華麗に隠れています
まったり更新ですが…ブクマありがとうございます^^
誤字修正しています、ご報告ありがとうございます
まあ火を見るよりも明らかなんだけど、ライフェルーガ殿下も政務がしたくない、マリアちゃんはもっと政務がしたくない…お互いに譲り合いをしているように見せかけて、政務をどこかに丸投げしようと必死なのだ。
そこでお互いに丸投げ出来そうな私(元婚約者)に目を付けて何をとち狂ったのか、政務をやれ!と言い出した…それが今のこの状況なのだろう。
私はもう部外者ですよ?分かっているのか?まあ今はマリアちゃんに丸投げされた政務が弧を描いて、ライフェルーガ殿下の手元に戻って来たわけだけど…
「そ…これはっ…そうだ!元々フローアが行っていた政務だろう!アレにやらせればいいんだ!」
だからライフェルーガ殿下もさぁ~何度言えば気が済むの?私は既に部外者だよ!
私はアイレンルーガ殿下の背中に隠れつつ……じっくりと丸投げコントを見詰めていた。
「ライフェルーガ…元々はお前の政務だろう?」
アイレンルーガ殿下がそう言うとライフェルーガ殿下がアイレンルーガ殿下を睨みつけた。
「だったら…兄上がしてくれよっ!」
「……」
流石のアイレンルーガ殿下も絶句している気がする。ここまで馬鹿だとは思わなかった。
「俺が…その政務まで請け負ってしまうと…お前は政務を全部しないつもりか?」
「え?」
「…っ!」
マリアがキョトンとした顔をしている。あれ?これはマリアは知らなかったみたいだね。
「はぁ……もう気が済んだか?もうすぐ会議に出ねばならんのだが?」
アイレンルーガ殿下がそう言うと、ライフェルーガ殿下もマリアも苦々しい表情を浮かべながら渋々去って行った。
「もう声を出してもいいぞ?」
アイレンルーガ殿下は私を顧みた。私と言えばアイレンルーガ殿下の背中に張り付いて隠れていたのだが…
「隠れる必要は無いよ?もう分かっていると思うけど…ライフェルーガとマリア=プーデ子爵令嬢がフローア嬢に関わろうとすると魔術が発動するように術式を組んでいる」
やっぱり…!
「発動している魔法は、術の対象の姿が不可視化して周りから見えなくなる透過魔法…ですね?」
「正解」
「あのアイレンルーガ殿下にお手伝い頂いた破棄の時の魔術誓約書…あれが魔術制約付きだったという訳ですね?」
アイレンルーガ殿下はニヤッと笑った。
「まあね…魔術式の誓約の時に術式構成を読まないで誓約するなんてなぁ~ライフェルーガが悪い」
「さようで……」
ぐうの音も出ない。確かにその通りだ。魔術誓約書なんて命や寿命まで縛るような契約もあるのに、よく確認もしないでサインをしてしまったライフェルーガ殿下が悪いに決まっている。
「あの…私に関わろうとすると、私に透過魔法が発動してライフェルーガ殿下とマリア=プーデ子爵令嬢からは私の姿が見えなくなる…だけですよね?その…そこに何かの攻撃魔法が発動する、とかの危険は無いのですよね?」
恐々私が聞くと、アイレンルーガ殿下はニマーッとわっるい笑顔を浮かべた。
出た…腹黒…
「攻撃魔法は出ないよ、攻撃はね…」
「承知いたしました…」
攻撃以外は何かが出るんだな?しかもどんな魔法が出るか分からないじゃこっちの方が怖いじゃないの!…これは私の方からライフェルーガ殿下とマリアに不用意に近付かないように、気を付けなきゃいけないんじゃないかな?
