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http:寿命買わせていただきます 8《内部告発①》

モルテは薄暗い部屋の装飾がいかにもなカウチに横になっている。


「未来の殺人鬼でポイントも上がったけど、なんかひどく疲れた」


立ち上がると部屋の奥にあるカーテンを開き、小さいにじり口戸の中に入って行く。

引き戸の中は4畳半の畳の部屋で小さい丸いちゃぶ台が置いてある。

「あぁ、落ち着くぅ」

畳に寝ころび、畳のにおいを嗅いでいる


「きっと前世は日本人だな・・・、しかし、人間ってめんどくさい生き物」


「モルテだって人間だったんでしょ」


「おまえ!」


入ったばかりの部屋からのそのそと出てくると、カーテンで入り口を隠す


「なに、そんなに驚かなくてもいいじゃん。数日私がいなかっただけで寂しかった?

そんなんじゃ私がいなくなったらどうするのよ。

あと30日ちょっとしかここにいることできないのに、今日は仕事しないの?」

「与えられた仕事はちゃんと早めにこなしてる」

「ふーん」

モルテの椅子に座るとワルキューレPCを見る。


「ランクは上がってないけど、点数は微妙に上がってる」

「微妙で悪かったな。

私の死神カードを勝手に見るな、お前、ここ数日どこにいたんだ?」

「ん?、ふらふらとね、懐かしい場所を見たり、懐かしい人を見たり、行きたかった場所に行ったり、とても充実した日を過ごしてたよ、今更充実してもだけどねぇ」


モルテの椅子を回転させながら話すあんな


「またメール来てるよ」

「だから、メールも勝手に見るな!、勝手にパソコンも触るな!」

「私この人知ってる、有名な人だ、えっっと、あっ、地元の政治家だ」



※寿命を買って頂きたい。

私の名前は真中まなか圭介けいすけ

寿命を買って頂きたい理由はお金が欲しいからです

殺される前に。


※本日の24時、サイトにリンクされているライブチャットルーム99に入室してください。

入室キーは@death


24時になっても真中の入室は無い

「冷やかしか…」


モルテは2時までチャットルームを開けていたが真中の入室は無く、なんの連絡もなかった。


真中の事を知ったのは翌日の夕方のニュースだった。


真中圭介、失踪か!


「なに?、まさか殺されたのか?」


ワルキューレPCを触るモルテ

「寿命はまだある、自殺じゃない、どこかで生きている」


※昨夜はチャットルームに行けなくて申し訳ありませんでした。

今はルームに入れないというか、99ルームが見当たりません。

今晩またお願いできないでしょうか?


モルテは今でも構わないと返信した。


チャットルーム99が、真中のPC上にいきなり現れる。


画面にやつれた風貌の真中が映し出された。

「急に申し訳ありません、お時間ありがとございます」


真中のいる部屋はネットカフェのようだった

「時間が無いんです。私の寿命を買ってください」

「私は死神だ、だからと言って死にたい人を簡単に殺すわけではない。

理由もわからず死を与えるわけにはいかない

死にたいだけなら自ら死を選べばいい、

私を見つけたと言うことは、お金が必要と言うことでそれは金銭授受のある商売で契約だ。

お前は売り手、私は買い手だ

大切なものを売りたい理由を買う私が知りもしないで命を頂戴するのは本意ではない」


「昨日、仕事が終わって帰宅すると部屋が荒らされていて・・・」

「家族は?」

「家族は先月、嫁の実家に預かってもらいました」

「命を狙われていると?」

真中は何かを警戒するように何度も振り返る。

「私はたぶん殺されます。その前に家族に少しでも多くのお金を残したい。

家族はやってもいない私の罪で好奇の目にさらされることになるでしょう。

取り調べもされるだろうし」


「私が知りたいのはお前が命を狙われていると思う理由だ」


「それは・・・数年前に重要な書類を改ざんされているのを見つけました。

それは大きな力によって内密に行われたことだと」

「それで殺される?」


「私が告発しようと資料を集めていたのがばれたようです」

「では、犯人は・・・」


「実働部隊と依頼者は違うのでしょう。でも、告発するために集めた資料は守れましたが、私が告発しても握りつぶされるだけだと言うことが今回の事で分かりました。

私が殺されるにしても、自ら命を絶つにしても、隠した資料をマスコミに持ち込めるように準備は出来ています。

でもそのためには裁判費用等の軍資金が必要で、どうせ殺されるならその費用の為に私は寿命を売りたいんです。

いくらになるでしょうか?」


「あなたの死で世間から注目され、訴えるきっかけにはなると?」

「はい、殺されて無駄死にするならお金に変えたほうがましだ」

「あなたが死んだら真実は闇の中だと思うが」


「今、そこからマスコミ等に真実を流せば良い。

命を売ることを止めているわけじゃない。

勘違いはするなよ」


「今、そんなことしたら握りつぶされるか、あるいは私に都合が悪いストーリーが作られたり、スケープゴートにされて、残された家族は大変な人生を送ることになる」


「お前が死んだらそうはならないと?」


「・・・・・わからない

家族は告発なんてしないで、私と静かに過ごすことを望むのかもしれない。

私が自分の正義を捨て、政治とは関係ない世界で生きることを選んだなら迷わずついてきてくれると思う。

だから、私は死ななければならないんです。

私が死ねばきっと妻は夫である私の仇を打とうとする。

私や私の家族のためには、隠して生きることを選ぶほうが賢い選択なのかもしれない。

でも、改ざんしたことによって、たくさんの人の未来が奪われ、一部の特権階級の人間はより得をしている。

それをどうしても許容する心が今の私にはない」


「その資料、私に見せろ」

「これは、コピーですが・・・・」

モルテに資料を送る。


死を選ぼうとしている人がなぜ、すぐにモルテを信用するのかはわからない。

っが、間違いなく、普通ではありえない状況を受け入れモルテを死神と認める。


モルテはその資料を静かに見つめている


「依頼をお受けよう。でも、今日じゃない。

その日まで私とのつながりは消えない。

お前の命はしばらくは失われることは無いから安心しろ」

お前の命が終わる時、それは私と共に・・・ある。


しばらくは身を潜めて過ごすことをすすめる。

隠れ家を用意する」


圭一のスマホに地図が送られた。

「少し気味が悪いが、そこは安全だ。では、また後程」


===


「あんな、こいつ本当の事話していると思うか?」

「どうかな?」


圭一はネットカフェを出て送られてきた住所に向かう。


都会の真ん中にいるはずなのに、路地に入ると一瞬で景色も空気も変わった気がした。


さびれた古いホテル


中に入ると、フロントにいた男性が顔を上げ、静かにルームキーを渡す

「代金は?」

「モルテから後でもらう手はずになっている」

「寿命を買い取った金額から天引きか・・・」


つづく



















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