表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/24

囮ですか?

ライフェルーガ殿下とセリナージャ妃の公開処刑…もとい


ドラマチック宮廷ドラマを近くで見てみたい!と思ったのだが、私は物理的に例の魔術のせいで、ライフェルーガ殿下とマリア=プーデ子爵令嬢の側に近付けないので、アイレンルーガ殿下の近くには寄れない。今日はライフェルーガ殿下はアイレンルーガ殿下の隣に座っているんだもんな。


でもギリ、1ヘードの距離に離れて座っていればいいんじゃない?とのロイト様の言葉に椅子と椅子の距離を測って、何とか座っていても声が聞こえる範囲の傍聴席に陣取れた。私の左右にはピソア中佐とヒルズ少佐がいる。


「私は完全なる事務職なので、何か事が起こった場合戦力にはなりませんが、ピソア中佐は部隊長も兼任されているので、そちらを盾にお願いします」


と、一応先輩で階級が上のピソア中佐を盾にしろ!と議会の開場前に言ってきたヒルズ少佐。そんなヒルズ少佐の対応にピソア中佐は大袈裟に嘆いて見せていた。


「聞いた?フローアちゃん、こんな氷魔法もびっくりの冷たさの対応している男なのに、令嬢方から物凄くモテるんだよ!この冷たさがいいのかっそうなのか?!」


「はぁ…」


いきなり、ちゃん呼びでグイグイくるオジサマだな…確か既婚者で私くらいの年の息子さんいなかったっけ?こんなオヤジで大変だろうなぁ。


そもそもだけど、国王陛下もおられる議会場で危ない局面なんて起こるのかしら?それこそ近衛のお兄様方が身を挺して要人の方々をお守りすると思うけど…


そうしてドキドキしている間に、議会が始まった。


議会と言っても、大臣クラスの重鎮の方と王族方とマリア=プーデ子爵令嬢…残りはアイレンルーガ殿下の側近の私達だけ…という、どうにも私達事務官はアウェイ感満載なんだけど…本当にこの議会に参加していていいのかな…


おまけにマリア=プーデ子爵令嬢がめっちゃ睨んで来るのよね…知らないフリしておこう。


国王陛下がスッ…と手を挙げられたので、皆が注視した。それを見て宰相が静かに話し出した。


「既にご存じの事と思いますが、ビアンレア公国の大公陛下が体調を崩されており、シセリド第一公子殿下が公務を代行されております。そこでシセリド公子殿下より我が国がビアンレア公国と取り交わしているセリナージャ妃に関する制約について白紙に戻したいとの打診を受けました」


「白紙…」


会議場内がざわついた。セリナージャ妃は俯いている。ライフェルーガ殿下はキョトンとしている所を見ると…セリナージャ妃はこの事をライフェルーガ殿下に伝えていなかったのではないかな?


…と思ったのだが、どうやらそうではないみたいだ。ライフェルーガ殿下は勢いよく立ち上がると国王陛下に向かって叫んだ。


「父上っ約束が違います!最良の伴侶を得れば継承権はそのままだと仰ったではありませんか?!私はマリアを苛める悪辣なフローア=ゼルベデシと婚約破棄をして伴侶を得たではありませんか!」


国王陛下…そんな条件をライフェルーガ殿下に突きつけていたの?


「マリア=プーデ子爵令嬢がフローア嬢を執拗に狙っていたのを知らないのか?」


私の横でピソア中佐が呟いた。さらにヒルズ少佐が答えている。


「セリナージャ妃はフローアとの婚姻を勧めたと聞いています。セリナージャ妃の選択は正しい。ところがライフェルーガ殿下はマリア嬢を選んでしまった。マリア嬢に唆されたのでしょうか?」


