贈り物2
フェリクス様が、仕事でしばらくいなくなって数日。
彼の王宮の食堂。真っ白なクロスの広がったラウンドテーブルには、卵やベーコンにチーズ……と朝食が並べられている。
私一人なのに、美味しい食事は変わらずで、毎日の食事でさえ楽しみになっていた。
焼いたパンにイチゴのジャムを添えて食べると甘くて美味しい。そんな朝食を堪能して、いつもの教育係のアマンダ様のところに行くと、彼女はいつもとちがう部屋の前で待っていた。
「アマンダ様? どうされたのですか?」
「陛下から、こちらの部屋をフィリ―ネ様に開けてもらう様に言付かりまして……」
「私の扉の開け方が、下手くそでしたか?」
「違います」
声色に力を込めて否定された。
「さぁ。開けてくださいませ」
早く開けてくださいという圧を感じながら、言われるがままに扉を開けた。
そして、部屋を開けるなり驚いた。
部屋にはドレスが溢れんばかりに並べられていたのだ。
「ジル……ドレスが……」
色とりどりのドレスは光り輝いているようで、自分の目までキラキラと輝いている気さえする。私に付いてきているジルに、思わず声をかけた。ジルも、目を見開いて驚いていた。
(こんなの見たことない……)
「フィリ―ネ様……ドレスは、このようなものですよ。夜会では女性は艶やかに着飾るのです。でも、確かにこれは、凄いですね……」
さすが大国フェンヴィルム国だと言わんばかりにジルもドレスを前にほぅっと感嘆のため息を吐いた。
「ジルもドレスを持っているんですか?」
「当然です。夜会に出席するのは貴族の義務ですから……」
胸を張っていうジルを背後に、ドレスに目を奪われてしまう。そして、部屋の真ん中に、カード付きのドレスの箱が置いてあった。
「こちらは、すべて陛下からです。さぁ、フィリ―ネ様」
アマンダ様に、カード付きの真ん中の箱に促されて見ると差出人はフェリクス様だった。
__リーネへ
何の言葉もないカード。でも、私へのカードだというだけで、何とも言えない気持ちが込み上げてきた。
「……こんなの初めてです」
ポツリと呟くと、アマンダ様がにこやかな笑顔で頷いた。
箱の中のドレスはフェリクス様に似合いそうな青色。透き通るような水色のシースルーが青色のスカートの周りを彩っているようなドレスだった。
アマンダ様が「お似合いですよ」と言っているのさえわからないほど美しいドレスに見とれていた。




