http:寿命買わせていただきます 28 《私を嫌いな人①》
寿命を売りたいとサイトに来る人間の寿命は短い事が多い。
人生のゴールが見えてしまうと残りの時間をお金に替える選択をしようとする人間がいる。
残される家族の負担が軽くなるように、あるいは自分の生きた証を残すための思い出づくりとか、後悔しないためとか、早急にお金が必要だからではなく、自分のために、誰かのためにと考える。
しかし、モルテから提示される自分の命の値段は学生のアルバイトの日給に満たない場合の方が多い。
そして、自分の寿命の残り少ない事を再認識して、ショックを受け、モルテに会った事を後悔する。
モルテはこの手の依頼は基本受けない。
残りの時間を少しでも悔いなく過ごす事を優先させたい死神だから。
ただ、耐え難い痛みから解放させるために鎌を降ろすこともある。
それもまた、死神モルテの優しさなのだろう。
そして、寿命があっても自殺の手段を探してサイトに来る人間の寿命はバラバラだ。
自殺したい人間の寿命を奪っていけば、モルテの成績は間違いなく上がる。
何度も自殺未遂を繰り返し、最終的に自殺で亡くなっている場合は手を下す時もある。
それは、成績のためでは無く、モルテの優しさ。
しかし、自殺未遂を繰り返すのに寿命が長い人間は死な無い人間で、死ぬのが怖い実際は死にたく無い人間だとモルテは思っている。
承認欲求が強いのか?、かまってほしいのか?、気にかけて欲しいのか?はわからないけれど、死神としていろんな人間の死を見てきているモルテの嫌いな部類。
そして、自殺を思いとどまることが出来た人間。
この手の人間は命の大切さに少しは気がつく。
辛くても前を向いて進むことを選べた人間だ。
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「モルテ、依頼来てるよ」
あんなの声に小部屋から返事をする。
「っで、どんな依頼?」
「死にたいって」
「却下!」
「でもさぁ、保険金が欲しいからと自殺する手段を依頼してくる人間と契約しないのはもったいないと私は思うなぁ。
保険金も欲しいけどそれでは足りないから、寿命を売りたいって事でしょ?
願いを叶えてあげて、モルテにもポイントが入るし」
「保険金が入るからと自ら命を絶つ人間の寿命はそこまでな事が多いんだよ。
その人間にとって必要なのは命では無くお金なんだから死を選ぶ。
自殺したその時が寿命だ」
「ん?頭が付いて行かない・・・寿命を全うしている自殺者ってこと?」
「まぁ、理解はしがたいのはわかるよ・・・。
必ずしも寿命だから仕方ないと考えてしまうなら、誰でも死んだ時を寿命だと納得するのだろう。
1歳でも100歳でも。
人間にとっては、大切な人が死んだ事を慰め、納得するために「寿命だから」と言いたいだけ。
稀に減点覚悟で寿命伸ばしてしまうバカな死神もいるし、寿命なんて微妙なものなんだよ」
モルテは小部屋から話しながら出てくると、あんなを椅子から立たせ、自分が青白い光の前に座る。
「保険金とモルテからのお金が入ったらもっと金銭面では助かるのに、寿命はお金の為に自殺するその日までって、なんか虚しい」
「生きていく事は虚しいと感じる事ばかりだ。
財布を拾って臨時収入ラッキーと思うか?、誰か困ってるかな?と考えるか?同じ出来事でも、一瞬頭の中で考える事は必ずしも同じでは無い。
遊びたいから金が欲しいと強盗に入る人間と食べるものに困って強盗に入ってしまった人間を俺は同じ部類の強盗犯だと思わないから。
人のものを取ってしまってからだって、良かったなと思い続けすぐに忘れる人間と、後悔してずっと心に引っかからながら生きていく人間もいる。
考え方、感じ方は人それぞれで人によって正解も正義さえも違ってしまうってことだ。
自殺するまでが寿命の人間にはきっと本気でこの世界にいたく無い、いられない理由がその時はあったんだろ。
それを間違っていると否定はしてはいけない。
まぁ、お前はそれでも死神か?と呆れるんだろうけど、俺は損得より善悪で行動できる人間を見ていたいんだよ。
俺のするべき仕事は人間からしたら悪であったとしても」
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私の命を買ってください。
私を嫌いな人間にお金を払います。
本日の24時、サイトにリンクされているライブチャットルーム99に入室してください。
入室キーは@death
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メールしてきたのは、御手洗華15歳
ワルキューレPCで御手洗華について知らべ始めるモルテ
寿命は77歳、時給40円
「40円!?、かなりの高額だな」
「なんか、すごい人になるの?」
「どうだろうな?、理由はあるんだろうけれど、私にはわかるのは死因だけだ。
死因、刺殺による出血多量死・・・」
「殺されちゃうんだ・・・」
「華の余命金は2.200万くらいか」
「受けるの?」
「私にとってはかなりの良い仕事ではあるな、でも自殺志願だろう・・・」
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24時
「御手洗です」
メッセージを打ち込むと画像が映し出された。
顔にはいくつかの傷と赤くはれた痛々しい顔が映しだれている。
モルテの後ろで驚いた顔で両手で口を押えるあんなが立っている。
「いじめられているのか?」
「はい」
「自殺の手伝いをするつもりない」
「違います、お金が欲しいんです」
「なんの為に?」
「イジメている人達に支払います」
「だからなぜ?」
「払わないと家族が何されるかわからないし」
「親と警察に相談しろ」
「そんなことしたら、もっとひどいことされる」
「じゃあ、自殺すれば?」
「自殺ではお金が入ってこないし、逃げる事になるし」
「はぁ・・・、っで、私にはまったくお前の考えが理解できない」
続く




