http:寿命買わせていただきます 19《虚飾ブロガー①》
暗く、散らかった部屋でスマホの青白い光りだけが女性の顔を照らす。
http:寿命買わせていただきますのサイトを見ている彼女は決心したように書き込んだ。
「私の寿命を買ってください。
そして死に方を私に決めさせてください」
その数分後、サイト管理者から返信が入った。
※メッセージ受け取りました、お受けするかどうかお話をうかがった後にお返事させていただきます。
24時にサイトにあるライブチャットルーム99に入室ください。
入室キーは@death
モルテはメッセージの女性に興味を持ちライブチャットへの入室を許可する返事をしていた。
「死に方を自分で決めたい?」
モルテはワルキューレPCに名前を女性の打ち込む
尼野ゆうり 23歳 職業ブロガー、インスタグラマー、他
寿命 85歳
「残り62年か・・・1,300万超えか、私のポイントも上がるな。
しかし、ブロガーとかインスタグラマー?てのはなんなんだ?」
モルテには人間だった時の記憶無いが、仮にあったとしてもその当時に職業欄にそれが書かれることは無かった職業だ。
普通のパソコンで尼野ゆうりのブログを見始める。
おしゃれな場所でおしゃれな食事や華やかな交流関係。
「充実してると思うけどな・・・これが事実ならね」
数ページ読み進めるうちにブログに書かれている内容に違和感を感じ始めた。
「大げさなのか?虚飾なのか?」
ゆうりの名前で検索をかけると誹謗中傷のページも少なくはない。
嘘つき、大げさ、みっともない、加工すごいから実際とは顔もスタイルも違いすぎる、ステマが過ぎる、自己評価が高い、自己承認欲求が強い、他もろもろ。
24時、チャットルーム99が開く
「あの、本当に寿命を買ってくれるのですか?」
画面に映るゆうりはブログの自撮りとは別人だ
「すごい技術だな」
「何のことですか?」
「いや、なんでもない。
ところでなぜ寿命を売りたい?」
「その前に私の質問に答えてください!
寿命の代金を先にもらえるんですか?、死に方を自分で選べるんですか?
それが出来ないなら売りません!
それにまだ信じられない」
ゆうりの強気な言葉にモルテの眉が動き冷たい目でゆうりを見る。
「出来ることは出来る。
でも、それは話を聞いてから私が決めることだ。
売買ではあっても、どうしても命を売って欲しいわけではない。
私に対して強気になるな!
不愉快だ」
一瞬でモルテはゆうりの前にマントを翻し姿を現す。
「えっ、まじ?、本当に死神なの?、すごすぎる。。。
カメラ回さなきゃ」
モルテは向けられたスマホを手で払い、それは部屋の隅に飛ばされた。
「なにすんのよ?!」
「人に向かってカメラを向けるなんてどんな了見だ?、
私は人間ではないし、そんなものに映ることは無いがな」
「なら、いいじゃない。
良かった割れてない」
「契約が締結されたのなら破られることも、逃げることも出来ない。
キャンセルもなければ、クーリングオフも無い。
それを理解して寿命を売りたいと言っているのか?」
「ちゃんと注意書きは読みました」
「っで、寿命を金に換えたい理由は?」
「それは・・・・」
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ゆうりがブロガーになったのは2年前。
SNSに公開した写真がある日バズった。
アニメに出てくるような景色だと言われていた場所でゆうりが撮影した写真があまりにも幻想的で美しく、瞬く間に広がっていった。
雨上がりの澄んだ空気、洞窟の隙間で空に向かい上げられた手と、そこだけに落とされる太陽光。
三脚で撮影した写真が、とてつもなく美しい情景を生み出した。
「なに、これ、最高に盛れた写真撮れた!」
と、その時は本気で喜び、SNSにアップした。
数日後にはフォロワーは数百倍にもなり、ネットニュースにも上がるほどその写真の虚像ゆうりが一人で走り出した。
その日から、ゆうりはSNSの中の虚像の自分を追いかける生活が始まった。
虚像とリアルな自分近づけようと虚飾し、加工し、この程度のウソくらいと小さい嘘を積み重ねて行く。
確かに最初は小さいうそだったけれど、それを嘘じゃないと思わせるために、また小さい嘘で塗り固めた。
まるでピカピカに光らせた泥団子にように・・・・
「泥団子って、私みたいだよね。
外側ピッカピカでも結局は泥団子。
落とせば簡単に割れちゃうし、放っておいたらひびが入っちゃう。
そのひびが深くならないように、なんか詰め込んで毎回磨いて修正しているけど亀裂が無くなったわけじゃない」
「人間には誰にも核があって、それを生きてきた年数や、経験、学びを薄く何十何百と重ねて大きくなっていく泥団子みたいなもんじゃないのか」
「そうかもね、でも、薄い布を入れながら重ねて出来た物と、泥だけを厚く重ねた物では丈夫さが違うから。
私は泥だけの泥団子よ、落としたらバラバラに崩れちゃう。
最近はどんなに塗り固めてもひびが深くて埋まらなくなって取り返しがつかないくらいにまで深くなっちゃった」
ゆうりは注目度が落ち始めた時、ストーカー被害を自ら生み出した。
最初は心配の声が上がっていたが、それが来週発売の週刊誌に偽装だったと上がる予定だと連絡が来た。
「っで、どう死にたい?」
「殺されたい」
つづく




