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第2話 僕と穏やかな日常


さて、それからの僕達はといえば―――


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


「3次募集組は模擬戦による実力判定。

 2次募集組は大陸西側での魔物討伐活動。

 そして1次募集組は2次募集組のサポートに入って欲しい」


「それって………!」


校舎前広場に集まった全学園生徒に向かってコーディス先生から今後の活動内容が語られる。


3次募集組の模擬戦は以前の僕達と同じであり大した驚きはなかったけど……

新しい入学者組改め2次募集組、そして先行組改め1次募集組に告げられたその内容は――


「ああ、前回の魔物討伐活動でサポートに入っていた調査隊員の役割を君達1次募集組に行ってもらう、という訳だ。

『あの経験』を得た君達ならば、十分にこなせると判断した」


「―――!」


直接言葉にせずとも、コーディス先生が言っていることの意味が僕達1次募集組には分かった……

あの日……スクトさんによって引き起こされた、あの襲撃事件……

アレを乗り越えた僕達になら、何も知らない2次募集組の生徒を任せられる……

コーディス先生は、そう言っている……!


「もし、その役割を果たせるか不安で辞退したい者がいたら私に声をかけてくれたまえ。

 こちらで『お留守番』していることを許可するからね」


―――むっ……!


天然なのか計算なのか……

コーディス先生のその挑発的な言葉にカチンと来た僕達の中に、誰一人として辞退する者はいなかった……


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


「こんなにも早くお姉さまのお隣で一緒にご活動出来るとは思いませんでしたわー!」

「浮かれすぎですわよスリーチェ。

 全く……ついこの間『学園の方針に従ったうえでわたくしの隣に立ちなさい』と言った矢先にこんなことになるとは……」


スリーチェが満面の笑みを浮かべ、アリーチェさんは何とも微妙な表情で頭に片手を当てていた。

アリーチェさんとしてはスリーチェと共に並び立つのはもっと日が経ってからを想定していたのだろうな……

まぁ、ああは言っているけどアリーチェさんも満更ではないのだろう。

やれやれとでも言いたげな態度を取ってはいるけど、よく見ると口元が緩んでいた。


「キュルルさん!

 キュルルさんともご一緒出来てわたくし――」


「…………………………」


おや……?


「キュルルさん?もしもしー?」

「――きゅるっ!?

 あ、う、うん!ボクもスリーチェと一緒に学園かつどー出来て嬉しいよー!」


何やらボーっとしていたキュルルが慌ててスリーチェに返事をする。


「キュルル、どうかしたの……?

 なんか考え事してたみたいだけど……」

「んーーー………」


今のキュルルの様子が気になった僕がそう尋ねると、キュルルは腕を組み、首を傾けながら唸る。


「なんかねー……最近変な夢見るんだよねー……」

「変な夢?」


「うん、どんな夢だったかは目を覚ますと忘れちゃってるんだけど……

 なんか……すっごく嫌な気持ちになるんだよねー……」


そういや、この前講義室で居眠りしてた時もなんかうなされていたような……


キュルルはそのまま「うーん……」と首を傾け続け、頭が半回転以上し続けた辺りで「それ怖いから止めて」と僕は声をかけた。


「どうせ何か変なモノでも食べて身体の調子がおかしくなってしまった、とかではありませんの?」

「変なモノってなんだよアリーチェ!

 ボクはここでのご飯以外はその辺に生えてる草とかキノコとか、あとたまに虫とかしか食べてないよ!」

「ええ、分かりました。

 とりあえずしばらくはわたくしに近づかないようにお願いしますわ」


掴みかかろうとするキュルルをカキョウさんが持っていた日傘を使って「ぐぐぐ……」と押しのけようとするアリーチェさん……


キュルルの変な夢とやらは気になるけど、こののどか(?)な光景を見ているとそう深刻に考えなくてもいいんじゃないかと思えてくるなぁ……


まあ、今すぐどうこう出来るものでもないし、とりあえずは様子見かな……

あまりにキュルルの調子が悪くなりそうならリブラ先生に相談してみようか。


あ、そうだ!

リブラ先生といえば、僕もあの人に相談したいことが……


と、そんなことを色々と考えながら、僕達は大陸西側へ赴くのであった―――


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


「はぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーはっはっはっはっは!!!!

