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http:寿命買わせていただきます 14《幸せの3日間》

あんなはあれから毎日昼間は母親の様子を見に行っている。


暴れて看護師に迷惑をかけていると見えていなくても一生懸命に頭を下げ、母が自分の事を忘れていても、七つの子を歌いながらそばにいる。

聞こえていないはずなのに、歌い出すと母は静かになった。


夜は出勤のようにモルテの部屋に来ている。


「母親のところにいればいい」

「私は自由なんでね、夜はここでモルテの監視するの。

一緒にいられるのも残り3日だし」

「だから、母親の元の居ればいいのにと言っている」


「大丈夫だって、それより商売繁盛してる?」

「ぼちぼち」

「今日の仕事は行かないの?」

「回収は行ってきたから、あとはサイトの”客”だけだ」

「お客さんいるんだ、真夜中ののチャットルーム」

「いや、今回は直接行く」


===


数時間前

※私の残りの寿命を買ってください。

はやし一郎、87歳


「87歳、寿命なんて大して残ってないだろう?

死にたいだけの人間か?」


追っかけメールが入る

※家内の命が尽きる時、私の寿命を買って私も殺してください」


「おいおい、やっぱり死ぬ方法にここを選ぶなよ」


※お願いします


「っで、どうしてこの短文連投メール?」


ワルキューレPCに林一郎の認識番号を入れ画面を眺めているモルテ


「まっいっか暇だし、話だけでも聞いてやるか」


※本日の24時、サイトにリンクされているライブチャットルーム99に入室してください。

入室キーは@death


※意味が分かりません


「はぁ?、めんどくさいな」


※わかりました、本日の24時あなたの前に行きますから、一人になれる場所にいてください


※住所は・・・


※これ以上何も教えて頂く必要はありません。

私は死神ですから


===


「というわけで、俺が出向くことになっている」

「優しいねぇ」

「最後の最後までお前はうざいやつだな」


24時 新しい家が立ち並ぶ住宅地の中に、遠くからでもうっそうと木が茂っているのがわかる古い家


庭も家もけして手をかけているとは言い難い

ゴミ屋敷ではないけれど、庭は雑草が生え放題

室内は庭とは違い、片付いてはいた。


居間と隣り合う和室に置いた介護ベットに一郎の妻、はやし和子かずこが寝ている。

襖を閉めた居間で一郎は座って待っていた。


モルテが静かに前に降り立つ

驚いた顔さえ見せない一郎

「死神?」

「はい」

「私は今の機械がよくわからんで、わざわざ来てもらって悪かったな。

散らかっているけど、そこらへんに座ってくれ。

今、お茶を入れるから」


一郎は立ち上がろうとする。

「結構!」

モルテは手のひらを向け静止する。


「大きい声出すと家内が起きるんでな、静かに頼むよ、申し訳ない」

「了解した」


「家内はもう間もなくお迎えが来るだろう。

手の施しようもないと、家で死にたいと病院から戻って来ている

昼間はヘルパーさんも来てくれて助かってるよ。

でも、わしらには子供がいないからなかなか大変でね。

まぁ子供がおって負担をかけてしまったら、それはそれで辛いんだろうがいないからよくわからん。

結婚して55年、さみしいもんだね。

ひとりで残されるって事はさ。

私は家内が逝ってからどれくらい生きるんだい?

