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http:寿命買わせていただきます 17《記憶》

あんなは何も言わずにモルテの前から姿を消した。


「挨拶くらいしてから行け」


ハーデスの起こした飛行機事故の証拠を掴むために死神界もバタバタしていたせいもあるが、あんなは言うべき言葉を選ぶことができずに時間は過ぎてしまい、決心がついた時にはモルテに会う術は無くなってしまっていた。


モルテ自身も無意識にその話題を避けていたのかもしれない。


「変わったやつだったな。

生まれ変わって、また私が迎えに行く事になるのなら次は何十年も幸せに生きてからにしてくれよ」


誰に話すわけでもなくモルテは呟く。



モルテの部屋には数日分のお迎えリストが送られてきたまま、誰も拾い上げることなく床に散らばっている。

薄暗い部屋でワルキューレPCのディスプレイと、床に散らばる白い紙だけがかすかな青白い光を反射している。


1枚づつ丁寧に拾い上げていたモルテが最新のリストを手に取った。

「赤がこんなに溜まってしまったな・・・今日はこれから片付けるか」


自分がかかわることなく死期が来て迎えに行く事には、それがどんなに短くても、生への思いが深くてモルテに暴言を吐いても、泣きわめいてもモルテの心が動くことはほとんどない。


「寿命だ、お疲れ様」

と声をかけ大鎌を振り下ろす事が彼に与えられた仕事だから。


リストを見ていたモルテの眉がかすかに動く。


「この老人、110歳過ぎてるのか・・・いい加減、私を待っているのだろうな。

でもなんだろう?、気になるな」


モルテはリストに書いてある赤字の人物のお迎えをリストの順番通りに処理して行く。

たった一人、老人だけを飛ばして。


「最後の一人」


モルテは上から介護施設のベッドに横たわる老人を見ている。


その老婦人の周りには職員以外はいない。


「涼子さんって、ご身内の方どなたもいらっしゃらないの?」

「そう、天涯孤独、結婚もされなかったみたい」

「そうなんですね、寂しいですね」


若い介護スタッフが優しく老婦人の手をさする。

「涼子さん、頑張ろうね」


モルテが老婦人に向かって降り始めると老夫人の手がモルテに向かって上げられた。


「ずっと、待ってたよ」


「涼子さん!、何言ってるの?、しっかりして!」

「来てくれたんだね・・・・お父さん・・・」

「ん?、お父さん?お父さんがお迎えに来たのが見えているのかしら?」


職員が勝手な妄想をしながら上を見ている。


老婦人の手は真っすぐにモルテに向けられたまま、上へ上へと伸ばされるが、職員がその手を降ろさせようと格闘している。


「お父さん・・・・私、頑張って生きたよ・・・」


「ボケてるのか?」


モルテは老婦人のお腹の上に降り立つ

「今、楽にしてやる」

大鎌を振り上げるモルテに笑顔を見せる涼子


「やっと、会えた・・・」


モルテのあるかどうかは確かではない心臓がドキンと波打つ


「なんなんだ・・・これは?、とにかく期限が過ぎてしまう前に処理する」

大鎌を振り上げるが、降ろしたくない気持ちが邪魔をする。


「なにを戸惑っている?」

自分で自分に問いかけるモルテ

「もう充分に生きた老人になにを躊躇しているのか?。

私は死神、これが仕事、そしてここでやらなければこの老人は今よりもっと苦しむ世界に落とされることになるのは私の本意ではない」


死神が迎えに来ることは悪ではなく、善なのだと言っているようにしか思えない言葉を発した直後、鎌を振り下ろした。


静かに体内から出てくる涼子はモルテを見て抱き着く。


「お、おい、なんだよ?、死んでもボケてるのか?」

「お父さん」


涼子の姿が子供への変わっていく。

「私はお前を迎えに来た死神モルテだ、離れろ!」

「絶対お父さんだもん、ずっと待ってたんだよ」

「言ってる意味が理解できない、とにかく、お前に与えられた時間は49日で・・・」

形式に沿った説明をモルテがしている間も涼子は抱き着いたままだった。


「涼子が4歳の時お父さん死んじゃったけど、お母さんも、そして涼子も大好きな優しいお父さんの事忘れてなかったよ。いつか会えるって思ってたし、本当に会えた。

長生きしたご褒美を神様がくれたんだね」

「私は死神だ」



…そう、俺は、いや私はお前の父親ではない。

もし、そうだとしても私にはその記憶はない・・・


モルテは静かにそしてほんの少しだけ力を込め抱き着く涼子の背中に手を置いた。


モルテの顔を嬉しそうに見る涼子


視線を合わせようとはしないモルテには抱き着いている涼子との関係はわからない。


が、モルテの心に小さな違和感が生まれ始めていた。


つづく










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