 ここで初めて魔物討伐を行う者達よ!!!!

 よぉく聞くがいい!!!

 この最強勇者コリーナ=スタンディが!!!

 お前達を教え導いてやろう!!!!

 勇者とは一体どういう存在なのか……しかとその目に焼き付けるのだぁああああああ!!!!!」


「では予定通り僕達がローテーションでコリーナさんの暴走を抑えて他の生徒達を負担を軽減するサポートを行いましょう。

 今日はヴィガーさん、よろしくお願いします」


「なぁ、サポートって一体なんなんだろうな?」


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


といった感じで……まあ色々と騒ぎは起きつつも、以前のような大きな事件などは起きずに学園生活3週間目は終わった。

そして4週間目になると3次募集組も大陸西側での魔物討伐活動に参加することになった。


余談になるけど、入学者募集についてはコーディス先生曰くそろそろ頭打ちだろうということで随時募集という形に切り替えたとのことだ。


そんな3次募集組参加の学園活動は―――


 ◆ ◆ ◆ ◆


「はああああああああ!!!!」


―――ビュオオオオオオオ!!!!


「「「グゴォオオッッッ………!!!」」」


………僕達は、目の前の光景を唖然としながら見上げるしかなかった……


かつて僕達が相対した魔物……『ロック・リザード』が………


5,6匹まとめて『黒い竜巻』に飲み込まれていく光景を………


「ふん……ぬるいな」


その竜巻を生み出している『エルフ』……イーラさんはそう言いながら目の前に差し出していた掌をグッ……と握り込む。

すると竜巻はピタリと止み……


―――ボトボトボトボトッ………


上空から……もはや元の形など判別不可能になった『ロック・リザード』の肉片が……降り注ぐのだった………


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


「イーラさんのあの黒い竜巻……

 やっぱり『風魔法』……なんでしょうか……」


サポートなどという配慮が馬鹿馬鹿しく思えてしまうイーラさんの討伐風景を目の当たりにした僕は、隣にいるアリーチェさんにぽつりと訪ねた。


「いえ、あれは恐らく……『闇魔法』ですわ」

「え!?や、『闇魔法』……!?

 それって……!?」


顎に手を当てながら答えたアリーチェさんに、僕は思わず振り返りながら疑問の声を上げる。


「『光魔法』に並ぶ使える者は非常に稀と言われている魔法でして、その特性は……

『光』以外の()()()()()()()()()()()()()()()()()()、というモノですわ」

「ええっ!?あ、あらゆる属性を兼ね備える……!?

 ど、どういう意味ですか!?」


「言葉通りの意味ですわ。

 まるで炎魔法のように対象を焼き尽くすことも、氷魔法のように凍てつかせることも、雷魔法のように感電させることも……そして、風魔法のように吹き荒らすことも……

 その魔法一つで再現することが可能となる『マルチプル・エレメント』属性……それが『闇魔法』ですわ」

「んなぁっ……!」


つまり、あの『黒い竜巻』は……彼女が使う魔法の、ほんの一面でしかなかった……!?

僕がそんな戦慄に襲われていると……


「ふん……この程度でそこまで怖気づくとは、やはりこの学園の実力は高が知れるな……」


と、僕達の会話を聞いていたイーラさんがいつもの鼻息と共に話しかけて来た。


「私の魔法など兄様に比べればまだまだ未熟もいい所だ。

 それに、私の故郷の『里』にいる同族にも私以上の実力を持つ者はいくらでもいるのだからな」


「ひえぇぇぇ………」


イーラさん以上の実力者がまだまだいる……『エルフ』恐るべし……

そして、そんな『エルフ』達でさえ太刀打ち出来ないであろうと言われる『魔王』……

そしてそして、そんな『魔王』を討ち倒した勇者様達……


そんなこの世界における力関係を想像し、その途方もなさに眩暈を覚えてしまうのだった……


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆



とまぁ、そういった感じで『比較的』穏やかな日々を過ごし――


早いもので、僕達の学園生活も1ヵ月が過ぎようとしていた。



そんな時だった。


校舎の掲示板に、あの『告知』が張り出されたのは――


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