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8/8

エピローグ

【プレイヤー】

 デスゲーム2回目 :仏井正蔵(部長)

 コロナ禍アジア留学:安治篤史(新人)

 ペーパードライバー:静道走吾(新人)

 ベテラン委員長  :引鳥はじめ(新人)



【ルール】


①0~4の中から好きな整数を1つ選ぶ

 何を選んだかは他のプレイヤーには秘密にする


②選んだ数字の分だけ同時に列を移動する


③ ①②を繰り返し、折り返し地点を経由して

 一番早くスタート(ゴール)に戻ってきた人が勝利


ただし、


④移動する際、使用済みの椅子は撤去される


⑤移動先の椅子が足りなければ「ドボン」

 その列の椅子はすべて撤去される


⑥3回ドボンした人はその時点で脱落


⑦3人脱落した時点で残り1名が勝利


⑧全員脱落した場合はゴールに一番近い人が勝利


⑨同着ゴールの場合はドボン数が少ない人が勝利


⑩折り返し地点には必ず止まる


⑪プレイヤーは後ろを見てはならない


=======================




 その後の展開は、一言で説明するなら消化試合であった。


 仏井・安治が脱落し、静道は自爆して最後尾へと順位を落としている状況。そして、それまで1度もドボンしていなかった引鳥は8ターン目、順当にゴールへと歩を進めた。


 引鳥は初めてのドボンを耐え、見事勝利したのであった。



 その後の勝者インタビューで、引鳥はこう語った。


「楽しかったのでまたやりたいですね」


 と。




 ちなみにペーパードライバー静道は3度目のドボンにより脱落した。



=======================

8ターン目終了時点(観客視点)


※□:残りの椅子

 (名前+ターン数):プレイヤー位置 (着席)

 【名前+ターン数】:プレイヤー位置 (ドボン)


スタート(ゴール):(仏井0)(安治0)(静道0)(引鳥0)

     【仏井7】【安治7】【引鳥8】

1列目 :(仏井6)(安治6)

2列目 :(引鳥1)(引鳥7)【静道8】

3列目 :(静道1)□

4列目 :(仏井1)(安治1)

5列目 :(静道2)【仏井5】【安治5】

6列目 :(引鳥2)(引鳥6)【静道7】

7列目 : □□

8列目 :(仏井2)(安治2)

9列目 :(静道3)(引鳥3)【仏井4】【安治4】

10列目 :(引鳥5)(静道6)

11列目 : □□

折り返し:(仏井3)(安治3)(静道4)(引鳥4)

     【静道5】

=======================






 後日。会社にて。



「あ、源さん、新歓ではお疲れさまでした」


 (司会)へと声をかける人物がいた。



 その人物は、新人歓迎会の幹事メンバーの1人であった。


 50人規模の飲み会を1人で準備するのは負担が大きい。ゆえに複数の社員で役割分担していたのである。声をかけた人物はそのリーダーであり、源はイベント担当であった。


「ああ、お疲れ様。何とかいい感じに盛り上がってよかったよね」


「源さんのイベント大成功でしたもんね」


「どっちかと言えば先頭の2人が有利だったからね。引鳥君が逆転したのはアツかったね」


 お互いに当時を振り返り談笑する2人。



 デスゲーム風イベントは無事終了した。


 とは言え源にも反省点が無いわけではない。


 今回のゲームのテーマは「久しぶりのリアル開催」。前回のようなオンライン開催ではできないゲームを目指し、源はルールを考案していた。



 プレイヤーがフィールドを移動するタイプの、


 でも体力勝負にはならないように、


 対等な条件で、


 逆転勝ちも狙えるような、


 フィールドを俯瞰できないからこその、


 そんなルールを。



 ちなみに原型はほとんど残ってないが、元ネタを上げるとすれば以下の2つとなる。


・1から100の中から一番大きい数字を選んだ奴が勝ち。ただし数字が被った奴以外で。

 という入社試験。


・一列に並び後ろを見る事を禁止された囚人が、自分の帽子が赤か白か言い当てられるか。

 という論理クイズ。


 それを椅子を使ったレースに魔改造したのが今回のゲーム「椅子取りダービー」なのである。




 反省点は、ゲームが難しくなりすぎた事。



 特にゴール時に必ずドボンするという部分。源は1人くらい引っかかってくれれば御の字と思っていたが、引っかかったのはまさかの2人。さすがに多い。


 もし次またデスゲームを企画する時があればもっとシンプルなルールにしよう、そう源は心にとどめた。



 もっとも、もう源がデスゲームを開催することは無いだろうが。


「とはいえ驚きましたよ。源さんがイベントの案を売り込んできた時は」


 正直助かりましたけど、と後にそう続ける幹事リーダー。



 彼らの会社にはレクリェーション(レク)委員という役職がある。今回の飲み会のような行事の幹事を担当する役だ。各課で1人ずつ、入社数年目の若手から選出される。


 そして実は、源はレク委員ではなかった。前回はその任期中だったため幹事権限でデスゲームを開催したが、今回は勝手に企画してイベント担当に立候補したのである。


「そこはほら、ヘルプの要請がメールで来てたじゃん」


 レク委員でない源がそのような事をしたのには一応、大義名分がある。


 50人規模での、久しぶりのリアルでの飲み会。しかし現役のレク委員はコロナ禍以降に入社した世代。当然、リアル開催のノウハウなど持ち合わせていない。


 ゆえに今回に限り、数年前までの元レク委員に手伝いの要請が出ていたのである。その中には源も含まれていた。


「レク委員じゃなくなったからもうデスゲーム出来ないって諦めてたんだけど、あのメール見て、これが最後のチャンスだって思ってね」


「どこから来るんですかその熱意」


「だって面白かったでしょ? フィクションじゃない頭脳戦」


「それはまあ、はい」


「それに、俺には野望があるんだよね」


「野望ですか?」


「うん、野望。今回のデスゲームはね、始まりに過ぎないんだよ」


「良く分からないんですけど……」



「レク委員って若手から選ばれるだろ? 順当に行けば、来年は今年の新人が選ばれるんだよね。来年また新歓をやるってなった時、彼らは何を参考にすると思う?」


「――!? まさか……!」


「そう。今回のデスゲームが参考にされるんだよ。なんせ入社一発目の飲み会なんだ。今回の新歓が彼らにとっての普通になるなんだよ。そして来年の新人もまたデスゲームをさせられてそれが普通と思い込む」


「う、うわぁ……」



 源の野望、それは――


「俺はね、飲み会でのデスゲームをうちの部署の恒例イベントにしたいんだ」



-完-

最後までお読みいただきありがとうございました。

飲み会デスゲーム第3弾に作者と共にご期待ください。


評価・感想お待ちしております。

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