その分を買って欲しい」


「お金が必要と言う事か?」


「いや、金には困ってはいない。

たくさんあっても困らないが今から増やしても使い切れん

こんな年寄りの残された寿命なんて大金にはならんだろうがな、

この家も持ち家だが、死んだあとは寄付するように遺言書や譲渡の手続きは済んでいる」


「近しい身内は?」

「死神なのに調べてこんのか?」

「すいません・・・って、私のほうが立場上じゃないのか?、年寄りこえぇ、ん?あんなに感化されている・・・」


「ん?なんじゃ?」

「なんでもありません」

「譲りたい身内はおらんよ」


「お父さん?」


隣の部屋からかすれた声で一郎を呼ぶ声が聞こえた。

「家内が起きたようです。びっくりするので隠れていてくれ」


襖のを開けて部屋に入って行く

「どうした、おしっこか?、どっか痛いんか?」

「違うの、起こしてくれる?」


和子は支えてもらって起き上がって居間に入ってきた。

「死神さん、お父さんの願いを叶えないで頂戴、お願いだから。

お父さんには1日でも長く生きて欲しいの」

「聞いてたのか?」

「死神さん、私はあと何日生きられるの?」

「それはお答えできません」

「そうなの?・・・」

「お座りになってください」

モルテが促す


「死神さん、私は自分を殺してほしいって思うのよ。

負担になっているのは分かってるし。

でも、そんな事させたら大好きなお父さんが犯罪者になってしまうから頼めないのよね」


和子は笑顔でモルテに話しているが、モルテは一郎からメールが来たときに調べていた。


3ヶ月後、林一郎 自殺、林和子 夫によって絞殺


この老夫婦を見て、その犯罪が憎しみからではなくお互いを思う深い愛情からだとわかった。


「たった1日で良いから元気で夫と過ごせる日が欲しいって願ってしまうわ。

元気な時は、先に死んで保険金入らないかなぁって思ったことが無かったとは言わないけど」


「なんじゃと?」


「寿命を買いましょう」

「ありがとうございます、っで、それは約束通り家内が死んでから何日後ですか?

やっぱり、直後ですか?」

「今日から4日後に」

「余命はあと4日って事ですか?」

「いいえ、もともとはもっとありましたよ、でも、奥様とそしてあなたの寿命の残りを買うんです」

「どういう事だね?」

「その金額はここに」

モルテは現金で2万円を出した

「そんなもんでしょうね」

「でも、これはお渡ししません、残された寿命を特例として買います」

「意味が分からない」

「回収した寿命を圧縮するんです。元気な時間だけを集めて3日間にしました。

今日の10時から3日間、和子さんに元気な日を差し上げます。

それが残された寿命と相殺です。

その代わり、その3日が過ぎたら2人一緒にお命を頂戴します。

よろしいですか?」


「本当に3日間は元気なんですね?」

「はい、10時に元気になったことを確かめ、納得いった時に契約書にサインをしてください。

ここに置いていきます。

サインをしてもしなくても10時5分には契約書は消滅しますので忘れずに」

「わかりました」


そのまま一郎と和子は静かに10時を待った。

時報と共にいきなり痛みも消え、元気になった事に歓喜し、迷わずにモルテが置いて行った契約書にサインをした。


その日を2人は知り合いに会うことは無く、思い出の場所をめぐり、懐かしいものを食べ思い出に浸りながら過ごした。

残りの2日はずっと家にいて懐かしい写真を整理しながら語り合い、一郎の好きなものを作り、一緒に食べ死ぬことの恐怖よりも今を楽しんで過ごした。


そして、約束の時間にモルテが来る


3日前に来た時とは見違えるほど片付いた部屋に2人は座っていた。


「お待ちしてました。

ありがとうございました、最高のプレゼントを頂きました。

素晴らしい3日間を過ごせました」

「お父さんの寿命を使ってしまって申し訳なかったけど思い残すことは無いわ。

本当に感謝してる、お父さんにも死神さんにも」


「では、頂戴しますよ」


2人は手をつなぎ、笑顔で見つめあうと深く頭を下げ、モルテの鎌は振り下ろされた。


2人の遺体が見つかるまでに数日かかった。


約束の日にヘルパーが来ると、2人はすでに亡くなっていて、司法解剖されたが和子は病死、一郎は心筋梗塞と記された。


老々介護に疲れ妻を殺し自殺と世間を騒がす未来だったのが、老夫婦の悲しい孤独死で騒がす事になったが、死ぬ寸前の顔を見ることが出来たのなら、きっと、まったく別の顔で亡くなっていたことをモルテ以外は知るすべはない。


つづく
















































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