http:寿命買わせていただきます 6《殺人依頼主は元アイドル夫妻②》
千恵が一人でいる時に、スマホから聞きなれない音が鳴り、自動的にチャットルーム99に入室させられた。
「なに?なんなの?」
元アイドルだった面影はない。
普通に同年代と変わらない容姿
「あれ、ブログの写真とは違うな?」
「なんなの?失礼な人ね。切るわよ!、あれ切れない!」
スマホを振る
「スマホを振ってどうにかなると思うか・・・いつの時代だよ。
切れませんよ、だから少し話を聞かせてほしい」
「なによ?」
「ご主人のことどう思ってます?」
「なに?あの人の弁護士?」
「違いますよ。私は死神」
「は?、死神?馬鹿じゃないの?っで、その死神が何か用?、主人がそろそろ死ぬとか?」
「それを望みますか?」
「別にどうだって良いわよ、はっきり言ってどうでも良い、生きていようが死のうが」
「愛情は無い?」
「愛情?そんなもん、とうの昔に無くしたわ。あの人はね、お金の為に私と結婚したのよ。
私はもう引退して家に入って穏やかに暮らしたかったのに、働けってどこからか仕事取ってきたりして。
書きたくないブログもお金になる時代だからノルマを作られて」
「離婚すればいいじゃないですか?」
「家も独立した個人事務所も全部彼の名義、私の財産なんてないし、調子だけは良くて、自分に都合良いように人に話す技術は他に類を見ないほど長けてるわ。
幻滅を通り越して感心するほどよ。
死神ならあの人を連れて行ってくれない?、お金なら支払うわよ。
私は保険金と自由を手に入れられるじゃない。
そうだ、そうして、あの人を殺して」
「あなたの気持ちはよくわかりました」
スマホは元の状態に戻った
「あれ?なんなんだったの?」
===
「モルテ、夫婦ってあんなもんなの?」
「どうかな?」
「あの強欲夫の依頼受けるの?」
「どうかな・・・」
「どうするの?」
「あんな、少し一人にしてくれないか?」
「うん、わかった」
あんなの姿が消えた後、モルテはこの夫婦の過去の映像を時間をかけて見た。
「二人ともかなりのペテン師だな」
恒久は言葉と所作は紳士的で初婚であるとはいえ、何人もの女性と付き合い、貢がせ稼げなくなると別れるといった行動を繰り返してきた。
恒久を恨んでいる女性は少なからずいるだろう。
2回目の結婚中の千恵と出会い、不倫のすえ結婚している。
籍を入れた理由は、次から次へと女性を渡り歩くほどの魅力もなくなりそろそろ潮時だと思っていた時に千恵に出会った。
恒久は結婚するのなら財産を持っているか、今後も稼いでくれるだろう人を選ぶつもりだったのでちょうど希望通りだと思ったのだ。
しかし、千恵も自分をよく見せるために話を盛る癖があるので、実際に籍を入れると思っていたのと違うと思うことが多かった。
財産もないし、仕事もほとんどしていない、芸能人との付き合いもなく・・・。
恒久の感情としては、思惑が外れたといった感じだ。
当時13歳の千恵の息子と同居することになったけれど「稼ぎの無いやつは家の仕事しろ」というスタンスで、夫婦で高級店で外食しても自分たちに都合のいい、聞こえの良い一緒に連れては行かない理由をつけては外出した。
共に旅行しても、自分たちはフェーストクラス、息子はエコノミーと家庭内格差を推奨している。
お金への執着はすさまじいものがあるが、自分たちのためには糸目をつけず、それ以外は渋る。
実母の愛情も義父の愛情も感じることなく嫌悪感だけが大きくなり、息子は高校を卒業すると迷わず家を出て行きその後は連絡は取っていなかった。
確かに、二人は考え方も似ているし人からこう思われたいという欲望だけは見事に一致している。
上級国民だと思われたいのだ。
でも、実際は自分がお金を落とす店の人間にちやほやされる事で優越感を感じているだけで、お金を落とさなくなったら付き合いは消えていくだろう。
カモでしかない。
