表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/8

2~4ターン目:追走(静道・引鳥視点)

【プレイヤー】

 デスゲーム2回目 :仏井正蔵(部長)

 コロナ禍アジア留学:安治篤史(新人)

 ペーパードライバー:静道走吾(新人)

 ベテラン委員長  :引鳥はじめ(新人)



【ルール】


①0~4の中から好きな整数を1つ選ぶ

 何を選んだかは他のプレイヤーには秘密にする


②選んだ数字の分だけ同時に列を移動する


③ ①②を繰り返し、折り返し地点を経由して

 一番早くスタート(ゴール)に戻ってきた人が勝利


ただし、


④移動する際、使用済みの椅子は撤去される


⑤移動先の椅子が足りなければ「ドボン」

 その列の椅子はすべて撤去される


⑥3回ドボンした人はその時点で脱落


⑦3人脱落した時点で残り1名が勝利


⑧全員脱落した場合はゴールに一番近い人が勝利


⑨同着ゴールの場合はドボン数が少ない人が勝利


⑩折り返し地点には必ず止まる


⑪プレイヤーは後ろを見てはならない


=======================




 折り返し直後(4ターン目)にドボンした仏井と安治。彼らの予想に反して、9列目に椅子は残っていなかった。


 一体何があったのか。それを明かすには、1ターン目終了時に話を巻き戻す必要がある。




<Side:静道走吾>



=======================

1ターン目終了時(静道視点)


※□:残りの椅子

 ?:状況不明

 (名前+ターン数):プレイヤー位置 (着席)

 【名前+ターン数】:プレイヤー位置 (ドボン)


スタート(ゴール):(仏井0)(安治0)(引鳥0)(静道0)

1列目 : ??

2列目 : ??

3列目 :(静道1)□

4列目 :(仏井1)(安治1)

5列目 : □□

6列目 : □□

7列目 : □□

8列目 : □□

9列目 : □□

10列目 : □□

11列目 : □□

折り返し:□□□□

=======================



(よし、ドボン回避。読みが当たった)


 静道は目の前の結果にそう安堵した。彼が居るのは3列目。前方には4列目を占拠した仏井と安治。もし4を選んでいればドボンしていたところである。


 自分以外に4を選ぶ者が2人以上いれば、ドボンを回避するために4以外を選ぶのが最善。4を選ぶ者が1人以下なら4を選ぶのが最善。このゲームは他人の選択を読む事が肝心だと静道は考えていた。



(もし4を選んでたら地獄コースになるところだったよ)


 もし静道が4を選んでいれば、2ターン目は仏井、安治、静道の3人で8列目を目指す事になる。誰かが勝負を下りなければまたもドボン。文字通り命を削りあうレースに身を投じる事になる。


 そうなったら性格的に、勝負を下りるのは他ならぬ静道だろう。だがそれではドボンし損である。


 ならば最初からドボンを避けるという選択は間違いではなかった。そう静道は自己評価していた。



 ただ一つ。残っている懸念点としては……


(引鳥君どこ?)


 委員長引鳥の姿が見えない。つまり後ろの列に居るという事だ。4でも3でも無い数字を選んだという事でもある。彼はいったいどの数字を選んだのか。


(……1かな?)


 しばしの思考の末、静道はそう仮説を立てた。積極性に富んだ引鳥であれば極端な戦略に手を出す、そんなイメージがあったためである。


 静道が予想する引鳥の戦略は以下の通りである。



=======================

5ターン目までの引鳥の行動(静道の予想)


※□:残りの椅子

 (名前+ターン数):プレイヤー位置 (着席)

 【名前+ターン数】:プレイヤー位置 (ドボン)


1列目 :(引鳥1)(引鳥2)

2列目 :(引鳥3)(引鳥4)

3列目 :(静道1)(引鳥5)

4列目 :(仏井1)(安治1)

5列目 : □□


~略~


=======================



 0~4の数字を選んで移動、このゲームはその繰り返しだ。そう、移動しない(0を選ぶ)事が可能なのである。


 そしてこれは以下のルールと深く関わってくる。


⑥3回ドボンした人はその時点で脱落

⑦3人脱落した時点で残り1名が勝利



 そう。このゲームには1着争いとは別に、最後まで生き残るというサバイバル戦の側面もあるのである。


 1と0を交互に選びながら進むことで椅子を余さず使い、脱落までの時間を稼ぐ。ゴールするより脱落する可能性の方が高いと読んだのであれば、このサバイバル戦略を選択するという事も十分あり得る。


