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第3話 僕と婚約者


スリーチェの言葉を受け僕はしばし思考停止していた。


フィルダン……え、なに?


「あ、貴方があのフィルダンテ様……!?

 選ばれた者にしか扱えない伝説の黒き剣を持つという、あの……!」


いや伝説の剣て。なにそれ。


「あ、あの!

 も、もしよろしければ私にその剣をどうかお見せして頂けませんでしょうか!」

「え、あ、はい。

 いや、その剣ってのがコレなのかどうかは保証しかねますけど……《キッチンナイフ》」

―――グニュニュ……


フェンスさんに懇願された僕はとりあえず『包丁』を出した。


「うおおおおおおおおお!!

 ほ、ホントに虚空から出現した!!

 こ、これがアリスリーチェ様を卑劣な罠に嵌めた悪漢を一刀両断に成敗したというあの……!!」


いやしてない。そんなことしてないよ。


「ああ……スリーチェ様が仰られていた話は本当だった……!

 し、失礼いたしましたフィルダンテ様!

 どうぞお通りください!!」


フェンスさんは感涙しながら両拳を震わせていた……


「スリーチェ……

 貴女彼女に……いえ、この屋敷の者達に一体何を吹き込んでおりましたの……」


アリーチェさんはふるふる震えながらスリーチェを問い詰めた。


「うふふー!実はですねー!

 お姉さまのお手紙に書かれていた内容をお屋敷の使用人達にもお伝えしておきましたのー!

 まぁ、ほんのちょっと脚色したりもしておりましたが!」

「……その『ほんのちょっとの脚色』とは?」


「えーっと!

 例えばフィルさんは自分にしか使えない黒き聖剣を持つ者だとかー。

 その聖剣でお姉さまに狼藉を働こうとした卑劣な輩を一刀のもとに斬り伏したとかー。

 そんな姿を見たお姉さまはフィルさんを婚約を申し込んだとかー。

 まぁ、そこまで事実と違いはありませんわ!」

「おもッッッくそフェイクニュースまみれでございましてよ!!!」


アリーチェさんが頭を抱え悶絶する……

そして僕もまたおずおずとスリーチェに疑問を投げかけた。


「あの、スリーチェ……

 フェンスさんが僕のこと『フィルダンテ』とか呼んでたけど……アレなに?」

「あ!それはですね!

 実はわたくし達ガーデン家って常に女性ばかり生まれる血筋らしくて、夫となる者は外部から来られるのですけれど……その者には伝統として『ダンテ』の名が付けられますの!」


「そうなんだ……そういやアリーチェさん達のお父さんも『ヴェルダンテ』って名前だったっけ……

 じゃあ『ブレスドレイン』は?」

「ミドルネームは基本的に自由に決められますのでわたくしの方で考えてみたんですの!

 お父様が『太陽の光』でしたので、その対比として『恵みの雨』にしてみましたのですけれど……どうでしょうか!」


「へぇ……中々洒落てる感じがするね」

「でしょう!

 フィルさんなら気に入ってくれると思いましたわー!」

「フィル!!!

 貴方自分が勝手に改名されてる事実にもうちょっと言うことありませんの!!??」


アリーチェさんがすかさずツッコミに来た。


「というか、そんなあからさま与太話を何故フェンスは信じておりますの……」

「いやーフェンスってああ見えて『伝説の剣』とか『特別な力』とかそこら辺のワードに弱いみたいで……

 フィルさんの『エクシードスキル』を生で見せてあげれば懐柔出来るかもと思ってたんですけど予想以上でしたわねー」


どう見てもコレ『包丁』なんだけど……

フェンスさんは子供のように目を輝かせ続けていた……


「ですがお姉さま……フィルさんをこのお屋敷に迎え入れる為にはこの方法しかないと思いますけれど……?」

「うっ………そ、それは……」


スリーチェがニヤリと黒い笑顔を浮かべてアリーチェさんに擦り寄る。

そしてアリーチェさんはチラチラと僕を何度か見つつ―――


「え、えっと、フィル……も、もし貴方が嫌でなければ……

 その……この場だけの誤魔化しとして……あ、貴方が……

 わたくしの……婚約者ということに………

 あの………ダメ、ですか……?」


と、顔を赤らめつつ話してきた。


う……な、なんか僕の顔も赤くなってきた……


「い、いや……別に、ダメってことはないですけど……

 アリーチェさんの方こそ、僕みたいなのが婚約者なんて嫌じゃ……」

「い、いえ!そんなこと!

 全然、嫌なんかじゃありませんわ!

 むしろ嬉し――っ!いや!!!

 なんでもありません!!

 忘れてくださいまし!!」


と、アリーチェさんが顔を真っ赤にしながらまくし立てるのだった……

うう……なんか、凄くむず痒い……


「●REC」

――ジーーー………


「で、ファーティラさん。

 貴女は何を謎のマジックアイテム越しにこちらを見ているのですか?」

「いえ、お気にせずに。

 お2人の甘酸っぱいお姿を是非この映像記録マジックアイテム『ヴィデオキャメラ』に収めておかねばと私の心が叫んでいるだけですので」


「ねぇスリーチェ。

 フィルがアリーチェのコンニャクシャだかなんだかって、なに?」

「それはですねキュルルさん。

 お姉さまはフィルさんに今までお礼としてコンニャクを贈呈し——」


まぁ、そんなこんなで、僕達はアリーチェさんのお屋敷の中へと招かれることが出来たのだった。


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


「あの、それでフィルダンテ様はともかく、そちらの方は……

 というか魔物……ですよね……?」

「あ、えっと、キュルルはその……!」


「コレは『ペット』ですわ」

「え」「あ゛?」


「え……ペット……?」

「ええ、わたくしは初代勇者を超える『勇者』を目指す者。

 魔物を倒すだけでなく、手懐けるくらいはしてみせませんと。

 コレはその第1号と言った所ですわ」

「なるほど、そういうことですか……!

 流石はアリスリーチェ様!」


「まぁきぃがぁいぃぃぃぃ~?」

「キュルル……!ここは……!

 ここはどうか抑えて……!」


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