http:寿命買わせていただきます 11《寿命》
「世の中死にたい人が多すぎない?」
メールを見ながらあんなが言う
「お前、また勝手に見てるのか?」
「しかしさぁ、自殺したい人ばっかり、寿命を売ってお金が欲しいよりも死にたいから手助けしてが圧倒的に多い9割超え。
あっ、死にたい人の命を回収して、生きたい人に売るってどう?」
「お前、考えること悪魔だな」
「死神には言われたくない。
ほら、あの欲深い夫婦の命を回収して、孫にあげていたじゃない?
自殺したい人の寿命を格安で買って生きたい人に高値で売るの。
絶対儲かるよ」
「私のポイントはどうなる?、私が欲しいのはポイントで金じゃない。
命を回収しても、それを他に回してしまったらポイントにはならない。
お前は人間だからお金が大切に感じるんだろうけれど、私には不要なものだ」
「不要って、お金払って命買ってるんだからお金は死神でも必要だと思うけどねぇ」
あんながぶつぶつ呟く
「言いたいことがあるなら言え」
「いいえ、人間の私が死神に文句なんて言うわけありません。
でも、モルテみたいに命の回収を“ぼちぼち”やっていたら出世するのに時間かかるね?」
「ぼちぼち・・・・まぁ、だからって死神も片っ端から命を回収できるわけじゃないし」
「死神の偉い人はぼちぼちの回収で時間かけて偉くなってるの?」
「まぁいろいろだろ。でも言えることは出世が早いやつは悪いやつだね」
「死神にも良いやつがいるのは分かったから、悪いやつがいても不思議ではないけど」
「良いやつはとは私の事ではない事を祈るよ」
確かに大きな事件や事故を起こすように仕向けたりして、一気にポイントを上げている死神もいる。
モルテと同じ時期に死神になったハーデスがその代表だ。
過去にそうやって出世したものもいるけれど、上に上がればちまちまと命を回収する事はなくなる。
過去に不正を働いたことなんて忘れ去られ、自分でも忘れたかのように指導者や管理者になっている。
「さてと私は今日が期限の命の回収に行ってくる」
モルテは黒マントを深くかぶり、骸骨を模したマスクをはめる
「そんなマスク付けてたっけ?」
「つけたり付けなかったり」
「死神のルールはゆるゆるだ」
「これ必要でしょ」
一覧を渡しながらちらっと視界に入った名前。
井上心享年 8歳
赤字で一番上に書いてある。
「かわいそうに8歳って・・・」
「かわいそう?、どんなに短い寿命でもそれを全うしたならそれはお疲れ様と言ってあげるべきだ。
一緒に行ってみるか?」
「良いの?」
あんなはモルテと共にまもなくモルテを受け入れることになる少年の病室にいた。
ベットの周りにはたくさんのおもちゃや絵が飾られていて、心が長い時間をここで過ごしてきたことがわかる
もう,話すことも出来ず静かにベッドに横たわる心の手を頭を身体を家族が撫でている
「心ちゃん、頑張ったね、ありがとうね」
「お前のパパで幸せだったよ、こんな泣き虫のパパだけど、生まれ変わったらまたパパのもとに来てくれよ。また会おうな・・・」
「モルテ、どうしてこの子は死ななきゃならないの?」
「決められた寿命があるから。
死神はそれを回収するただの作業員だよ
もう、楽にしてあげよう。
この子は静かに寝ているように見えるが痛いと苦しんでる
そして親は何年も健康に産んであげられなかった自分を責め続けている
私はこの子を健康にすることも、命を長らえることも出来ない。
命を移行して長らえたところでこの子の苦しい時間を延ばすことになるだけだ。
死神に病気を治癒する能力はない。
振り下ろす死神の鎌が人を楽にすることもある」
モルテが鎌を振り上げると、あんなは思わず顔をそむけた。
鎌が振り下ろされると同時に身体から出てくる心
モルテに気が付く
「お迎えでしょ?、ご苦労様。ちょっと待ってて、ママをぎゅってしてくるから。
いつもしてもらうだけで寝てばかりの僕からはずっと出来なかったんだ」
モルテの返事を聞く前に泣いている母親を後ろから抱きしめる
「お待たせ!行こう」
「お前には49日間の自由が与えられる」
「ホントに?、やったぁ、もう、痛いところないし嬉しい。
ママとパパのそばにいるから、時間になったら迎えに来てね」
「あの・・・」
「なに?お姉ちゃん」
「あの、わかってる?死んじゃったのよ」
「わかってるに決まってるだろ」
「元気だから・・・」
「さっきまで元気じゃなかったけどね。ここも痛くて、こっちも苦しくて。
でも、良いんだ、僕の事でママがずっと苦しんでたの知ってるし。
弟はママが僕につきっきりで独り占めしちゃったから寂しかったと思う。
もう返してあげたいんだ。
それに痛いのに疲れちゃったし・・・もう、頑張れないよ。
時間もったいないから行くね」
その後の49日間を心は家族と過ごした。
もちろん、触れることも出来ない声も聞こえないがその時間が心にとっては大切な時間になった。
家族は何度か心の気配に気が付くこともあった。
「心?、そこにいるの?」
心は母親の声に大きな笑顔を見せた。
49日を過ぎてもその場を離れないと言えば浮遊霊として残ることは出来る。
一緒にいたいと思っていた人がこの世をさっても、自分だけがその場に残り続ける。
目的もないまま・・・。
49日後、心は迎えに来た天使の手を取り家族のもとから離れた。
つづく




