表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/34

http:寿命買わせていただきます 10《本懐と虹の橋》

昔から映画やテレビ等で扱われることが多い仇討ち


自分の大切な人の命を奪われたら、自分の手で殺めてやりたいと思うこともあるだろう。

時間が解決してくれる事が多いけれど、それでも恨みは消えず薄れていく感覚に自分で自分を責めることもある。


そして、仇討ちは必ずしも美談ではない。


※私の寿命を買ってください。

私が本懐を遂げた後に


「本懐って忠臣蔵かよ」


モルテが過去に日本人であったことは間違いないと思える言葉がたまにある。



本日の24時、サイトにリンクされているライブチャットルーム99に入室してください。

入室キーは@death


松島アキラ 28歳 女性

寿命は50年を超えるモルテにとっては美味しい客だ


「寿命買ってくれるんでしょ?」

「はい、でも買いたくない事もある」

「なにそれ?、売るものがそれしかないのよ」

「寿命を売りたい理由は?」

「死にたいから」

「じゃあ、勝手に自殺しろ」

「ちょっと待って、ごめんなさい冗談よ」

「で?本懐とは?」

「仇を討ちたいの、私の大切なものを奪ったやつを死をもって償わせたい!」

「その人を殺した後、自分も死ぬと言う事ですね」

「そうよ。どうせ死刑か、無期懲役でしょ?」

「初犯で明確な恨まれても仕方ない理由があるのなら情状酌量されると思うが」

「無理よ、だって、殺された私の大切なものは人間じゃないもの」

「はぁ?」


アキラは独身で銀座のクラブでホステスとして働いていた。

トイプードルのクレオ7歳、パトラ3歳の親子をとても大切にしていて癒しとなっていた。

アキラの働くクラブでは28歳は平均を上げる年齢だ。

若くて可愛いだけで話術もなく、気遣いが出来なくても上客はつくがアキラは取られることのほうが多くなっていた。

仕事の愚痴や悩みを犬達に聞いてもらい、翌日の仕事には気を取り直して向かうことが出来た。



そのクレオが散歩中に車にひき逃げされた。

リードを離してしまったのは自分のミスだと自身を責めてばかりで、精神的にも追い詰められ仕事はやめた。


ひき逃げ犯は何かにぶつかった事に気が付き、車を止めクレオの横たわる姿を確認してからその場を去った。


その高級車とにやけた顔をアキラは忘れらない。


先日、高級スーパーの駐車場でその車と男を見つけ思わず駆け寄った。


「この間、犬、ひきましたよね?、死んだんですよその犬、私の犬なんです」

「はぁ?、悪かったな。っで?、ああ、慰謝料とか欲しいわけか?、いくら?」

財布から札束を20枚くらい出して渡す

「これくらいかな?、あんたが飼ってる犬なら充分だろ、じゃあ」

「ちょっと、待って」

「まだ何か?、警察に突き出すとか?、良いけど器物破損だからね、犬は器物、器物破損、き・ぶ・つ、わかる?」


「ひどい!」

アキラは殴ろうとしたが、腕をつかまれる

「おっと、それ以上するなら傷害事件になりますよ、いい加減、金持って消えろよ、うざいな、犬殺されたくらいで、その金で新しいの買えや」


男は車に乗り込み、エンジンをふかしその場から去って行った。


駐車場に座り込むアキラ

「犬くらいって・・クレオは私にとっては大切な娘なのに。

憎い、あいつが憎くてたまらない」


===


「あいつを殺して、残されたパトラの生活の為にお金は残したいから寿命を売りたいの。

あいつさえ殺したら、この世に未練なんてないわ」

「銀座のホステスでの貯金は?」

「あるわけないでしょ。売掛支払ったらすっからかんよ、

保険には入っているから保険金入ったとしても、犬を受取人にはできない。

親に行くでしょ。

苦労かけたし、親に保険金が入るのは良いと思っているけど、それ以外に自由になるお金が先に欲しいの。

パトラに新しい家族を探して託したいから」

「そうですか・・・少し時間を下さい」

「私も片づけなければならない事が他にもあるから1週間後に返事を頂戴。

買ってもらえなくても、実行はするけど」


===

確かにモルテが調べれば調べるほど、ひき逃げをした男はひどい男だった。


「こいつは殺されたってしかたないな。

だからって、殺されていいわけではない。

でも、救わなきゃならないのは、この悪党ではないのかもしれない」


翌日


「1週間経っていませんが早いほうが良いのでお返事します。

お前の依頼は断る」

「そうですか。わかりました、いろいろありがとうございました」

「仇討ちするのか?」

「はい、もちろん、私はあいつが憎い」


「虹の橋って知っているか?

