

彼女は特に奥に進むでもなく、ただ黙って立っているだけだった。


一体どうしたのか聞くために僕達は彼女の元へ近づこうする。

そして空間の中へ僕達全員が入った、その瞬間―――


―――ズンッ………!


「―――!?

 出口が……!?」


この空間へのただ一つの出入り口が……クリーム色の壁によって閉ざされてしまったのだった。


広い空間………

無くなった出口………


僕は―――この状況にどこか既視感を抱いていた………



そして―――



―――ズゥン…………!


「―――――っ!!??」



その、聞き覚えのある振動音に―――僕は、身体から嫌な汗が噴き出すの感じた。


「…………『アレ』が部屋の真ん中で何の反応もなく佇んでいてな。

 もしかしたらと思ったが………やはり、ここにある程度の人数が集まってから動き出す仕掛けだったようだな」


イーラさんがかける言葉が、僕にはどこか遠くに聞こえていた……


この空間の中心に佇んでいた『モノ』………


10メートルの巨躯を持つ、『それ』の名は―――



水晶(クォーツ)……ゴーレム……!!」



そう……見間違えようはずもない。

かつて僕の命を奪いかけた……体色をクリーム色に変えた『水晶ゴーレム』が、そこにいた―――


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