http:寿命買わせていただきます 20《虚飾ブロガー②》
「殺されたい。
ストーカーに殺されたことにしたい。
そうすれば、嘘が真実にになる」
「真実だと思われるようになるかもしれないだ。
それも永遠に続く確証がないがな」
「私を殺してくれる人を見つけて、支払う為に大金が必要なの。
寿命を売ったお金で支払うわ。
私はストーカーに殺され、嘘が本当になって、一石二鳥よ」
「ほぉ、それを一石二鳥と言うか?。
お前にとっては一石二鳥なのかもしれないが、ただの自己中心的な解釈だ。
死にたい人間と殺したい人間ならわかるが、金の為にやりたくもない殺人を請け負うのなら、それをWINWINと思う事に私は同意はしかねる。
まぁ、よくそんな事考えるなと感心はする」
「あ~、病気も良いわね。命に係わるようなやつね。
ブログの閲覧も増えるからお金になるし」
「中傷も間違いなく増える。
見てる側の人間は自分の想像している状況と違うと「嘘をついている」と疑って攻撃する。
重い病気で、加工した健康そうな顔して笑顔で写真を載せたら、病気を疑われて攻撃する。
そして、お前も病気になれば大変だし、痛い思いもするしお金もかかる」
「じゃあさ、病気だって嘘つくから頃合い見て殺してくれない?」
「別に私はかまわないが、お前のその希望は病気と闘っている人達にとっては最低の発言だし、私もなぜか不愉快だ」
「でも、もう、嘘つくのにも疲れちゃったし、嘘じゃなかったんだと中傷していた人が後悔して、自分を責めて世の中から誹謗中傷が減れば、私の死も無駄じゃなくなる。
名案でしょ?」
「それは中傷した人への復讐か?、また嘘を重ねるだけじゃないのか?
一石二鳥とか、名案とか、お前はすべて自分を正当化して話をしたいようだな。
嘘をつくことに疲れたならやめたらいい。
嘘つきのお前を殺すために誰かを犯罪者にするという選択は人間として恥ずかしくはないのか?」
「あなたってなんなの?私の命を買いたいんでしょ?
なに、説教じみたこと言ってんの?」
「私は死神だ」
「死神に人間としての正しさを問われるって・・・私はどんだけ問題児なのよ。
仕方ないじゃない。
今更、嘘でしたって言って叩かれるなんて耐えられない。
そうじゃなくてもすでに誹謗中傷多数、炎上ブロガーになってるんだし」
「嘘をついてたと告白して謝罪すれば良いだけのことだと私は思うがな」
「あなた死神だから人間の事はわからないでしょ」
※私だって昔は人間だったが、記憶が無いんだから言い返しても意味はないな
「出来の悪い泥団子のお前は、地面にたたきつけられて粉々になるのが運命か。
泥団子を自分に例えたお前に聞こう。
自分の死んだ後の自分の評価は大切か?、もし、その殺人事件がお前の偽装だとバレたらお前の評価は間違いなく今以上にガタガタにボロボロに崩れるだろう。
それは死んでしまった後だから知りえない事だからどうでも良い事だと納得するのか?」
「そうね・・だって、どうにもできないし」
「死んだ後の事がわからないのなら、殺し屋を雇って殺された後の事もわからないことだ。
お前はめんどくさいことから逃げたいだけだろう?