作者はわからないけれど、犬を飼う人の中で語り継がれている話だ」


「亡くなったペットが行く場所でしょ。クレオもいるのかな」


===


天国の少し手前に「虹の橋」と呼ばれている場所がある。

この世界で暮らしていた動物たちは死んだら「虹の橋」のたもとに行く。


そこには、草原や丘が広がっていて、楽しく遊んでいます。

ご飯に困ることもなく美味しものを食べ、美味しい水を飲み、

病気にかかっていた子も、年老いた子も、みんな元気を取り戻し、

傷の痛みに苦しんでいた子もすっかり健康なからだを取り戻し、

昔のようにそこでは過ごしているのです。


動物たちは幸せだけど、たったひとつ

気になっていることがある。

それは、かつて共に過ごし、愛し合い、寄り添っていた人が、

ここにいないことが、恋しくて、寂しいのです。


===


「そして、飼い主が死んだら虹の橋に行って、動物と再会して一緒に天国に行くって話だ。

死神である私がそんな平和な場所の話しても伝わらないかもしれないな。


動物を飼っていた人がその動物の命が尽きる時に言う言葉がある。

「いつか私が虹の橋に行くまで私の事は忘れて良いからみんなと楽しんで待っていてね」と。

そして、飼い主の命の終わりに私が迎えに行くときにはこう言う。

「虹の橋に寄ってください。

ずっと待たせてるから、きっと待っててくれるから」と。


でも、その虹の橋のたもとには一か所だけ雨が降りやまない場所がある。

飼い主がいつまでも泣いていると、動物はみんなと遊べる楽しい場所には行けないで、その暗くて寒い雨ふり地区にいる。

きっと、クレオもそこにいる。

そして、お前が人を殺したら、いかなる理由があっても天国には行けない。

死後に情状酌量なんて事はない。

虹の橋には行けない

クレオは来ない飼い主を永遠に待つことになる」


「私は虹の橋でクレオには会えないの?あなたの力で少しだけ寄って、私は地獄に行くからクレオは天国に送ってくれない?」


「無理です」

「でも、私はどうしてもクレオの仇を討ちたいのよ!」

「それをクレオは望んでいると思うのか?、お前が殺人を犯して、自分を迎えに来れないと知ったら仇を打ってくれてありがとうって言う子なのか?」

「きっと言わないね。そんな子じゃない、優しい子だもん」

「じゃあ、どう思う?」

「自分の為に私が人を殺して、地獄に落ちたら責任感じて悲しむ・・・だろうね」

「私もそう思う」


※勝手にリード外して道に飛び出して車にひかれて死んじゃってごめんね。

ここには友達も出来て楽しく暮らしてるから大丈夫だから心配しないで。

痛い所もないよ。

娘のパトラをよろしくね。

いつの日か、アキラがここに迎えに来てくれるまで、クレオは良い子で待ってるから、

それまで、ずっと幸せに過ごしてね

必ず、迎えに来てね


「なに?、クレオの声?」


「私には何も聞こえない」


アキラのタブレットに過去のクレオとの思い出の映像が映しだされる。


静かに見ていたアキラの涙はとめどなく流れ続ける。


「ごめん、死ぬのやめる。

かたき討ちもやめるよ」

「困りますよ、寿命頂戴しないと」

「本当にごめんなさい」

「まぁ、契約前だから私に無理やりサインをさせる権限はない」


「私、ちゃんと仕事探す。

パトラを食べさせなきゃならないし、

そのあとはまた考える、でも、あの最低男の事は忘れないけど前を見る。

クレオがやめてって言ってる気がするし」

「そうか、わかった。では、私との関係はこれで切れます」


モルテはブチっとチャットルームを閉鎖した。


「また、助けたの?」

「助けたわけじゃない、契約までいかなかっただけだ」

「ふ~ん、前は無理やりサインさせてた事あったけどね」


ニヤニヤしながらモルテを見るあんな。


「ところで、虹の橋って本当にあるんだね」

「知らない」

「だって、さっき、クレオの声」

「あれか・・あれは、まぁ、いつか会えるって事が生きる力になることもあるなら、そこが存在していても良いんじゃないか?」


モルテはデスクに顔を伏せた


「死神である私が生きる力を与えるって・・・」


「よしよし」


あんなはモルテの頭を撫でた


クレオをひき逃げした男にモルテはお仕置きをしていた。

それも、小さい不幸を連続でいくつも。


彼女にお金も持ち逃げされ、車はいきなりブレーキがきかずに自爆

道ではつまずき、お気に入りの高級ブランドの服は破れ、

買ったばかりの白いスーツは急な豪雨でびしょびしょ、

高い時計は海に落とし、散々な日を過ごしていた。


もちろん、人間には見えないモルテが仕組んだことだ。


「なんて日だぁ~!」




つづく














評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