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廊下で遭遇

宜しくお願いします。久しぶりの投稿で誤字感知レーダーがまたも壊れているようです。お目汚しすみません

シュッ…シュッ…籐籠に書類を入れながら、『急ぎ』の籠に書類がいっぱいになってきたので、アイレンルーガ殿下の執務机の上に籐籠を移動させようとした。しかし、殿下の机の上も書類タワーが乱立している状況だ…う~ん


殿下の机の上の書類を手に取った。まずは殿下の机の周りから片付けようか…


空いている籐籠を殿下の机の下に置いて、急ぎとそうじゃないので分けていく。そしてライフェルーガ殿下関連の決裁書類を見付ける度に、メラメラと怒りが込み上げてきた。


アイレンルーガ殿下が、どういう訳だかライフェルーガ殿下の仕事を手伝っている…外交関係等々は私が取り仕切っていた。ということは…だ、ライフェルーガ殿下は政務をなーーにも、なーーーにもしていなかったという訳だよね?


それでマリアとデートばかりしていたって訳ね?暇があってよかったね?


「…っち!」


「!」


思わず舌打ちしてしまったら、ギナセ中尉が盛大に体をビクつかせていた。


「戻ったぞ~どう?」


その時にアイレンルーガ殿下とヒルズさんが戻って来られた。殿下の机の上の山を片付けていた私は、タワーの影に隠れていたのだが…


「この籠、何?」


「それはフローア=ゼルベデシ嬢が書類を分ける為に準備されました」


「おおっそうか…で、フローア嬢はどこに行ったんだ?」


「ここでぇ~す」


私が声を上げるとアイレンルーガ殿下が書類の向こう側から覗き込んでこられた。


「…!フローア嬢…ドレスはどうしたの?」


「動きにくいので着替えました」


私がそう答えると、アイレンルーガ殿下もヒルズさんも驚いたのか固まっている。私は書類に目を通しながらアイレンルーガ殿下に


「殿下、こちらの籐籠の中の書類の確認をお願い致します。期日が迫っています」


急ぎの書類が入った籐籠を指し示した。


「あ、ああ…」


アイレンルーガ殿下は私の有無を言わさぬ雰囲気に気圧されたのか、すぐに籐籠から書類を取って確認を始めた。


「あの…」


声を掛けられ顔を上げると、ヒルズさんが敬礼をして私を見ていた。


「ご挨拶遅れまして、グリード=ヒルズ少佐であります、宜しくお願い致します」


「フローア=ゼルベデシで御座います、宜しくお願い致します」


他社の営業の方との初顔合わせみたいな硬い挨拶になっちゃったな…仕方ないか。


「この仕分けは…令嬢がお考えに?」


今、床には籐籠が壁に沿って等間隔に置かれている、籠には『外務省』『内務省』等の各省や軍部の何部隊などの名前を書いた紙を張り付けてある。


「緊急の決裁書類をある程度の処理が出来た後に、手を付けるつもりです。どの省の書類か第二王子殿下か第一王子殿下の政務書類なのか…はっきり分けておいた方がよいかと思いまして」


『第二王子殿下』と『はっきり』というところの言葉を嫌味なぐらい大きく言ってみた。私がわざとらしくアピールしたことにヒルズ少佐も気が付いたようで、涼し気な目元を一層細めて見せた。


「確かにはっきりと分けておいたほうが宜しいですね……」


冷ややかだ……冷気系の魔法でも放ったような冷ややかさだった。私も怒っているけれど、ヒルズ少佐も腹に据えかねていると見た。


「あ…署名が出来たのだが…それと不備のあるものも見付けたのだが…確認してくれ」


んん?早いっ!しかも訂正までしてくれるなんて…その声にアイレンルーガ殿下の手元を見ると、不備だと数十枚の書類の束を持っている。私は殿下から書類を預かると、サインのチェックと不備書類の不備部分に『フセン』を貼って確認をしてから『クリアファイル』に宛先ごとに挟み込んだ。この透明化にするファイルの開発苦労したよなぁ~と、思いながら結構な重量のクリアファイルを手にアイレンルーガ殿下の方を見た。


「この書類を返却してきますわ」


「ああ…頼んだ」


この時私は、各省庁にこの急ぎの書類をお返ししなくちゃ!と焦っていたのですっかり忘れていたのだ。ここが王城の中だということを…


私は足早に役人棟に入ると、入口で建物の案内板を見た。まずは内務省から…つい最短ルートを確認してから動いてしまう悲しいかな体に染みついた社畜精神…!


