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氷狼陛下のお茶会と溺愛は比例しない!フェンリル様と会話できるようになったらオプションがついてました!  作者: 屋月 トム伽
第二章 ユニコーン

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奉殿の幻獣 6


「リーネ!!」

「フェリクス様……」


急いできたであろうフェリクス様が奉殿へと駆け寄りながらやって来ていた。それをユニコーンが私の前に立ち塞いだ。


『近寄るな……雷の防壁を破ったのは、お前だな』


ユニコーンがフェリクス様にそう言っている間に、王妃様が子供へと駆け寄った。


「あぁ、私の子供が……」

「ユニコーン様が眠らせただけで無事です」

「眠らせた?」

「多分、私と兄上の様子を見せたくなかったのだと……怖くて泣いていましたから……すみません……」


子供を兄上から奪い取るように抱きしめる王妃様にそう伝えると、兄上が私の発言に立ち上がりながら怒鳴る。


「知った風な口を聞くな!」

「もうおやめください! フィリ―ネ様のおかげで私たちは救われるのですよ!?」

「うるさい! 幻獣が目覚めたのも、フィリ―ネのせいではない! きっとこの子が起こしたんだ!」

「違いますわ! この子にはそんな力などありません! 今も眠っているのが分からないのですか!?」


王妃様と兄上が言い合い、フェリクス様とユニコーンはにらみ合っていた。そして、ユニコーンが静かな怒りを込めて呟く。


『……醜い』

「ユニコーン様?」

「キャアァッーー!!」


その瞬間に奉殿の中に雷が走った。兄上は叫ぶ王妃様と子を庇い寄り添った。


「ユニコーン様! おやめください!」


両手を広げて止めるが、ユニコーンは兄上に怒っている。今にも止めを刺しそうだ。


「ヴァルト! エルドレッド陛下一家を外に出せ!」

「ハッ!! ディティーリア陛下たちをお連れしろ!!」


ヴァルト様やアリエッタ、フェンヴィルム国やディティーリア国の騎士たちが奉殿を囲み一部の騎士たちは、奉殿の中で戦闘態勢だ。


雷で塞がれたこの奉殿の中に入って来られたのも、きっとフェリクス様のお力だ。


兄上たちが、ユニコーンに恐れ逃げようと足を動かすと、ユニコーンは見過ごすことなく兄上に向かって雷を落とした。


「ひぃっ……!」

「やめてください! 子供がいるんですよ!?」

『子供には当てん』


静かな怒りを見せるユニコーンの周りに、また雷が走ろうとピリッとした。その瞬間に、私やその後ろの兄上たちを庇うように、氷の壁が地面からそそり立った。


「それ以上近づくな。攻撃を止めろ。リーネもいるんだぞ」

『……私の声が聞こえているな。それに、フィリ―ネに男の匂いがした……お前か? フィリ―ネは、私のものだ』

「ずいぶんと鼻がいいな。目覚めたのはエルドレッド陛下に怒っているからか? それとも、リーネが結婚のためにディティーリア国を出たからか?」

『……フィリ―ネに、誰かが触れて何かが変わった。私の乙女ではなくなる。その男は、何度も私のもとへやって来て起こそうとした。許せるものではない』

「それで起きたのか……」


呆れたようにフェリクス様が呟く。


私がフェリクス様に触れられて、幻獣が反応した。

そして、それは兄上が来た時に起こった出来事で、兄上はユニコーンが自分に反応したと勘違いをした。それから、私がディティーリア国にいる間に兄上が幻獣を起こそうと何度も通っていたらしい。それで、ユニコーンの逆鱗に触れたのだ。


ユニコーンは、不機嫌なままで話している。頭に響くような声はフェンリルと同じだ。

でも、私とフェリクス様がいるだけで怒ることが不思議だった。

私はユニコーンのことを知らないのだ。


「でも、それは、私がフェリクス様といたからですか?」

「……聞いた話では、ユニコーンは無垢な乙女が好きらしいぞ。そもそも、ユニコーンは人見知りが激しすぎて人前に姿も表さないし、近づけば逃げると言われている。この幻獣は、無垢な乙女でしか捕まえられないとは言われていたが……ここで眠りについていたのは、御簾の中で人に会わずにいられたからかもしれない」


私とフェリクス様が言葉を交わすと、嫉妬するように彼に向ってユニコーンが奉殿中に雷を落とした。それを、私を庇いながらフェリクス様は難なく交わした。

でも、奉殿の中に雷が立ち込めて兄上たちは、逃げられない。


「リーネ! 後ろの壁を壊せ!」

「壁……? 私には……」


奉殿の建物は立派で、こんなに雷が落ちているのに壊れないものを私が壊せるなど……そう思うと、フェリクス様の声が頭に響く。


(奉殿の中が壊れないのは、ユニコーンが手加減しているからだ。あれは、リーネと子供を殺すつもりはない。だが、それ以外には容赦はしない)

(そんな……)


ユニコーンは、氷の壁を壊す勢いで雷をさらに落とした。それを、フェリクス様が氷で防ぐ。


「キャアッー!!」

「止めてくれ!!」

『黙れ。愚か者』


兄上たちが赤ん坊を庇いながら叫ぶ。

雷が奉殿中に落ちているから、ヴァルト様たちも兄上を連れ出せない。


それを見て、私は持っていた杖を握り締めて、壁に向かって大きな氷の塊を打ち出した。






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