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愛された者  作者: 雪咲
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第1章

 その日もいつものように、美咲みさきは父親の「愛」を享受していた。

 六畳の部屋には煙草の臭いと体を殴打する音が充満し、灰色のカーペットには血が滲んでいる。煙草の吸殻はほとんど吸殻入れに収まることはなく、丸テーブルの表面を黒く焦がしていた。しかし煙草が焦がしたのはここだけではない。美咲の腹や背中、太ももなど、服を着れば容易に隠れてしまう部分に、その焼印はしっかりと刻まれていた。

「美咲、お前は良い子だ」

 父親の優しい声音と行動は乖離している。美咲は黙って唇と幸福を噛み締め、「愛」を受け止めていた。



第一章 偽愛



 御戸神ごとがみ美咲は父親に虐待を受けて育った。幼い頃から、それこそ物心つく前からずっと父親に叩かれ、殴られ、蹴飛ばされる毎日だった。しかし父親が美咲を罵ることはなかった。美咲の父親は、美咲に痛みを与えることは愛情表現であると教えていたからである。口では優しくしながら痛みを与えることで、まるで虐待が愛情であるかのように錯覚させていた。まさに洗脳だった。美咲の脳内では「痛み=愛」という図式が既に出来上がっており、父親以外の人間と接することがほとんどなかった美咲にとっては父親の教えてくれたことが世界の全てであったため、この教えを疑いもしなかった。

 美咲の父親は勘が鋭いのか運がいいのか、パチンコや競馬でそこそこの生活ができるほどの金を得ていた。所謂パチプロのようなもので、これは公的には職業ではないため実質無職である。また、美咲が壊れない程度の暴力を心得ており、こちらも同様に勘の鋭さが働いていたのかもしれない。そのためほとんどの時間を家で過ごしており、その一部を美咲への暴力の時間で埋めていた。

 二〇一二年、美咲は小学校に入学した。保育園や幼稚園に通っていなかった美咲にとって、小学校は初めての社会であった。父親は無職でパチンコ通いの割には体裁を気にするらしく、美咲には七着の服を用意して毎日着回させることにしていた。洗濯は週に二回、水曜日と日曜日にまとめて父親が行なっていた。この男は堕落した生活を送りつつも、最低限の家事は自身でこなしていたのである。また愛と称して痛みを与えていることは、相手が嫉妬してしまうから人に話してはいけないと美咲に教えており、同様の理由で体の傷なども絶対に人に見せないように言いつけていたため、虐待が明らかになることはなかった。美咲自身父親を親として大事に思い、その教えを疑いもしていなかったので、彼に歯向かうような真似は一切しなかったし、父親が間違っているという発想が現れることすらなかった。


 二〇一四年の春、美咲は小学校三年生になった。暗くて無口なため、この二年間で友達は一人も出来ず、教室ではせいぜい事務的な会話ぐらいしか交わしていなかった。学校が終われば無言で帰宅する毎日で、誰かが声をかける間もない上に、声をかけ辛い雰囲気が自然と醸し出されていた。

 彼女自身、友達が欲しいとはあまり考えていなかったのである。要らないわけではない。だが自分から動いてまで友達を得ようとは思わない。一般的なこの歳の子供ならば友達作りに奔走し、「友達百人出来るかな」なんて歌詞もあるように友達を作ることは学校生活の中でも重きを置かれるものであるが、美咲の場合はそうではなかった。

 だが三年生の春、そんな彼女を気にかける女子生徒がいた。

「美咲ちゃん、何見てるの?」

 昼休み。喧騒に包まれた教室で、給食を食べながら曇天の空を見上げていた美咲は、久しぶりに父親と教員以外から話しかけられたことに驚き戸惑い、数秒後に「そら」とぶっきらぼうな返事をした。

「空に何かあるの?」

 通常ならば今の美咲のように適当な返事をして会話が終わってしまうような者からはすぐに離れるものだが、彼女は諦めず質問を続けた。彼女の快活なポニーテールが風で可愛げに揺れている。最低限の手入れしかしていない枝毛だらけで短い美咲の髪は微かに震えていた。

「別に」

 またも返事とも言えないほどの雑な返事をした美咲に、彼女は躊躇うこともなく自己紹介を始める。

「私は同じクラスの千寿せんじゅ真理亜まりあ。美咲ちゃんと仲良くなりたいの!」

 返答に躊躇ったのは美咲の方だった。乗せる音に迷った口が呆けたように小さく開いている。椅子がほんの少し後ろに下がり、甲高い摩擦音が教室に響いた。今まで自分と仲良くしたいなどという物好きはおらず、業務的な用事で声をかけることすら嫌がられていたことを、美咲自身も知っていた。自らがそういう「話しかけづらいキャラ」であることは、言葉として彼女の頭にあるわけではないが薄々と概念的に心得ていた。その上で、誰かと深く関わるつもりがなかったために自分を変える気もなかった。