内務省の大部屋に入ると、担当の役人の方を呼んで書類を渡した。そして、不備のあったものを返した。


「返却が遅れまして申し訳ありません。こちらと…それとこちらは試算の金額と…こちらの数字が違っていると殿下から指摘を受けております。ご確認下さいませ」


「えぇ?どれですか…うわっ本当だ、すぐ訂正します!今日中にはお持ちします」


「宜しくお願いします、では」


という感じで各省を回って…地方自治統括省という、地方領主を纏める機関に書類を渡した時に、私が使用人の格好をしているので新しい事務官だと思ったのか、役人のおじさんが


「新しい事務官さん?手際がいいね…ここだけの話、アイレンルーガ殿下の政務って激務でしょう?」


と、言って耳打ちをされてきた。


「そうですね…決済書類に埋もれておいででした」


「だろうね…セリナージャ妃が事務官を一切入れないように指示してるからね…そんなことしたら自分達にシワ寄せが来るのにね…おおっといけない、内緒でね?」


「はい…失礼致します」


なるほど、各省庁の役人の皆様もこの嫌がらせはご存じのことなのか。それでも表立ってはお手伝い出来ないと…あ~何となく分かってきた。あれほどアイレンルーガ殿下が書類を貯め込んでいても今日半日の間に、省庁の役人が


「決済書類を早く許可しろ!」


とか言って、執務室に乗り込んでこないのは…役人の方々は皆、知っているからだ。アイレンルーガ殿下が激務で書類に囲まれてそれでも政務をこなされているのを…


さて、残りは軍関係の書類か…役人棟から出て中庭の回廊を歩いていると……うわっ?!ライフェルーガ殿下とマリアだっ!


一瞬、狼狽えたが…何故、私が慌てなくてはいけないのかと…すぐに冷静になれた。


無視しよう…そもそも関わるなと魔術誓約書をかわしているしね。私は背筋を伸ばして前を向き…そしてライフェルーガ殿下とマリアとの距離が近付いて来た辺りで、廊下の端に寄り腰を低くした。


ライフェルーガ殿下に頭を下げるのは良いとしても、何故小生意気なマリアに頭を下げなきゃならないのか?と内心はムカムカしている。


そんな時にライフェルーガ殿下とマリアの会話が聞こえてきた。


「ねえ~もう王子妃の部屋片付いたぁ?」


「寝具や寝台や備品を全て取り替えるように指示している、もう少し待ってくれ」


「あんな人の後に同じ寝台でなんて寝たくないもん~」


「分かっているよ、マリア」


……何て言い草だ!ドレスの端を掴んでいた手に力が入る。グッ…と唇を噛み締めて目を見開き、二人が通り過ぎるのを待った。私、王子妃の寝台なんて使ったこと無いのよ?私は朝から城に登城して、夕食前に何とか仕事を終えて毎日自分の家に帰ってたよ…資料を探す図書館と王太子妃の執務室…それぐらいしか移動していないよ?


ライフェルーガ殿下とマリアが行き過ぎ…廊下でイチャイチャしながら去って行く馬鹿二人の背中を見詰めながら呟いた。


「滑って転んじまえ!」


気を取り直して、第一執務室に一番近い軍の事務所を訪れた。


「マホーイット大尉はおられますか?お待たせしております、軍の演習計画案の決済がおりました」


私が事務所の中におられた同年代っぽい軍人に声をかけると、私が使用人の格好をしているからか、数人の若い軍人の男の子達が一斉に近付いて来た。


「え?殿下の所からのお使い?」


「うそっ!?殿下のところに若い女の子の事務官入ったの?」


「うわあっマジで!俺もあっちに移りたい!」


いきなり周りを男の子達に囲まれてしまった。すると…


「静かにせんか!…マホーイットは私です」


野太い声が室内に響いて騒いでいた男の子達が直立不動になっている。そして荒々しい靴音を鳴らして大きな体躯のマホーイット大尉がヌオッと私の前に現れた。


大きい…2メートルはあるのかな?


マホーイット大尉は私と目が合うと、おや?と首を傾げた。


「フローア=ゼルベデシ子女ではありませんか?そんな使用人の制服を着用されてどうされたのですか?」


「……」


あらら…マホーイット大尉って私のことをご存じだったのか?


「えええっ?!」


軍人さん達の絶叫が部屋に響いた。

ブクマ沢山ありがとうございます!

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