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ハイスペが勝手に暗躍

仮眠室の扉が開かれてしまった…私は眠ったフリをしながらベッドの上で丸まっていた。よく考えれば、今更隠れるとか必要なかったのに…と息を潜めてから気が付いたが、起き出すタイミングを完全になくしてしまった。


「…ん?おい?ライフェルーガ?…マリア嬢も、大丈夫か?」


ん?思わず掛布の隙間から扉辺りを覗き見てみた。


するとライフェルーガ殿下とマリアが床に倒れ込んでいるじゃないか。どうしたの?さっきまでは元気そうだったけど?


「殿下、どうされましたか?おや…ライフェルーガ殿下と…何かありましたか?どうされたんでしょう?」


気のせいかな?声を掛けてきたヒルズ少佐の声が、若干だけど楽し気じゃない?


「ふむ…どうやら魔力切れみたいだな…ああ、そうか。ヒルズ、医術医を呼んで来てくれ。ライフェルーガとマリア嬢の具合が良くないと…」


「御意」


アイレンルーガ殿下に指示されてヒルズ少佐は素早く部屋を出て行った。益々どうしようと焦ってくる…


すると、私がくるまっていた掛布が、いきなり剥がされた!


「…っひ!」


掛布を捲ったのはアイレンルーガ殿下だった。……いやなんでベッドに乗り上げて来るの?私の体の上に跨ってきて見下ろされてますけど……何なんなの、怖いんだけど?


アイレンルーガ殿下の顔がゆっくりと近付いて来た。思わず手で顔をガードして美麗な顔の直撃?を免れようとした。


そして耳元にアイレンルーガ殿下の吐息がかかる。


「いけない子だな…寝台の中で何をしていたんだ?」


何もしてない!…けれど枕の匂いを嗅ぎました……かなり変態臭いことは間違いない。黙って首を横に振った。


アイレンルーガ殿下は魅惑的な微笑みを浮かべたまま…また耳元で囁いた。


「暫くそこで大人しくしていろ…」


「…っ?!」


耳から電流が流れて来たのかと思った。体が硬直して固まったまま放心状態で、ゆっくりとベッドを降りたアイレンルーガ殿下が離れるまで息が出来なかった。


色んな意味で死ぬかと思った…


やがてヒルズ少佐が連れて来た医者が、倒れて込んでいるライフェルーガ殿下とマリアを見て


「魔力切れですね」


と診断をして、担架に乗せると二人を運んで行った。


どうして魔力切れ…?


ベッドの上で体を起こすと、戸口に立ったアイレンルーガ殿下が黙ってこちらを見ていた。気まずい…ゆっくりとベッドから出ると、着崩れたドレスを少し直して急いでアイレンルーガ殿下の正面に立った。


「気分が悪くて寝ていた…訳じゃないんだな?」


「はい…お二人が入って来たので隠れようと…」


「そうか…ライフェルーガ殿下とマリア嬢は魔力切れで倒れた。原因は、フローア嬢に近付き過ぎたから魔術が発動したと見ている」


「魔術…あ…」


先程、ベッドの中に居る時に魔術が発動していた…あれだ。でも…ちょっと待ってよ?


「アイレンルーガ殿下は攻撃魔法は発動しないと仰っていたじゃないですか?ライフェルーガ殿下とマリア様は倒れてしまいましたが…」


「ああ、攻撃魔法は発動していないよ?」


「しかし…!」


「あれは補助魔法だ。空気中に飛散している魔力を集める『吸収魔法』の応用だ」


「吸収っ?!それに…透過魔法も吸収魔法も魔力消費量の多い、高位魔法ではありませんか?よく考えれば私が使えるはずがありません。どういうことなんでしょうか?」


そうだ、どう考えてもおかしい。私は魔術はそれほど得意ではないし、いくらアイレンルーガ殿下が魔術式をあの誓約書に取り込んで下さったとしても、私があれほどの高位魔術を連続発動出来るはずがない。


「術式は俺が構築してあの誓約書に埋め込んでいるが、厳密に言えばフローア嬢が術を発動している訳じゃない。透過魔法も吸収魔法も…術者はライフェルーガだ。あいつの魔力を使ってフローア嬢に透過魔法と吸収魔法を使っている…という仕組みだ」


