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第12話 皆とそれぞれの戦い:その1


「《エミッション・アクア》!」


―――シュバァッッ!!


指先より放たれた高圧水流が―――


―――ピキィッッ!!


クリーム色の『ロック・リザード』の胴体に傷をつける。


そして、即座に―――


「はぁあああああ!!!」


―――ギャリリリリィィィィ!!!


『装甲』を身に纏ったアリーチェが『ロック・リザード』へ肉薄し——


―――ギャキィッ!!


両腕部から突き出た2本の剣を、先程の攻撃でできた傷へと突き刺すと――!


「はぁッ!!!」


―――バッッキィィィ!!!


両腕を無理やり広げ―――『ロック・リザード』の胴体を砕き、両断した―――!


「――ふぅ……!

『アーティフィシャルフラワー・モード』……解除」


―――ガチャガチャガチャ……


一息ついたアリーチェがそう呟くと、自らが纏っていた『装甲』が解かれ……一瞬の内に『車椅子』へと戻り、自然と腰を下ろす状態になっていた。


「わたくし1人で対応すること自体は出来ますが……

 無計画にこれを使用し続けるとすぐに魔力バッテリーが尽きてしまいますわね……」


「ですので……」と呟いたアリーチェは、背後へと振り向いた。


「ここからはどうか皆さんのお力もお貸しいただけますでしょうか。

 無論、わたくしもまた皆さんのお力になれるよう、自分に出来ることを可能な限り務めるつもりですわ」


「え、ええ、はい………!

 も、勿論です……!」

「せ、精一杯頑張ります……!

 至らぬ点があったら、申し訳ありません!

 マーガレット様……!」


アリーチェに声をかけられた生徒は緊張と畏怖の念を込めた返事を返した。

相手が『ヴァール』大陸屈指の大貴族の令嬢ということに加え、先程目にした凄まじい戦闘風景が彼らの目に焼き付いて離れないのだ。


あらゆる意味で自分たちより遥か高みにいる存在に、この場に残った生徒達は完全に委縮してしまっていた……


「もう、名前呼びで構いませんわよ。

 今ここに残っている貴方達は十分な実力をお持ちなのですから、対等な立場で接してくださいな」


「そ、そんな恐れ多い!

 ガーデン家のお人にそんな無礼なこと……!」

「そ、そうですよ……!

 私達なんかが対等だなんて……!」


うーん……上級貴族に対しては正しい態度なはずなのですが、なんだか新鮮に感じてしまいますわね……

この学園に来てからこっち、ファーティラ達以外からは敬意の念の欠片も感じないコミュニケーションばかり取られてきましたから……特にあの『スライム魔王』辺りに。


と、そんな思考はとりあえず脇に置き……


「なんにせよ……いつまでもここで立ち往生している訳にもいきませんわ。

 今はとにかく前へと進まなければ」


そう言ったアリーチェはこれからの行動について思案した。

そして彼女はこことは別の場所にいるエルフの少女……イーラと同じ結論に至った。

すなわち、『ロック・リザード』が1番多く出てきた通路を選ぶという判断である。


他の生徒達はその如何にも危険そうな道を選ぶという方針を聞かされた際、戸惑いを隠せない様子ではあったが……


「不安でしたらわたくしが先頭に立ち危険を引き受けますわ」


アリーチェのこの発言により、その場にいた生徒達は奮起したのだった。

やはり彼らにもまた『勇者』を目指す者達としてのプライドがあるのだ。


そんな生徒達の様子に微笑みつつ、アリーチェは独りごちた。



「さて……他の皆さんはどうされておるのでしょうか……

 まあ、あの方々に心配など無用でありましょうが」



 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


「《マルチプル・サンダー・カノン》!!」


―――ピシャア!ピシャア!ピシャアアアア!!


ある場所で―――


褐色肌高身長の少女……ファーティラ=ガーデニングが放つ『雷砲』の連撃が―――『ロック・リザード』の全身を焦がし、その身体を炭の塊へと変えた。


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆



「《アクア・ジェイル》……からの……!

 《ヘヴィー・アクア・プレス》……!!」


―――ゴボゴボ……ゴボベキベギボゴギィ……!!


ある場所で―――


小柄な金髪おかっぱの少女……ウォッタ=ガーデニングが中空に生み出した『水の牢』に捕らえられた『ロック・リザード』が―――凶悪なまでの水圧により、その原型を留められぬ程に圧壊された。


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


「《ガスト・ブースト》最大出力……!

 奥義―――《風舞・絶閃》!!!」


―――ボッッッ…………キィィィィン!!!


ある場所で―――


黒髪ポニーテールの少女……カキョウ=ガーデニングが自身の唯一持つ魔法の力を最大限に乗せた『一閃』により―――『ロック・リザード』の身体を『縦』に両断した。


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆



同じ時、異なる場所で―――そのお付き達は同時に叫ぶ。


「「「一刻も早く!!

   アリスリーチェ様の元へ!!!」」」



「ひ、ひえぇぇぇぇ……」


その鬼気迫る表情と戦いぶりに、周りの生徒はただひたすらに戦慄を覚えるのであった……


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


「怪我をしてますのね!すぐに治しますわ!

《リストレーション・フォース》!

 索敵しますわ!少しお待ちを!

《ディスカバー・エネミー》!

 はっ!あちらの通路に敵影発見ですわ!

《ブロウアップ・ブラスト》!」


―――ドォオオオッッ!!!


「ふぅっ……!

 何とか落ち着きましたわね……

 皆さん!隠匿魔法をかけますのでどなたか斥候をお願い致しますわ!

《プレゼンス・ハイド》!」


「いやあの子……ちょっとなんでも出来過ぎ……」


銀髪ツインテールの少女……スリーチェが多種多様な魔法を披露していく様を見つつ……二種類の中等魔法が使えるということが密かな自慢であった生徒が遠い目をしながらポツリと呟いた。


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


「早く……!!

 ああ早く!!早く!!

 お嬢様の元へ行かなければ!!

 お嬢様の身に危険が迫る前に!!!

 私の精神が崩壊する前にぃぃいいい!!!」


―――ゴキャゴキャゴキャゴキャッッ!!!


「す、凄……!

 あの『ロック・リザード』の群れの中に突っ込んで……!

 次々に、殴り倒していってる……!!」

「うん……確かに凄い……けど、なんだろう……

 あの人なんか『ロック・リザード』より僕達の方を見て怯えているような……」


突然、顔見知りが1人もいない初対面集団の中に放り込まれた超絶コミュ障お付き、プランタ=ガーデニングは主の身と己の精神を守る為、ひたすらに雄叫びを上げ爆進し続けていた……


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