 そして、この戦略にはある副次効果もあった。椅子が食い尽くされるのである。折り返しを経て戻って来た者たちが必ずドボンするキルゾーンの出来上がりだ。



 ただし、この戦略にはある問題がある。


(他の3人が全滅するのが大前提なんだよなあ、これ)


 この戦略で作られるキルゾーンはせいぜい4列分。2ターンあれば飛び越えられる距離である。


 それに対し脱落に必要なドボン回数は3回。残機を削り切る事は出来ないのだ。



(でもこのキルゾーン、使い道はありそうだよね)


 全滅することは無くとも、2人くらいなら脱落する可能性はあるのではないか。静道はそう考えた。


 仏井と安治がキルゾーンで脱落するには――



(僕がそれまでに先頭の2人をドボンさせられればいいって事か)


 静道は自身の方針をそう定めた。方針が定まった事で取るべき行動も絞られていく。そうして静道はある戦略を見出した。


 

=======================

3ターン目までの展開(静道の予想)


※□:残りの椅子

 (名前+ターン数):プレイヤー位置 (着席)

 【名前+ターン数】:プレイヤー位置 (ドボン)


スタート(ゴール):(仏井0)(安治0)(引鳥0)(静道0)

1列目 :(引鳥1)(引鳥2)

2列目 :(引鳥3)□

3列目 :(静道1)□

4列目 :(仏井1)(安治1)

5列目 :(静道2)□

6列目 : □□

7列目 : □□

8列目 :(仏井2)(安治2)

9列目 :(静道3)□

10列目 : □□

11列目 : □□

折り返し:(仏井3)(安治3)□□


=======================


4ターン目~5ターン目までの展開(静道の予想)


スタート(ゴール)

1列目 :

2列目 :(引鳥4)

3列目 :(引鳥5)

4列目 :

5列目 :【仏井5】【安治5】

6列目 : □□

7列目 : □□

8列目 :

9列目 :【仏井4】【安治4】

10列目 :(静道5)□

11列目 : □□

折り返し:(静道4)□

=======================



 ポイントは、静道が5列目、9列目と移動する点だ。


 仏井と安治は折り返しまで4を選び続ける。そして折り返し以降に通ると予想されるのが、9列目と5列目。そこを静道があらかじめ1席ずつ消費しておくことでドボンさせる作戦である。その後に控えるのは引鳥のキルゾーン。とどめである。


(うまくいくといいけど……)


 静道は不安と期待を胸に数字を記入したのだった。




『では2ターン目、移動してください』



 そして移動を終え、


 目を開けた静道は早くも、自分の想定が外れていたことを知った。



=======================

2ターン目終了時(静道視点)


※□:残りの椅子

 (名前+ターン数):プレイヤー位置 (着席)

 【名前+ターン数】:プレイヤー位置 (ドボン)


スタート(ゴール):(仏井0)(安治0)(引鳥0)(静道0)

1列目 : □□

2列目 :(引鳥1)□

3列目 :(静道1)□

4列目 :(仏井1)(安治1)

5列目 :(静道2)□

6列目 :(引鳥2)□

7列目 : □□

8列目 :(仏井2)(安治2)

9列目 : □□

10列目 : □□

11列目 : □□

折り返し:□□□□

=======================



(引鳥君おるやん!)


 彼の前(6列目)に引鳥が居た。逆算して1ターン目は2列目に居たとも確定。サバイバル戦略など存在しなかった。


(戦略、練り直さないと……)


 静道は落胆と共にため息をついた。




<Side:引鳥はじめ>


(静道は5列目だろうな。先頭集団をドボンさせるつもりだ。狙いは悪くない)


 引鳥は姿が見えなくなった(追い越した)静道の居場所について考えそう評価した。


 仏井・安治が先行している現状、後続が勝つためには先頭集団を脱落させるしかない。そのことを引鳥は当然把握していた。


(だが読みが甘いな。俺が先頭集団なら5列目には絶対行かない)


 引鳥が予想する以降の展開は以下の通りだ。



=======================

3ターン目までの展開(引鳥の予想)


※□:残りの椅子

 (名前+ターン数):プレイヤー位置 (着席)

 【名前+ターン数】:プレイヤー位置 (ドボン)


