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氷狼陛下のお茶会と溺愛は比例しない!フェンリル様と会話できるようになったらオプションがついてました!  作者: 屋月 トム伽
第二章 ユニコーン

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幻獣の祝福を

ディティーリア国から招待を受けた正式な訪問。そう言って、フェリクス様が騎士団や近衛騎士団を編成し、彼らを率いてディティーリア国へ向かった。


雪が降っている間は、フェリクス様と馬車の中で進んでいたが、ディティーリア国へ入国する頃には、フェンヴィルム国のような寒さはなく雪すらない。


私は外が珍しく、フェンヴィルム国に来た時と同じように窓の外の景色に釘付けだった。


「……そんなに楽しいか?」

「来る時しか見たことありませんし、すごく綺麗です」

「なら、馬に乗せてやろうか?」

「馬にですか!?」


馬に乗ったことなどなくて、初めての経験に声音が上がる。

フェリクス様は雪が止んでいるからと言って、馬に乗せてくれた。初めて乗る馬に胸は高鳴っている。フェレスベルグの子供もついてきており、私がフェリクス様に乗せられたのを見て楽しそうに周りを羽ばたいている。


「寒くないか?」

「刺すように寒いです」


フェリクス様にマントをかけられて、心配されるが馬上の寒さすらも私には新鮮で目が輝いてしまう。いつの間にか頬は赤くなっている。


そんな道中を楽しみながら、幾日もかけてディティーリア国の城へと到着した。


城に着くと、周りには一斉にディティーリア国の騎士団が並んで迎え入れた。圧倒されそうな人数に囲まれて、その間をフェリクス様の馬に乗せられたまま進む。不安と緊張で恐縮している私を、彼は(大丈夫だ)と心に呼びかけて私の肩を寄せる。それが、一人でフェンヴィルム国へと向かっていた時と違う心強さを感じた。その彼のマントの中に包まれたままで進んでいた。


入り口前に着くと、馬車も馬も降りなくてはいけない。フェンヴィルム国の騎士たちが私たちの周りに控えるように囲む。その中で、フェリクス様が私を抱き上げて下ろしてくれた。

すると、何かが頭に響く。


(…………)


「フェリクス様……なにか言いましたか?」

「何も言ってないが……心の声は聴くなよ」

「そうではなくて……呼ばれたような気がしたのです」


不思議だ。何かが私を呼びかけている。まるで、フェンリルが頭に話しかけてくるものに似ていた。


「リーネ。行くぞ」


周りの気配は探ろうとしても、ディティーリア国に迎え入れられてフェリクス様と城へと行く。そこは、すでに祝賀会が行われており、私たちが入ると、一斉に道を開けた。


中央をフェリクス様の傍らで進むとディティーリア国の陛下である兄上と王妃である義姉上が赤ん坊を抱き待っていた。

お互いに形式的な挨拶が滞りなく終わると、祝賀会の主役の赤ん坊を見た。兄上はフェンヴィルム国と婚姻を結ばれてご機嫌なのか、フェリクス様に話しかけている。


「お近くでどうぞ。我が息子です」

「いいので?」


フェリクス様が聞き返す。


「もちろんです。フェンヴィルム王に見ていただけると、大国の祝福を得られるというもの」


兄上は、ご機嫌でフェリクス様を迎え入れる。私と結婚するから、兄上は義兄弟になった気になっていたのだ。


「可愛いものだ」


フェリクス様が、赤ん坊を見て一言いう。

王妃様の腕にいる赤ん坊を見ると、柔らかいぷにぷにな手足に可愛い顔。これが赤ん坊。


(可愛い……)


赤ん坊を囲み皆の顔が緩んでしまう。赤ん坊は、握るものを探すように手を動かしていた。


「お触りになっても大丈夫ですよ。フェンヴィルム国の陛下は幻獣士でしたな。息子もこれで幻獣の庇護を受けられるようにあやかりたいものです」


ご機嫌な兄上に促されて、王妃様がどうぞと柔らかな笑顔で言う。

フェリクス様は、赤ん坊に遠慮したように気を遣っている。


「リーネが先に触るか? そのほうが安全な気がする」

「いいのでしょうか?」


その瞬間ピリッとした。兄上が、私は触るなと言っているように侮蔑した表情を見せているのだ。


やっぱり私は兄上たちに受け入れられてない。先ほどからもフェリクス様にばかり話しかけているし、私の存在をないものとしているのだ。


(……私は、いいです。どうぞフェリクス様だけで……フェリクス様に恥をかかせたくないのです)


私がこんな公でディティーリア国の陛下に嫌われているとフェンヴィルム国や会場にいる人たちが知ればどうなるだろうか。きっと呆れる。そのうえ、フェリクス様はそんな女と結婚するのだと言われるかもしれない。そう思うと、もう手は出なかった。


「……我が婚約者が触れられない子を、俺が先に触れるわけには……」


わざとらしくフェリクス様が悩みながらそう言う。臭い演技に、目がテンになる。

こんな場合は、私が触れるにしても順番的には陛下が先なはず。そもそも、婚約者が出しゃばって陛下よりも先に動くなど有り得ないのに……


「くすくす……フィリ―ネ様。どうぞ、先に我が子の手を握ってやってください。陛下。よろしいですね」


王妃様が、臭い演技をするフェリクス様に笑みが零れた。そして、それを止めようとした兄上を王妃様が止めた。「ここは公の場です。彼女はフェンヴィルム国の婚約者ですわ」と。


兄上に睨まれながらは握りたくないけど、赤ん坊に手を出すと柔らかい感触なのに握る力があることに驚いた。しっかりと握られる手が温かい。握りたくないと思った気持ちが一瞬で消えた。

その握っている手に、フェリクス様が包むように重ねる。そして、フェリクス様が私の頭に話しかけてくる。その言葉通り、フェリクス様と言葉を合わした。


「「幻獣の祝福を」」


フェリクス様と二人で、赤ん坊にそう言って祝福をした。





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