しかしだ……
「なんで私が気にしたらなあかんねーーーん!」
ふうぅ…異世界でひとりノリツッコミも疲れるわ…
今は第一執務室には私しかいない。アイレンルーガ殿下とヒルズ少佐は大規模討伐に関する軍事会議に参加中。ギナセ中尉はなんと、通常の軍の業務があるんだって…警邏、つまりはギナセ中尉は街の巡回業務があるんだよ。本来の職務は軍属なので警邏業務と魔獣の討伐…例えば戦争とか小競り合いがあったり、異世界でいう所の警察の職務も軍人が兼ねているので、実はギナセ中尉もアイレンルーガ殿下でさえも滅茶苦茶忙しい。
それなのにヒルズ少佐もギナセ中尉も事務官も兼務しているなんて辛すぎる。軍の方でもローテーションを組んで事務官に向いてそうな方…つまりは二か国語以上の文字の書き取りが出来る事務仕事に向いてそうな軍人さんを事務官としてお手伝いに回してくれているらしい。
それもこれもセリナージャ妃が嫌がらせして事務官を入れないようにしているからなんだよね!セリナージャ妃は軍関係の方には口を挟めないので、アイレンルーガ殿下も軍人の方々にお手伝いを頼っている…とギナセ中尉が教えてくれた。
セリナージャ妃のこじらせが国の運営?国営まで影響しているのよね。大変だよ…
その時、執務室の扉が急に開いた。顔を上げて扉の方を見てびっくりした。
またまたライフェルーガ殿下とマリア=プーデ子爵令嬢いる!!ノックくらいしろっ!
いや…ツッコむのはそこじゃない…
「なんだ、誰もいないのか?」
ええっライフェルーガ殿下!?いやいやっここにいるし!……あ、そうだった。私の透過魔法が発動しているんだった…これはどうしたものか…柱時計を見る、只今時刻は夕4刻半…つまり夕方の4時半だ。
殿下達はそろそろ会議を終えて戻って来る時刻のはず…
私は書類をゆっくりと机に置くと音をたてないように椅子から立ち上がった。
ライフェルーガ殿下もマリアも遠慮もしないでズカズカと室内に入って来た。
「誰もいないわね?」
「ここいればフローアが戻って来るんじゃないか?戻ってきたら捕まえて政務をさせよう」
おいおいっ!ライフェルーガ殿下も何を無茶を言うんだよ、それって拉致とかにならないか?ていうか、こんなつまらないことに時間を使っている暇があるなら、戻って政務しろ!
私は足音をたてないようにカニ歩きをしながら、執務室の部屋の壁際に移動して静かに呼吸をして、息を殺していた。
しかしこの状況…どうしよう。アイレンルーガ殿下達が帰って来てくれたら追い出してくれるだろうけど…もし、執務室に誰か別の人が入って来たらマズイんじゃないのでは?
ちょっと待てよ?今は夕方ということは、今日一日で纏めた仕事を役人の誰かが持って来る時間帯じゃないか?
今は私は居留守?を決め込んでいるけれど、誰かが執務室に入ってきて
「あれ?フローアさん壁際に立ってどうされました?」
なんて私が見えてる役人が声をかけてきたらどうしよう!?
どこかに隠れたほうが……そうだ!殿下が寝泊まりしている仮眠室に隠れていればいいんじゃない?
私は再びカニ歩きをしながら、壁伝いに動き…仮眠室の扉を静かに開けて室内に滑り込んだ。
室内はカーテンが降りていて暗い。すぐに仮眠出来るようにしてあるのかもしれない。音をたてないように、扉から遠ざかろうとしたらライフェルーガ殿下の焦ったような声がした。
「あ、兄上の声が聞こえるぞっマズイ!隠れるか」
「ええっ…」
なにぃ?!何故ライフェルーガ殿下が隠れるんだ……ってこっちに来る?!
私は慌てて扉から離れると手探りでベッドの端を掴むと思い切って、寝台の掛布を捲り寝台の中に潜り込んだ。
うわ…っ枕からアイレンルーガ殿下の普段使っている香水の匂いがするっ!
…とか思っている場合じゃない。仮眠室の扉が開く音がして、ライフェルーガ殿下とマリアが室内に入って来てしまった。
「……」
私は寝台の上で動かないように息を潜めた。
「くそっ…フローアめ…」
とライフェルーガ殿下が呟いた。その時、私の体を中心に魔術式が展開した。
「!」
「…っ」
「…なんだ?おかしい…」
ライフェルーガ殿下の声が聞こえたので慌てて寝台の上で体を起こした。
「ん…ライフェルーガいるのか?」
あ…アイレンルーガ殿下がライフェルーガ殿下の魔力を感じ取ったのか、外から声を掛けてきた。
ベッドの上で私はオロオロするしかないのだが…
どっどうしよう?!