http:寿命買わせていただきます 24《キラキラネーム①》
あんなが死神になったとモルテの元に戻ってきた日も、普段と変わらず、サイトには自殺したいけれど、自分で死ぬのが怖いからお金はいらない、殺して欲しいのメッセージばかりだ。
「それ、もう受けちゃえば?、モルテの成績爆上がりじゃん」
「君は死神見習いでしたよね?」
わざと丁寧に優しく微笑み問うモルテ。
「あ・ん・なは死神見習いです」
「じゃあ、私の指導下で良いんですよね?」
「ですね」
「死神の仕事はなんだと思う?」
「寿命が尽きた人のお迎え•••とか?」
「そうだな、お迎えは1番優先される仕事。
では、死神とは?」
「死神は悪•••だと、思われているとは思う。
でも、モルテは違うと私は思う•••。
成績上げた方が良いのに、それをしてないし」
「確かに、死神の仕事はむやみに人の命を奪うことでは無い。
と、私は思っている。
それが許されるのなら、成績を上げるために人を殺す死神がいても不思議ではなくなる。
あいつ、ハーデスのようにな」
「知ってるよ。
モルテが自分の成績を上げるために人殺しをしない事も、殺すことを仕事と割り切ってない事も」
「少し違うな、なら、なぜ、私はサイトを開設した?、それは成績を上げるために他ならない」
人は一回、いや一度死んだら生き返らない。
奇跡の生還とかってもてはやされてもそれは死んではいない。
死神が迎えに行く前に現世に戻っているのは死んではいないからだ。
迎えに行った死神が躊躇したのか?、この人間をもう少し生かしておきたいと思ったのか?はわからないけど、確かに死神が来る前に戻れるのは奇跡ではあるけどな。
俺は・・・私は人を殺さない死神になりたいわけじゃないし、殺す事を躊躇っているわけでもない。
人の死をつかさどる身としては、究極の自己中でしかないのかもしれない。
私のやっていることは死にたい人間を生かして、現世でもっと苦しむ事を選ばせているのかもしれないし、生きたい人の命を奪っているのも間違いではない」
モルテはあんなに話しているでは無く、半分は自分の気持ちと対峙しているのかもしれない。
モルテの気持ちを察してか?あんなは珍しく反論することもなく、パソコンチェアに座っていた。
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「寿命を買って下さい」
久しぶりに自殺志願ではないメッセージが届いた。
「モルテ、寿命を買って下さいってメッセージ来てるよ」
勝手にパソコンを見ていたあんなの声に、モルテは後ろから覗き込む。
あんなの頬がちょっと色を帯びた事にモルテは気が付いてはいない。
「売りたい理由は?」
「あっ、うん、お金が必要だからとしか書いてない」
モルテはワルキューレPCにメッセージの主のデータを打ち込む。
「寿命は50年はあるな」
「上客じゃん」
「でも、寿命を売りたい理由がいまいちわからない。
コンタクト取ってみるか」
本日の24時、サイトにリンクされているライブチャットルーム99に入室してください。
入室キーは@death
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24時
「管理人のモルテです」
「やっと会えた」
髪はボサボサ、無精髭を生やし、よれよれのTシャツの若い男性の目が画面の中で一瞬輝いた。
「やっと?」
「何度もメッセージを送ってました」
「気がつきませんでした」
「自殺したいと何度メッセージを書いてもスルーされていたので、サイトの意を汲みメッセージの内容を変えました」
「では、お前は自殺をしたいけれど、自分では死ねないから私に殺してほしいから嘘をついたと?」
「はい」
「私のサイトの趣旨とは違う•••が、コンタクトを取るために死神を偽った度胸と勇気に敬意を表し死にたい理由を聞くだけは聞いてやろう」
その男の名前は笹野鬼毒
21歳、大学生
「鬼毒、鬼の毒か、不吉そうな名前だな」
「そう、間違いなく俺を産んだ親が付けた名前だ。
その名前のどこに生まれた子供への愛を感じる?」
「漢字のそのままの意味とは違う意味があるのかもしれないし、私にそれを知る術は無い。
お前への親の愛情があるかどうか?は私にはわからない。
残念だったな」
「そんなの聞かなくてもわかってるし、確かめたいと思ったのは子供の頃だけだ。
それも、ある事を前提に知りたいと思っていた可哀想な人間なんだよ」
「で、私に同情しろと?」
「死神って、そんな感情あんの?、人を殺すのが仕事なんじゃないの?、鬼毒よりも酷いのが死神だと思うけど。
鬼の毒なら解毒剤あるかもしれないしね」
「ほぉ、私を怒らせようとか考えても無駄だぞ」
「怒らせたら、簡単に殺してくれないかなぁって、甘い?」
「怒らせたら生かすぞ」
「そりゃそうだ、死にたい俺を殺すのはご褒美か」
「で、死にたい理由がそのキラキラしてないキラキラネームとかいうやつか?」
「名前なんて改名出来る。まして、この名前なら許可されるだろ?
死にたい理由は復讐だよ」
つづく