 美咲は少しだけ胸が温かくなる感覚を知った。曇天の無機質な空が雲間からの強い陽の光で輝き始める。薄かった美咲の影が濃くなっていき、床との境界が明確になりつつあった。


 それから毎日美咲と真理亜は昼食を共に食べ、昼休みに言葉を交わすようになった。真理亜が一方的に話しかけ、美咲は簡単な返事をしたり相槌を打ったりする程度であったが、そこにはしっかりと「会話」が存在した。

 六月の初週、家庭科の授業として調理実習が行われることになった。毎年数回は調理実習が実施されるのだが、美咲が入るグループはいつも美咲の存在によってコミュニケーションが上手くいかず、空気も悪くなる一方でまともな料理ができた試しはなかった。しかし今回は、美咲と比較的仲が良いと言える真理亜が同じグループになったので例年とは違う。五十音順で美咲は「ご」、真理亜は「せ」なので、一班六名のメンバーでギリギリ一つの班に収まったのだ。「御戸神美咲」「佐伯さえきまこと」「佐藤颯太さとうそうた」「新川しんかわ未来みく」「春原すのはら七海ななみ」「千寿真理亜」の六名で一班だった。真理亜が美咲と他の班員との間を取り持つことで、何とかコミュニケーションは取れていた。また、美咲が人嫌いではなく無口なだけであるということを真理亜の口から伝えられ、少しだけ美咲に対するクラスの印象が柔らかくなったかのように思われる。美咲にとって、真理亜は架け橋だった。

 今回作るのは小松菜と卵の中華炒めだ。

「美咲ちゃんは私と小松菜を切ろうね。誠くんと颯太くんは食器を洗ってくれない? 未来ちゃんと七海ちゃんは卵を溶いてフライパンでスクランブルエッグみたいにしてほしい」

 班員同士の話し合いで真理亜が班長に選ばれたので、彼女がそれぞれに指示を出す。彼女はクラスでも委員長をやっていたので、満場一致で決まった。美咲は特に何も意見を示さなかったので、正確に言うと満場一致ではないのだが。

 調理が始まると、早速事件が起こった。家庭科室に真理亜の声が響き渡る。

「美咲ちゃん、大丈夫⁉」

 美咲の左手の人差し指の背が少し切れたのだ。家では父親が弁当などを買ってくるし、これまでの調理実習では周囲から浮いて爪弾きにされていたため、まともに包丁を使ったことがなかったのである。初めて包丁を持った美咲は、その使い方を教科書や授業で見聞きしてはいたものの、動きがおぼつかず、小松菜を押さえる位置にあった指へ刃を当ててしまった。

 慌てる真理亜や他の生徒達とは裏腹に、美咲は静かに切れた部分を見つめていた。綺麗で見慣れた赤黒い血が滲み出てくる。美咲はその指を咥えた。途端に舌を包み込む美しい鉄の味と、指先に走る稲妻を感じた。

 包丁の愛だ。

 父親の洗脳教育のおかげで美咲はその痛みを錯覚し、包丁とそれを操った自分自身に愛された幸せに震えていた。俯いた美咲が狂気じみた邪悪な笑みを浮かべていることには誰も気付かない。周りの子供達は美咲が痛みに震えていると勘違いし、真理亜が先生に伝えて美咲を保健室に連れて行くことになった。

「別に、私、大丈夫だよ」

 真理亜に手を取られ保健室に向かう美咲は、何食わぬ顔で呟いた。薄茶色の廊下にポタポタと血が滴り、まるでヘンゼルとグレーテルが撒いた道標のように二人の歩いた道を示していた。

「何言ってるの! ちゃんと絆創膏貼らなきゃ!」

 つんと鼻をつくにおいが充満した保健室に入ると、真理亜が先生に説明して絆創膏を受け取り、美咲の指を蒸留水で洗ってその傷を覆うように絆創膏を貼った。

「料理、続きやらなきゃ」

 美咲がうわごとのように口にしたその言葉に、真理亜は「もう他の人がやってくれてるから大丈夫だよ」と答えた。自分の役目を放棄しても構わないと告げられたことに、美咲は違和感を持った。父親は、美咲が自分の言いつけを守らないときや役目を果たせないときは強く叱りつけ、その度に水を張った洗面台に沈められたからだ。そして数分後には「叱ってごめんな」と言いながら美咲に「愛」を与えた。美咲にとって痛みは愛であるが、苦しみは罰だった。