自殺だったら嘘を隠し切れずに自殺だと叩かれる、殺されたらストーカーは嘘じゃなかったかわいそうにと世間がなると思っているのか?そんな確証なんてないのに」
「うるさいな。契約するから、さっさと処理してよ」
「泥団子を落として割った中の小さな核は泥団子を割っても消えないが、死ぬと言うことはその核も消滅するって事だ。
泥で塗り固めて頑丈になって一度もはがれることの無い人生もあれば、何もかもなくして新しくいろいろ纏いながら生きて行く人生も間違いではない。
そして、壊して、作ってと何度も繰り返す人生もあるだろう。
出来上がった泥団子の大きさや色は十人十色だ。
大きくてピカピカの泥団子が必ずしも良いものではないと私は思っている。
殺し屋を雇う為の金は出せない。
この契約は結ばない」
モルテは泥団子を作り出し、それを手の中で転がしながら言い終わると同時に握りつぶした。
乾き崩れた泥が零れ落ちて行く。
手に残った小さい球体をぎゅっと握りしめた。
「どうして?、じゃあ、自殺する!」
「したければすればいい。その時、お前の望むような結果が得られるかはわからないけどな」
モルテはゆうりの寿命を知っている。
彼女は自殺はしない。
そして、死神と関わらない限りはそれが変わることは無い。
「どうして?どうして買ってくれないの?、あなたにとって良いことがあるから、こんなサイト作っているんでしょ?、だったら若い私の命はあなたにとって価値があるんじゃないの?」
「価値?、前に話をした人間が言っていたな。
命の価値が学歴や生涯賃金で高くなるのなら、自分の価値が低いのは生まれた家に関係してくると。
生まれた時から自分の価値は低いものだと決められているのかと。
確かに人間の価値で命の代金を決めている。
でも、私がお前の価値を決めるとしたらゼロだ。
自分が死ぬために、いや、自分の名誉を守るために犯罪者を作り、その犯罪者はもしかしたら死刑になるのかもしれない。
お前が嘘つきだと中傷され死にたいと思うように、そいつも、そしてそいつの家族も犯罪者として世間から叩かれるだろう。
お前以上にな」
「それは、それをお金で買うって事でしょ・・・」
「生きることが死ぬ事より簡単だとは言わない。
死ぬより辛い事もあるのかもしれない。
お前の泥団子は嘘で塗り固められていても、核は汚れてはいない」
モルテは手の中の球体を指二本で掴んでゆうりに見えるように持ち上げた。
その小さい球体は金平糖のように小さい突起はいくつもある。
「私に何もかも捨てて核だけになれと言ってる?
それに核ってピカピカでツルツルのイメージだったわ」
「核だけになるということは、周りにいた人間も去っていく。
実際に学んで得られた知識が無くなるわけではないはずだが、お前の場合は真実さえ信じてもらえ無くなる可能性は高いだろうな。
貼られた嘘つきレッテルを剥がすことは難しい」
「契約してくれないのに、私をどこまで貶めるの?」
「貶めているつもりはない。
核まで汚すなと言っている。
汚れた核はつるつるになって、泥は定着せずに自然にごそっと剥がれてしまう。
今以上に強力な接着剤が必要になり、ガチガチに固めてしまわないと何も纏えなくなるぞ。
この小さいな凸凹にいろんな物がくっつくおかげではがれにくくなっている。
非を認め謝罪することは恥ずかしいことではなく、非を認めない事の方が恥ずかしい事だと気がつかず核は汚れていく。
手遅れになるのは、世間からの悪評が蔓延する事ではない。
核まで汚れる事だ。
お前の撮った写真は美しかった。
とりわけ、景色は幻想的だ。
汚れていない核がその写真を撮影させていたんだろうな」
「美しい?」
「ああ、太陽光は本当は線が束になって降り注いでいるかのように、1本の光まで美しい」
「写真撮るの好きだったけど、嫌いになってたな。
美しい景色や素敵なデザートより、そこにいる自分が素敵に写る事を優先させてしまうようになってた。
最近ではその写真でさえ、いじりまくって元の写真がわからないほどになることもあったけど」
ゆうりは自虐的に笑った。
「お前には美しいものをそれ以上に美しく写す才能がある」
「ありがとう」
「褒めたつもりはない。
事実を言ったまでだ」
「でも、あなたの言葉はうれしいけど、やっぱり私は死ぬ道を選ぶよ。
ごめん」
「私は死神だから人間の命を奪うことに躊躇はしない。
っが、誰かの命を奪い地獄に落ちる人間を作ることは本意ではないだけだから謝るな。
自殺に協力するつもりはないしな。
自ら命を絶った時に、迎えに行くのが私ではない事を祈る。
お前は私にとっては価値の無い人間だ」
モルテはゆうりの前から姿を消した。
その数日後、SNS上は大騒ぎになっていた。
ゆうりのストーカー偽装が公にされ、当事者のゆうりは自殺と言う道を選ばず、動画で謝罪とSNSから離れる事が話された。
どうして偽装するまでになってしまったのか、その時の心の状態まで正直に話した。
圧倒的に多数の非難の声の中の少数の同情の声にゆうりは救われた気がしていた。
その後は海外に渡り戦場カメラマンになる。
それからまた数年後、戦場であってもなぜか幻想的に見えるゆうりの写真は、あの始まりの写真よりもさらに大きな話題になることをモルテ以外は知らない。
つづく




