http:寿命買わせていただきます 22《あの子の選択②》
険悪な空気が流れているモルテの部屋
いや、険悪な空気を纏っているのはモルテだけで、あんなは極めて平常心でパソコンチェアに座っている。
「なぜ、天国に行かなかった?
それより、なぜ、死神装束なんだ!」
黒いマントのフードまでかぶってパソコンに向かったままモルテを見ることなく答える。
「ん?、その質問って意味ある?
死神装束の理由なんて考える必要無いでしょう?
死神になったからに決まってるじゃん。
そして、死神になったんだから天国には行ってない。
洞察力が欠乏してるね」
「はぁ?」
「前よりなんかリアクションが人間ぽくなってる」
「ちゃかすな!」
「だからぁ、選ぶシーンになった時に死神になりまーすって。
でも、今はまだ見習いだけどね」
「なぜ、私を覚えている!?、もしかして人間の時の記憶もあるのか?」
「記憶はねぇ、モルテが絡んだ記憶だけあるけど、その他は、なんとなく覚えているかな?って感じ」
「母親の事は?」
「うーん、微妙かな」
「なぜ、そんな特例が許されてる?」
「ハーデスの不正を暴く協力してくれたからだって言われた。
しかし、相変わらず、天使の仕事ね」
PC上のモルテのランク表を開いている。
「人のものに勝手に触るな!」
「人?」
「いちいち揚げ足取るな・・」
モルテは小走りで近づくと、あんなの座っている椅子を引き寄せた。
椅子は回転しながらデスクから離れた。
=====
あんなが死に49日を迎えた日、モルテには会うことは出来なかった。
あんなは選択を迫られていた。
「転生できる道を選ぶことに承諾でよろしいですか?」
「他の道は?」
「地獄に落ちるか、地縛霊として現世に居座るか?
ただ、共におすすめはしませんよ。
もし、心残りがあり地縛霊の選択をするならば、その人間が現世を絶つ日が来てもあなたは地縛霊のままその場に残る事になります。
せっかくの与えられた転生を選択しないのはもったいない」
「でも、今の私ではなくなるのでしょ?」
「当たり前です。あなたは今の自分でいたいと?」
「できれば」
「面白い人ですね。でも、その願いを叶えられる道は残念ながらありません。
地縛霊になったとしても、自分でいられるのならその道を選ぶ死者もいるでしょう。
でも、心残りや希望が自我を網羅してしまいます。
それが愛情であっても、恨みであっても。
そのうち、自分を忘れ、恨みや執着だけがそこの居座るのが地縛霊になると言う事です。
まぁ、まれにご褒美的に思いが現世に降りることがありますけどね。
亡くなった人の気配を感じだとかいうやつです。
それは地縛霊ではなく、思いですよ。
少し、無駄話が過ぎましたね。
っで、転生の道で良いですね?
書類にサインをして左の道にお進みください」
「拒否します」
「はぁ?」
「私は死神になります」
周りにいた者たちの時間が一瞬止まった。
「そ、そうですか・・・・それは私の範疇ではないので、左の奥のドアに入ってください」
「はい」
「後悔は無いのですね?、死神は人の命を奪う仕事ですよ?」
「私はむやみに人の命を奪わない死神になります」
「死神になるには面接があります。
でも、面接に通らなかったとしても転生の道は絶たれます。
あなたは若くして事故で命を失っていて未練もあるでしょう。
が、また、同じように後悔が残る選択になるのかもしれません」
「心配してくれてありがとうございます。
でも、私は知ってるんです。
死神が絶対悪じゃないって。
不器用だけど優しい死神も存在する事を。
だから、左のドアに入ります。
面接に通る事願っていてくださいね」
あんなは迷わず立ち上がり左のドアに向かってまっすぐに歩き出した。
その背中に向かって天界の役人がつぶやいた。
「いつだったかな?、似たようなこと言ってあのドアに向かう男がいたな・・・」
あんなは死神との面接をして、見習いとしてモルテの下で勉強することになった。
しかし、その為にはいくつかの条件が出されていた。
====
「と言う事で、私はモルテの部下になったんだ、よろしくお願いします。
あとね、私、見習いだからこの死神装束着なくて良いんだって」
あんなはマントを翻し投げた。
「だからって・・・それか?」
色は黒一色ではあるが、レースやフリルを使ったゴスロリ服のあんなを見てモルテはわざとらしくうなだれた。
つづく