それ以外の人との付き合いは損得で考え、自分が得をすると思った人間は大切に、邪魔だと思う人間は切る。
対等の友人は作ることが出来ない性格の2人
そんな似た2人が夫婦になって7年、ぶつかることが多くなって行き今に至る。
「さて、どうするかな?」
そう言いながらもモルテの心は決まっていた。
恒久は契約書にサインした。
その2日後
モルテの指示通りに恒久は言った。
「初めてデートしたあの岬の夕日を見に行かないか?」
「そうね、最近、ゆっくり話もしていなかったし、温泉につかって美味しいもの食べて過ごすのも悪くないわね」
2人は久しぶりに仲良く、そしてニコニコ顔で家を出た。
それが死出の旅への始まりだとは知らずに。
数時間後、車は目的地の前の山道のカーブでブレーキが利かなくなり崖下へと落ちて行った。
「えっ、なぜ?、俺が?」
崖下には大破した車と車から投げ出されて木に引っかかっている千恵
車の中で恒久は自分の傷だらけの身体を呆然と見ている。
「俺?、死んだのか?」
モルテの姿に気がつく
「死神、なぜ俺が?、千恵は?」
周りを見渡し木に引っかかっている千恵に気が付く
「安心しろ、千恵も時期に迎えに行く」
「契約しただろ!」
「契約書って言うのはちゃんと読んだほうが良いぞ、あんたがサインした契約書は、あんたの寿命を私が買い取る契約書だ」
「くそ・・だましたのか?」
「契約書は日本語だった。読めなかったわけじゃないあんたが読まなかっただけだ」
「あっ、もしかして、千恵と契約したのか?そして、あいつが俺の寿命を売ったのか?」
「彼女とも契約しましたよ。でも、それも彼女の寿命を買い取る彼女の契約書だ」
「ふざけんな!2人分の寿命の代金はどこに入るんだ?」
「死んでもなおお金ですか?、墓場まで持っていけませんけどねぇ、代金は支払いません。
お2人の寿命は別の使い方をしましたので、さて、おしゃべりはこれくらいで」
鎌を振り上げるモルテ
「あなたと奥さんの死には3ヶ月の時間差を私が作った理由を考えればいろいろ考えることも出来るでしょう」
「時間差?」
鎌を振り下ろすとモルテはその場を離れた。
===
部屋に戻るモルテ
「なぜ、二人とも殺しちゃったの?モルテらしくないけど
ポイントいっぱいで成績上がって良かったね」
「千恵が死ぬは3ヶ月後だけどな、それに、私にポイントなんて入らない」
「なぜ?、契約したじゃない」
「契約書にその寿命は譲るって書いてあったんだ」
「譲るって、誰に?」
2日前、2人の過去を見ていたモルテは気が付いた。
連絡を絶っていた息子から半年前に連絡が入っていた。
家を出た息子はほどなくして子供が出来て結婚していた。
親の事で悩み苦しんでいた時に支えてくれていた女性だ。
その生まれた子供には心臓に大きな障害があり、手術するのは莫大な費用が掛かる。
息子はそのお金を融通してもらえないかとお願いしたけれど二人に断られていた。
「出してやっても良いけど、千恵の孫と名前出して公表してもらうぞ、
世間から同情の声で、また注目度もあがるだろうし金にもなる」
「子供をさらすつもりはない!」
「じゃあ、決裂だ」
生まれた子供の寿命は27ヵ月だった。
パソコンをあんなに見るように促すと、子供の寿命が37年に伸びた。
「千恵が死んだらもう少し伸びて、今の千恵の年齢くらいは軽く超えていくだろう。
遺産も入って手術も出来る」
「なんか、ドヤってない?、それって、良いことなの?、勝手に寿命を操作して。
息子には良いことでも2人は寿命を奪われるほど悪いことした?」
「なんか、勘違いしてないか?、良いことってなんだ?、俺は死神なんだよ、本来、好きなように寿命を操作できる立場だ。
その人間にとって良いことだろうが、悪いことだろうが、俺が・・・私が思ったように死を与える!、それが死神だ。
余計な詮索すなら今すぐここから出ていけ!」
続く