スタート(ゴール):(仏井0)(安治0)(引鳥0)(静道0)

1列目 : □□

2列目 :(引鳥1)□

3列目 :(静道1)□

4列目 :(仏井1)(安治1)

5列目 :(静道2)□

6列目 :(引鳥2)□

7列目 : □□

8列目 :(仏井2)(安治2)

9列目 :(静道3)(引鳥3)

10列目 : □□

11列目 : □□

折り返し:(仏井3)(安治3)□□


=======================


4ターン目~6ターン目までの展開(静道の予想)


スタート(ゴール)

1列目 : □□

2列目 :【仏井6】【安治6】

3列目 : □

4列目 :

5列目 : □

6列目 :【仏井5】【安治5】

7列目 :(静道6)(引鳥6)

8列目 :

9列目 :【仏井4】【安治4】

10列目 :(静道5)(引鳥5)

11列目 : □□

折り返し:(静道4)(引鳥4)

=======================



 ポイントは仏井と安治が9列目でドボンした時にどう感じるかである。


 妨害されたという事はすぐに気づくだろう。自分たちの移動先を読まれたのだと理解するはずだ。


 だから次は同じように5列目には移動(4を選びは)しない。もし静道が彼らの立場なら6列目の方が安全と判断する。


 だからこそ引鳥は6列目に先に座った。椅子を消費するために。先頭集団をドボンさせるために。


(まあ先頭集団がずっと横並びなのが前提だけどな。そこは運だ)


 引鳥の妨害戦略も静道の妨害戦略も、椅子を1つ消費した列に先頭の2人が移動しドボンするというものだ。2人が別の数字を選んだら実現しない。


(このゲームには必勝法が無い。だから勝ち筋を見据えて天命を待つしかない)


 自分はできる限りのことをやっている、そんな自負と共に、引鳥は数字を選んだ。




『3ターン目のシンキングタイム終了ー。それでは移動してください』



=======================

3ターン目終了時点(引鳥視点)


※□:残りの椅子

 (名前+ターン数):プレイヤー位置 (着席)

 【名前+ターン数】:プレイヤー位置 (ドボン)


スタート(ゴール):(仏井0)(安治0)(引鳥0)(静道0)

1列目 : □□

2列目 :(引鳥1)□

3列目 :(静道1)□

4列目 :(仏井1)(安治1)

5列目 :(静道2)□

6列目 :(引鳥2)□

7列目 : □□

8列目 :(仏井2)(安治2)

9列目 :(静道3)(引鳥3)

10列目 : □□

11列目 : □□

折り返し:(仏井3)(安治3)□□

=======================



(やはり静道も9列目をつぶしに来たか)


 引鳥の妨害工作は完了した。静道の妨害工作と合わさって脱落させられる可能性は十分に高まった。後は祈るのみ。


(次のターンに狙い通り9列目でドボンしてくれるか、そこが最初の関門だな)



 そして4ターン目、移動。


=======================

(1)プレイヤー起立

(2)スタッフが使用済みの椅子を撤去

  この際嘘の音も立ててプレイヤーを攪乱

(3)プレイヤー移動

  移動中は目を閉じ、スタッフが手を引いて誘導

  移動後は目を開けてよいが、まだ立ったまま

(4)ドボン判定

  スタッフがドボンした列の椅子を撤去

  この際嘘の音も立ててプレイヤーを攪乱

(5)プレイヤー着席

  ただしドボンしたプレイヤーは立ったまま

(6)勝者判定

  勝者が現れなければ次のターンへ

=======================



4ターン目終了時点(観客視点)


※□:残りの椅子

 ?:状況不明

 (名前+ターン数):プレイヤー位置 (着席)

 【名前+ターン数】:プレイヤー位置 (ドボン)


スタート(ゴール):(仏井0)(安治0)(引鳥0)(静道0)

1列目 : □□

2列目 :(引鳥1)□

3列目 :(静道1)□

4列目 :(仏井1)(安治1)

5列目 :(静道2)□

6列目 :(引鳥2)□

7列目 : □□

8列目 :(仏井2)(安治2)

9列目 :(静道3)(引鳥3)【仏井4】【安治4】

10列目 : □□

11列目 : □□

折り返し:(仏井3)(安治3)(静道4)(引鳥4)

=======================



 この時の引鳥にはまだ知りえない事であったが、仏井と安治は、見事に罠に引っかかっていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