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最低最悪な出会いの日

竜の被害で町が壊滅しています。

 

 竜に襲われた村がどうなるか、……。

 そう、全滅。


 地竜に襲われれば、大地に呑み込まれる。

 水竜に襲われれば、すべて流される。

 火竜に襲われれば、消し墨しか残らない。

 氷竜に襲われれば、永久凍土の中で時が止まる。


 風竜に襲われれば、目も当てられない。



 そう、私の村は風の竜に襲われた。

 突風に見舞われて、突き刺さる枝。そして、その枝に突き刺さるようにして飛ばされてくる人間。逃げようにもすでに足も付いていない状態で、風の渦の中で目を瞑る。

 小石が礫となって、私の体を痛めつけ、いつ木の枝が凶器になるかも分からない。風が止めば止んだで、浮遊する体が直下する。

 まだ根っこが土をしっかり掴んでいる木にやっとしがみついている自分の腕に祈るのみ。急に加わる力方向が変わってしまえば、耐えられるとは思えない。


 そう、どう転んでも未来は『死』

 どうしたらその『死』から逃れられるのか。どうすれば良いのか分からない。

 風にもてあそばれている体は、なかなか自由にならなかった。木にしがみつく足は時々飛ばされ、やっと纏わり付かせて。


 そんな時だった。聞こえるはずのない風の中、声が聞こえた。


「あなた、(まと)が小さくて良かったわね」


 視界を庇うように、僅かに開けた瞳に、女の人が映った。 


 彼女がそこに立っていることは異常だった。

 風吹き荒ぶその中で、髪の毛一本も乱さずに、大人しく首を擡げた竜の鼻先に手を当てる。

 途端、竜の首が吹っ飛んだ。と同時に、木の枝に引っかかっていた体が大地に向かうのを感じた。


「いやだぁあ」

 目を閉じた私のすぐそばで、さっきと同じ声が聞こえてきた。僅かに浮遊感を感じた。

「人間って、ほんっとうに面倒くさい」

 風に乱れもしなかった黒髪から覗く綺麗な緑色の瞳が、私を冷たく見下ろしていた。


 これが、私達の出会い。


 最低最悪の出会いだったということに、後から気付いた。


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