http:寿命買わせていただきます 25《キラキラネーム②》
「死にたい理由は復讐だよ」
「復讐?誰に?」
「俺という人間を作った遺伝子上の父親に」
鬼毒は父親の顔は知らない。
母親が1人で育てた。
名前は父親が付けたと聞いている。
名前だけでも付けてくれたのなら、どんな名前であってもそこに自分を子供と認め、生まれて来た事を喜んでくれていたんだと信じ、心の支えにもなっていた。
小学生の時、母親が過労でこの世を去り施設で育つ。
施設のスタッフによると母親の荷物の中に父親がわかるものがあり、連絡したけれど認知はしていないし、養育の責任も放棄している。
「私には関係ない!二度と連絡してくるな!養育費詐欺か!、私の事がそいつに知られるような事があったら訴えてやるから覚悟しておけ!」
施設のスタッフは鬼毒の気持ちを考え、その話を彼にする事は無かった。
それから数年後、鬼毒が18歳の時、父親から家に来るようにと連絡が入った。
鬼毒は、施設のスタッフに連れられて父親の家に向かった。
鬼毒は成績も良く、素行も悪いわけではない。
奨学金で有名大学への進学も決まっている。
父親の家に着いた鬼毒は、重厚な邸宅の門の前で動かなくなっていた。
「俺の父親の家?」
「入りましょう」
施設の職員 大沢に促され中に入る。
駐車場には高級車が数台止まっており、この家の主人が成功者である事は誰が見ても明らかだった。
「鬼毒もし、何かしらの条件が提示されて、嫌だったら断って良いんだぞ」
大沢の顔を見てうなずいた。
職員の同席を拒否され、鬼毒が応接室で待っているとスーツ姿の男性が入って来て目の前で頭を下げた。
「秘書の畠田です。ご案内いたします」
長い廊下の奥にある部屋の障子を畠田が開けた。
着物姿で座っている恰幅の良い年配の男性が見えた。
案内されて鬼毒は男性の前に座った。
「鬼毒です」
「久しぶりだな」
「お会いした記憶はありません」
「覚えてないだけだ、生まれてすぐに一度会ってる」
「一度‥‥‥ですか」
「鬼毒うちに来い」
「はぁ?」
「お前を私の子供として認知する。
この家で暮らし、大学に通い、、私の跡取りとして勉強しろ。
学費はもちろん生活費のすべてはこっちで面倒見てやる。
悪い条件ではないだろう」
「・・・なにを今更?」
鬼毒の遺伝子上の父親、楠多伊三
三代続く国会議員で、正妻の子供は長男、長女、次女の3人。
本来後継ぎになり、地盤を引き継がせたい長男は大人発達障害、ADHDと診断されている。
国立大学を優秀な成績で卒業し、秘書として父親の元で働き始めたが、その場の空気を読むことは苦手で、余計な事を言ってしまい、先方を不愉快にされることが続いた。
息子の病気を理解できない父親は、長男を厳しく指導していたが、長くは続かなかったのは長男で精神が壊れ、父親との間には埋めることが出来ない深い溝が出来た。
そして、それを多伊三は埋める努力をするどころか切り捨てた。
長女の婿も秘書として多伊三の元で仕事はしているけれど、婿を信用も信頼もしていない。
次女はアメリカ人と結婚して、アメリカで暮らしていて父親の仕事には興味がない。
「鬼毒お前は正真正銘、私の血を継いだ息子だ。
すでにDNA鑑定で確認した。
まずは、名前を改名しよう。
鬼毒ではな、とても支持を得られるとは思えないからな」
「あなたが付けた名前では?」
「そうだったか?、まぁ、私が付けたとしたら悪趣味だったな」
多伊三は大声で笑った。
「お前なんかの為に生きるなんてごめんだよ」
鬼毒は心の中では思ったが口に出さなかった。
続く