「今週の土曜、用事がないならうちに遊びにおいでよ。一緒に料理の練習をしよう」

 指の傷が脈打っている。突然の提案に驚いたが、反射のように美咲は頷いた。


 その週の土曜日、美咲は真理亜の家に遊びに行くことになった。行っていいのかわからないと言う美咲のために、わざわざ当日に真理亜が美咲の家を訪れ、一緒に父親に相談すると、容易に許可が下りたのである。美咲の父親は、普段は外出など許さないのだが、今回は友達の目の前で娘の約束を許可しないことにより悪い噂が流れてしまわないかと危惧したのだろう。外面は良く繕っているので、真理亜と対峙している時は常に爽やかな笑顔を見せており、真理亜は「とてもいいお父さんじゃない」と絶賛していた。

 それから美咲は真理亜と共に彼女の家へと向かった。初めて通学路以外の道を歩く。今まで見たことのない風景に心躍らせていたことを、美咲は自覚できていなかった。

 美咲の住む家は集合住宅の端にあり、同じ作りの家が九軒並んでいる。家のすぐ南側には線路が敷かれており、電車が十五分に一本ほどの頻度で通っている。片側一車線の道を挟んで北側の向かいには工場跡地があり、今は管理されておらずほぼ無法地帯と化しているため、夜はときどき不良などが出入りしているようだ。この挟まれた道をしばらく東に進むと、隣町や商店街、小学校へと続く国道に出る。西に進むと真理亜の家を含むマンションが立ち並び、パチンコ店やレンタルビデオ店などの娯楽施設が固まっている。家を出て東の方にしか行ったことがない美咲にとって、西側は未知の領域であった。とはいえ、娯楽からも縁遠い人生を送ってきた美咲には、それらの建物がどういう場所なのかは理解できていない。

 真理亜の家には徒歩十分ほどで到着した。五階建てマンションの三階、西から二番目の部屋が真理亜の家だった。

「お、お邪魔、します」

 初めて上がる他人の家に緊張しながら美咲は靴を脱ぎ、綺麗に揃えた。これは普段靴を揃えないと父親に叱られるため、習慣付いたものである。美咲の父親は、自分が散らかしたものは気にしないが、美咲が散らかすことには酷く敏感だった。美咲は叱られないために整理整頓を覚え、身につけていた。

「あなたが美咲ちゃんね? 真里亜から話は聞いているよ。ゆっくりしていきな」

 真理亜の母親が美咲に優しく微笑むと、緊張で早くなっていた美咲の鼓動は更に速度を増した。美咲は自分の母親という存在を知らない。美咲の母親は、夫の暴力と、外面だけの良さとのギャップに耐えられず、美咲を生んで退院した直後に勝手に夫の印鑑を盗んで離婚届を提出し、美咲を置き去りにして逃げたのだ。そのような経緯もあり、母親と呼ばれる存在に微笑んでもらった、という経験したことのない温かな事実が、美咲に初めて「父親の愛」以外の大人からの幸福をもたらした。

「美咲ちゃん早くおいでよ! 台所はこっちだよ」

 真理亜に呼ばれ、美咲は慌てて台所の方へと向かう。今日二人で作るのはバナナのパウンドケーキだ。真理亜が甘いものを好み、果物では特にバナナが好きだということと、六月現在の旬であることが決め手だった。

 美咲はボウルにバナナを入れて潰していく。その間に真理亜がホットケーキミックスや卵などの材料を必要な分だけ用意し、美咲がバナナを潰し終わるとボウルへ加えて混ぜ合わせた。混ぜ終わると型に流し入れてオーブンで焼く。こうして二人で作ったパウンドケーキは上手く焼き上がり、部屋中に甘い香りが広がった。

「美味しいね、美咲ちゃん」

「……うん」

 初めて友達の家に行き、初めて母という存在に優しくされ、初めて一緒にお菓子作りをした。美咲はこれまで出会ったことのなかった幸せに喜びを感じたが、美咲自身はこのことを自覚できていなかった。

 なんとなく、心がぽかぽかする。

 美咲にはその程度の認識でしかない。だがこの心地良さには気付いていて、無意識のうちに温かくなった胸を優しく押さえていた。

「そういえば、来週の日曜って父の日だよね? 美咲ちゃん、お父さんにこれ作ってあげたらどうかな! きっと喜ぶと思うよ」

 いつになく嬉しそうな表情をする美咲を見て、真理亜はそう提案した。日本では六月の第三日曜日が父の日とされており、今年はその日が一週間後の六月十五日だ。真理亜は美咲の父親の思惑通り彼を優しい男だと捉えており、男手一人で美咲を育ててくれた良い父親だと思っているため、美咲にこのように言ったのだった。

 そして美咲自身、父親に暴力を振るわれていることを愛されていることだと信じているため、父親への愛着は人並み、またはそれ以上にあり、大好きな父親が喜ぶことならやりたいと受け入れた。


