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妥協案?

ブクマありがとうございます。後、一話か二話で完結予定です。

誤字ご報告ありがとうございます

詳しい話があるから…とアイレンルーガ殿下に執務室近くの空き部屋に押し込まれた。


こんな倉庫みたいな所でなんだろう?と扉を閉めて消音魔法を張ったアイレンルーガ殿下を見詰めていると、アイレンルーガ殿下は、あ~とか、う~とか呟きながら頭を掻いている。


「実は……ビアンレア公国に行く前に、ゴホン…ん、俺と婚約して欲しいんだ」


「え……ええっ?!」


こんな小汚い(失礼)部屋で…いきなりのプロポーズ?!


困り顔のアイレンルーガ殿下は頭を掻きながら説明してくれた。


「ライフェルーガとセリナージャ妃がビアンレア公国に帰国する際に…俺も国を代表してビアンレア公国を訪問することになった。それはいいんだが、ビアンレア公国から書簡が届いて…シセリド殿下の子供の公女殿下方との婚姻を打診されてね」


「婚姻の打診?!」


私は頭の中でビアンレア公国の王族の系譜を思い出していた。


あれ…?


「あ…あのぅ…ビアンレア公国の公女殿下ですよね?」


アイレンルーガ殿下はクサヤを嗅がされたみたいな表情で、顔をしかめている。


「ああ……」


「私の記憶が正しければ、公女殿下は二人おられて…ご年齢は確か、8才と6才だと思うのですが…」


「俺は幼女趣味じゃない」


「はぁ…」


否定するのはそこなの?と言うツッコミは置いておいて…アイレンルーガ殿下は御年20才だ。異世界でも20才の男の人が8才や6才に…なんて犯罪だし、後10年待てばいいとか光源氏計画を発動するにも…こんなアイレンルーガ殿下の表情を見ればそういうことを嫌悪してそうだ。


アイレンルーガ殿下は、一歩私に近付いて来ると


「俺は……妃にするなら、フローア嬢がいいんだ」


と微笑んだ。


ひえええっ?!こんな小汚い(また失礼)部屋で甘い囁き…!


「絶対に悲しませないし…傷つけたりしない。一生大事にする」


この言葉は!もしかして…私がライフェルーガ殿下の事をご相談した時に、アイレンルーガ殿下の前で泣きながら


「こんなに悲しいなら婚約なんてしなければよかった…傷つけられるなら、独りでよかった…」


と言ったのを覚えていらっしゃるのかな…今思えば私に目の前で大泣きされてしまって、アイレンルーガ殿下も困ったでしょうね…恥ずかしい。


今、倉庫で告白もどきを囁かれてはいるけれど…どうしようか。


私もこのままじゃ恋愛結婚は出来ないだろうし…ライフェルーガ殿下の時と同じ政略婚で、しかも今の状況はアイレンルーガ殿下が幼女との婚姻から逃れたい一心での妥協案だろうとは思う。


でも政略婚でもこの方は私を大切にしてくれる。それだけは確信を持って言える。


私はアイレンルーガ殿下の前で居住まいを正して、カーテシーをした。


「謹んでお受けさせて頂きます…んぁ…?!」


私が言い終わらないうちに、体が何かに包み込まれた。ア、アイレンルーガ殿下だ?!


「ありがとう…ありがとう、フローア…」


アイレンルーガ殿下の筋肉凄い!いや、感動するのはそこじゃないけど…殿下の体が大きいからかな?すっぽり私を包んでくれていて、温かい。


という訳で、アイレンルーガ殿下との婚約と婚姻を急遽すすめることになった。


婚約の打診を受けたと両親に報告すると、二人は既に知っていたかのような素振りを見せながら嬉しそうに準備をし始めた。


怪しい。


そして次の日から私と事務の皆さんとアイレンルーガ殿下は『王太子の執務室』に一斉に引っ越しをした。執務室移転?も特に問題も無くスムーズにお引越しが済んで、夕方には通常業務をこなしていた。


本当に怪しい。


その日の夕方、国王陛下と元国王妃のアナベラ様が待ち構えている、王族の私室にアイレンルーガ殿下と共に向かった。


やっぱり怪しい。


こんなに周りから反対もされずにとんとん拍子に婚約と婚姻が進むことなんてある?


私室に向かいながら、ナチュラルに私の手を握って来るアイレンルーガ殿下。


「もしかして、随分前からご準備されてました?」


敢えて何を…とは言わなかったけど、アイレンルーガ殿下はニヤリと笑って私を見下ろすと


「そうかもね~」


と言った。


久々の腹黒王子様降臨だ…いつから準備なんて聞かなくても薄々分かっているよ。恐らく、ライフェルーガ殿下と私が上手くいっていなくて、マリアが横入りしてきた辺りから着々と準備をしてきたんだろうね。


廊下で立ち止まって私を見詰めているアイレンルーガ殿下の瞳を覗き込んでいると…それも違うと思い始めてきた。


もしかして…前から思っていたことだけど


「私は…昔はアイレンルーガ殿下の妃候補だったのでしょうか?」


ほんのわずかだが、アイレンルーガ殿下の瞳が細められた。そしてまたいつものニヤニヤ笑いを浮かべると


「そうかもね~」


と、仰った。


そうか…そうなのか。だったらそうだと腹を括りましょう。


そうしてアイレンルーガ殿下に手を引かれながら私室の中に入った。


しかし元夫婦が一緒に待ち受けてるって変な感じだね。アナベラ様は気詰まりとかはないのかな?


アナベラ様は私のお母様と親友同士なので、ぶっちゃけ公爵家の中庭でお茶を飲んでるとか、観劇にお出かけして若いイケメン俳優にキャッキャッしている姿とか…つまり遊んでいる時しかご一緒したことがないので、こう…なんといいますか、シャンとして威厳を醸し出しているアナベラ様を初めて見た感じがするのだ。


わあぁ…本当に元王妃様だったんだ。いつものフワフワした感じじゃない。


こうやってアイレンルーガ殿下と国王陛下とアナベラ様の三人が並んでいると、親子だな~と分かる。アイレンルーガ殿下が二人の良い所取りをして生まれたんだよね、うんうん。


部屋に入り、カーテシーをして国王陛下に声をかけて頂いたので部屋の中まで進んで再び腰を落とした。


「さて…改めてフローア=ゼルベデシ公爵令嬢、今まで王族の内情で令嬢を振り回してしまって済まなかった」


「!」


陛下が謝罪された!


私は更に深く腰を落とすと慌てて言葉を紡いだ。


「謝罪などお止め下さいませ、私は臣下として陛下のお心に添う…」


「フローア」


アナベラ様が急に私に声をかけてこられた。いつも母と一緒の時に聞いている優しい声音だった。


「アイレンルーガの手を取って下さってありがとう。これからは義母になりますが…また一緒に観劇に行きましょうね」


軽やかな声に顔を上げると、アナベラ様は泣き笑いだが嬉しそうな顔で微笑んでおられた。


「はい…はい、宜しくお願い致します。お義母様」


「まあ!」


「フローア…私もお義父様と呼びなさい」


げえっ?!何故、国王陛下が…


「父上~急にそんなの呼べないよ?」


私がオロオロしていても、アイレンルーガ殿下は笑っていて助けに入ってくれない~もうっ!


でも…声を上げて笑って目尻を下げているアイレンルーガ殿下を見れるのは貴重だな…まだ20才だもんね。


私も親子の朗らかな会話を聞きながら、ホッコリとしていたのだった。

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