「そんなことが可能なのですか?!」


穏やかな微笑みを浮かべるアイレンルーガ殿下を見上げた。


そうだった…アイレンルーガ殿下はこの国一番の魔術師であり…おまけにこの国一番の剣の使い手だ。この近隣諸国の中でも最強の魔法剣士だと言われていると聞く。


「殿下がその特殊な術式をライフェルーガ殿下にお渡しした魔術誓約書に組み込んでいる…という訳ですね。発動条件は、私に関わろうとした時…ですか?」


アイレンルーガ殿下は私を仮眠室から部屋の外へと促した。


廊下に出て隣の執務室の中に入ると、ヒルズ少佐が心配そうな顔で私を見ていた。


「発動条件はもっと細かく設定している…例えばフローア嬢の1ヘード以内にライフェルーガが近付いて来て、フローア嬢の名前を口に出した時…とかね。あ、因みにマリア=プーデ子爵令嬢の体の不調は俺がちょっと小細工しているから別の魔法ね」


「…!」


別の魔法!そんなことまで…


ヘードとはこの世界のモノの長さを表す単位で、1ヘードは1メートル強ぐらいの幅だ。つまりライフェルーガ殿下が私に1メートルくらいの距離に近付いて来て、尚且つ私の名前を出してきたら高位魔法が発動するということか…


でもどうしてそんな面倒な手間の魔法をかけてまで、魔術誓約書を作ったのかな…確かに私が破棄の件をアイレンルーガ殿下にご相談した時に、ライフェルーガ殿下に関わりになりたくないと訴えたけれど…ここまでする?


「でも私に関わる度に魔力切れを起こしていたら、ライフェルーガ殿下にも負担が…」


殿下は執務室の椅子に座り、こちらを見た。アイレンルーガ殿下の顔を見て…体が強張った。


初めて見るような怖い顔をしていたからだ。怒ってる?


「三年だ…あいつに代わって政務をこなしてきた。どれほど忙しくてもライフェルーガを助けてやろうと思って踏ん張っていた。だがもう黙って見ている訳には行かない。ここで示しておかなければ国王妃もライフェルーガも気が付かない。しかし表立って攻撃は出来ない…継承権争いに突入してしまう。それは避けたい…まあ要するに今までの鬱憤を嫌がらせとして返している訳だ。フローア嬢も仕返ししてやれっスカッとするぞ?」


「……はぁ」


スカっととか、ムカッととか、私は別に関わりたくないからどうでもいいんだけど…兄弟って拗れると姉妹よりねっちょりした陰湿な関係になりそうだよね?現に今なってるけど…


あの魔術は犯罪スレスレ…のような気がするけれど、ライフェルーガ殿下の魔力を勝手に使ってわざと魔力切れをおこして嫌がらせをしている訳だ。これもライフェルーガ殿下が私に近付いて来なければ、殿下には実質の被害は無い。


つまりはライフェルーガが慎ましく政務をこなしていれば問題無いわけだね。それに術をかけられているライフェルーガ殿下が、いつまでも気が付かないのも問題ありだよね?


例えばだけど呪術とかを自身にかけられているかもしれないことにも気が付かないのは、王族としてどうなの?って気もするし。危機管理能力が低すぎる。


まあ…そのライフェルーガ殿下を欺きながら術をかけられるアイレンルーガ殿下が上手ってこともあるんだろうけど…でも気になる。本当にそれだけの為にあんな術を仕掛けたの?


最初の発端は私がアイレンルーガ殿下に破棄の手助けを求めたことからだけど…どうにもスッキリしない。


「さあ…まだまだ書類が残ってるぞ」


アイレンルーガ殿下はそう言って私の背中を押して書類タワーの前へと押し出した。


解せない…


そして解せない私の所に、何故か国王妃…セリナージャ妃から呼び出しがかかった。


政務が滞るからやめて欲しい。この方っていつも人が忙しくしている時に限って邪魔しに来るんだよね…


「ああ、行っておいでよ。但し嫌なことは、嫌ですってはっきり断れよ?」


アイレンルーガ殿下が、お父さんみたいな口調で私を送り出してくれた。


第一執務室を出て王宮内の貴賓室に移動して、セリナージャ妃と対面することになった。


「よく来ましたね、フローア嬢」


貴賓室に入った私にセリナージャ妃が声をかけてきた時、私の周りに僅かに魔力の波動を感じた。僅かだがまた勝手に何かの魔術が発動している。


ああ…これ、アイレンルーガ殿下がまた何か魔術を仕掛けていたんだ。実に嫌な予感がするけれど、これ私ってば…主にライフェルーガ殿下とかセリナージャ妃とかマリアとかを引き寄せる餌にされてないかな?アハハ……ハァ…

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ・医術医 多分、〈魔術医〉〈医術師〉〈医術士〉〈術医〉などの誤記と思うのですが。 或いは単に〈医師〉でしょうか。
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