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第6話 貴女と明日の予定


《 エクスエデン食堂 》


「アリーチェ達、来ないねー。

 ボク達がご飯食べてるうちに来るかと思ってたのに。

 ボクもうおかわり4回目だよ」

「うーん、でももうちょっと居れば来るかもだし、もう少しおかわりしつつ待ってみようよ。

 僕、後3回くらいおかわりするだろうし」

「うんそうだね!

 ちなみにボクは後5回はおかわりするよ!」

「お前らとっとと出てけ」


そんな厨房からお叱りの声を受け僕達は食堂から渋々退散するのであった。


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


「むぅー……ボク食べたりないよー。

 ねぇフィル、この前の黒いプルプルまた食べに行ってもいーい?」

「キュルルンゼリーね………いや別にいいんだけど、どうにもこう共食い感がなぁ……」


と、そんな話をしながら廊下を歩いていると―――


―――ガチャ……

「よろしいですわねスリーチェ。

 このことは―――っ」


「あっ!アリーチェさん!」


丁度スリーチェの部屋から出てきたアリーチェさんとファーティラさん達に鉢合わせた。

ドアのすぐ近くにスリーチェの姿も見える。


今、スリーチェと何か話していたような……?


「もー!アリーチェもスリーチェもおそーい!

 折角食堂で待ってたのにー!」

「……申し訳ございませんでした。

 こちらとしても思っていた以上にスリーチェとの話が長引いてしまいまして。

 食事はこちらで軽くではありますが済ませておきましたの。

 ね、スリーチェ」

「え、ええ、そうでしたの。

 ごめんなさい、キュルルさん、フィルさん……」


スリーチェがドアの陰から顔を覗かせ僕達に謝罪する。


「えー!そんなにスリーチェの『ひおーぎ』について話してたのー!?

 ボクも聞きたーい!スリーチェの『ひおーぎ』ー!!」


「え、えっと!ご、ごめんなさいキュルルさん!どうしても言えませんの!

 なんせ秘奥義中の秘奥義なので!そんじょそこらの秘奥義とは違うので!

 そりゃもう、ここ数年の中でも一番の秘奥義でして――」

「スリーチェ、貴女ちょっとお黙りなさいな」


あからさまな焦りを見せるスリーチェをアリーチェさんがぴしゃりと諫めた。


「それでフィル、キュルルさん。

 わたくし達、明日は2人水入らずで街へと赴くことに致しましたの」

「え……アリーチェさんとスリーチェの2人でですか?

 でも、確かスリーチェは……」


新しい入学者組の学園活動は明日もあり、スリーチェは休養期間を蹴って学園活動に参加を希望していたはずでは……


「それが、この子ったらやっぱり無理をしていたようでして……

 無理に魔力を使った身体への反動は完全には回復できていなかったようですの。

 身体的、精神的にまだ不調気味で……それでさっきからちょっとおかしな言動をしておりますのよ」

「え!そんな!お姉さま!

 わたくしの言動におかしなところなんて!

 わたくしはただ秘奥義の内容を聞かせる訳にはいかないという完璧な言い訳を―――」

「と、御覧の通り自分でもおかしなことを言っているのを自覚できないという割と深刻な症状も見せておりますし、わたくしが無理にでも休ませようと考えた次第ですの」


うーむ、思わず納得しかけてしまう……


「スリーチェ休むの?

 きゅるー!だったらボクも一緒に街に行きたーい!」

「もう、キュルルさん。

 話を聞いておりましたの?

 スリーチェの心身を休ませるための休養なのですよ?

 アナタのノリに付き合わせてしまっては余計に負担になってしまいますわ。

 スリーチェにはこの街の保養地でゆっくりして貰いますので、明日はわたくしに任せて大人しくしててくださいな」


「えー!!なにそれーー!

 ボク、負担になんてならないよーーー!

 ただスリーチェと一緒にいろんなお店を100件ぐらい回ろうと思ってるだけだよーー!」

「スリーチェを殺したいのでしたら素直にそうおっしゃりなさい」


わーわー!と不満の声を上げるキュルルをアリーチェさんはさらりと無視し、僕の方へと向き合った。


「フィル。そういう訳ですので明日は1日スリーチェと共に過ごしますわ。

 貴方には出来ればそこのスライム魔王が余計な行動をしないように見張っていただいて欲しいのですけれど」


キュルルが「余計な行動ってなんだよー!!」と両手を振り上げて怒りの声を上げる。

僕は少しの間、黙っていたけど……


「……はい、わかりました」


アリーチェさんにそう返した。


「えー!そんなぁー!フィルー!」

「しょうがないよキュルル。

 スリーチェの為だもん。

 キュルルだってスリーチェには元気になって欲しいでしょ?」


僕の言葉にキュルルは「うぅー……!」と唸りつつもそれ以上騒ぐことはなかった。


「スリーチェがしっかり休んで、元気になった後、皆で一緒に遊びに行こうよ、ね?」

「うー……分かったよー……

 じゃあじゃあ!明後日になったら一緒に遊ぼう!

 ね、スリーチェ!」


「………ええ!もちろんですわ!キュルルさん!」


……今また、スリーチェが少し言葉に詰まっていたような気がする……


「それではお2人とも、わたくしは自分の部屋に戻らせていただきますわ。

 明日のお出掛けの用意を致しませんと」


そう言ってアリーチェさんとファーティラさん達は僕達の前から立ち去って行った。


「えっと、それでは、わたくしも今日はこれで……

 フィルさん、キュルルさん、ごきげんよう」


―――パタン……


スリーチェもまたそう言いつつ部屋のドアを閉める。


そのドアノブに触れる手には、確かに紙のようなものが握られていた……


「折角スリーチェと遊べると思ったのになー。

 あ!でもさでもさ!考えてみれば明日はボクとフィルとで2人っきりってことだよね!

 きゅるーっ!!ね、ね!だったらさ!明日は2人で街に―――」

「ねぇキュルル」

「―――きゅる?」


僕はキュルルにある相談をした―――


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