 それから一週間が経過した。

 父の日、美咲の父親は朝から金を稼ぎにパチンコ屋に出向いていて、美咲は家で一人だった。先週真理亜の家で作ったパウンドケーキを父親に内緒で作るには絶好のチャンスだ。美咲は初めて自宅の台所に立ち、真理亜の家で作った手順を思い出しながら調理を進めていった。

「ただいま」

 夕方十七時頃、美咲の父親は帰ってくると玄関に甘い匂いが立ち込めていることに気付いた。

「美咲? 勝手に何をしているんだ?」

 彼は美咲に勝手に台所や風呂場を利用するなと伝えてある。無駄に水道代やガス代を増やさないようにするためだった。

今まで外出中に言いつけを破ることはなかったというのに、突然娘が変わってしまった。

彼は先週美咲を友達の家に遊びに行かせたことが原因だと考え、ほとんど顔も覚えていない真理亜のことを密かに憎んだ。

「お父さん」

 怒りを沸々と滾らせながらリビングに突入した父親を待っていたのは、クリームやバナナの粘りが付着したワンピースを纏い、丸テーブルに細長いパウンドケーキを置いておやつの準備をする美咲だった。丸テーブルの上にはパウンドケーキの他に、小さな取り皿とフォーク、カップに注がれたコーヒーと、ケーキを切り分けるためのブレッドナイフが置いてある。

「今日、父の日なんだって」

 美咲の下手くそな笑顔を見ると、父親の先ほどまでの怒りは静まっていった。自分のためを思って言いつけを破った美咲を叱ることはできなかったのである。

 実はこの男、酷い暴力を振るってはいるものの、美咲のことは自分の娘として愛していた。ただ、彼の愛情表現が酷く歪んでしまっていたのだ。

この原因は彼の実家の神社、御戸神神社の住職である父親にあった。美咲の祖父にあたるこの男は、あまりにも厳格な父親で、美咲の父親を、神社を継ぐに相応しい「正しい人間」にするため、幼い頃から暴力による矯正を繰り返した。父は我が子を愛するがゆえに自分を傷付けるのだ、きっとそうに違いない。美咲の父親はそのように信じることで暴力に耐え続けていた。その結果父親の狙いとは裏腹に、歪んだ人間に育ってしまったのだった。

 美咲の父親は、父親の自分に対する暴力は愛情表現であったのだと自分自身に言い聞かせるために、美咲に対する愛情表現として暴力を振るい続けていた。もちろん、そのような原因があったとしても彼が最低な加害者であるということに変わりはない。

「美咲、お前は良い子だね」

 このとき、父親は初めて美咲の頭を優しく撫でた。生まれて初めて撫でられた美咲は、胸の内に微かな熱を感じ、もっとこの感覚を得たいという感情が芽生えたことに気付いた。

 そのとき、美咲は先日の調理実習の際に強く感じた「愛」を思い出した。もうほとんど傷跡も残っていない指が、震えるように脈打った。目の前の丸テーブルの上にはブレッドナイフがある。

 もっとお父さんを愛したら、きっとまた撫でてくれるはず。

 そう考えた美咲はブレッドナイフを手に取ると、ソファに腰を下ろしている父親の胸元に飛び込んだ。嬉しい時や優しくされた時に温かくなる、一番愛を感じる場所である胸の中央に刃先を突き立て、そのまま推進力と体重を利用して奥まで押し込んだ。父親の体がソファに沈み込み、美咲も共に倒れた。

 甘い香りの漂う部屋に父親の呻き声が響き、ソファにゆっくりと熱い血潮が広がっていく。血液は愛情の証のはずだった。刃渡り二十一センチのブレッドナイフは三分の一ほどが体の中に吸い込まれている。父親が最期の力を振り絞って美咲を振りほどき、包丁を抜くと、胸から大量の血が溢れ出た。カラン、と包丁が床に捨てられる。

「み……さ……」

 立ち上がろうとしてソファの背もたれに置いた右腕は突如力を失い、だらんと座面に崩れ落ちると、それきり動くことはなかった。

「お父さん、どうしたの」

 美咲は父親の体を揺さぶる。胸元から絶え間なく流れる血が父親の白いシャツを侵食していき、もはや胸より下には元の色はほとんど見えない。段々と甘い部屋の香りが鉄の臭いに負け始めていた。

「お父さん、愛してるよ」

 もう一度撫でてくれると思っていたその腕はピクリとも動かない。美咲は仕方なく父親の腕を持ち上げて自分の頭に置いてみるが、再び胸が温まることはなく、父親の腕は枝毛だらけの髪を巻き込み千切りながら落ちていった。

 美咲は父親の右隣に座り、その右腕を左後方から前に持ってきて抱き締めた。次第に冷たくなっていくその腕を、外が暗くなり、そして夜が明けるまで抱き締めたまま美咲は眠った。

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