ヒルズ少佐はピソア中佐の方を見たので、私もピソア中佐の顔を覗き込んだ。


「ライフェルーガ殿下とセリナージャ妃がこの国に残る為には…フローア嬢を選ばねばならなかったのか…だがライフェルーガ殿下は見誤った」


そうか…マリア=プーデ子爵令嬢は、国王陛下のこの思惑のことは知らずに私を婚約者から追い出そうとしていたのかな?ライフェルーガ殿下はそんなマリア=プーデ子爵令嬢の裏の顔を見抜くのも、王子殿下としての資質を試す為に必要なことだったのかもしれない。


国王陛下もそして…アイレンルーガ殿下もライフェルーガ殿下を試そうとしていたのかも。


そうよ、お父様もアイレンルーガ殿下も私を狙うマリア=プーデ子爵令嬢の存在に気が付いていてそのまま泳がせていたということは、ライフェルーガ殿下にマリア=プーデ子爵令嬢の悪行を気付かせる為にわざと?そして私には王家の影と公爵家の護衛をつけて身の安全を確保する…


そうだ、これしか今まで起こったことの説明がつかないもの…あれ?私って囮にされたの?


う~ん、怖い思いもしたことはないしライフェルーガ殿下と婚姻したくなかったのは事実だから、私的に破棄されて結果は最善よね。


マリア=プーデ子爵令嬢は事態が飲み込めないのか、ライフェルーガ殿下に聞いている。


「殿下~白紙って何ですぅ?何かあるんですかぁ?」


マリアが聞いてきたので、ライフェルーガ殿下はマリアの肩を抱くと国王陛下に叫んだ。


「父上っ私の伴侶はマリアです!これほどに純真で優しく美しい妃は彼女の他にはおりません!」


国王陛下は深く息を吐き出された。


「そうか…ではその娘を連れてビアンレア公国へ発つが良い。シセリド殿下も受け入れは容認されている」


会議場内はまたざわついている。


ああ……そうか、これが国王陛下の最終判断ね。本当はこうなる前にライフェルーガ殿下に気が付いて欲しかったのよね?


ライフェルーガ殿下はずっと黙って俯いているセリナージャ妃を見てまた叫んだ。


「母上っ何とか仰って下さい!ビアンレア公国に行かされると…私は継承権を放棄しなければならないのですよ?!」


「…嘘ぉ…」


議会場内にポツンと呟いたマリアの呟きが響いた。


ヨロヨロと顔を上げたセリナージャ妃が口を開きかけた時にマリアの叫び声が響いた。


「け…継承権放棄って何よ…え?王族じゃなくなるの?」


ライフェルーガ殿下は、マリアを抱き締めると何とか笑顔を見せている。


「マリア…一緒にビアンレア公国に行ってくれるよな?母上の母国だ、生活の保障はされている」


そうかな?と私は内心、首を捻っていた。確かにライフェルーガ殿下はセリナージャ妃の実子だし第一公子殿下の甥にあたるのは間違いない。ただ、私の知る限りビアンレア公国にはセリナージャ妃の実弟が三人いらして、皆様共に子沢山で…あちらでライフェルーガ殿下が継承権を得られたとしても限りなく低いはずだ…


下手をすれば王宮の端の方で細々と生活せざるを得ないのじゃないかな?ライフェルーガ殿下って普通に働けるのかな?


そんな状態の中、セリナージャ妃がとうとう泣き出してしまった。長きに亘る前国王妃アナベラ様への嫉妬心を燃やすあまり、ワイリアーリアリドル王国に条件付きのゴリ押し婚で嫁いできたけれど、国王陛下の寵愛は頂けず(あの国王陛下の目を見よ!冷え切ってるわ)お金の切れ目が縁の切れ目、とばかりに追い出されようとしている。


セリナージャ妃だってアナベラ様と張り合わなければ、母国で幸せな婚姻を結ぶことも出来たはず…


「ライフェルーガ、セリナージャよ。長きに亘り我が国の為に尽力ご苦労だった……」


陛下は本当は怒鳴り散らしたいのじゃないかな…なんて、国王陛下のお言葉をぼんやりと聞いていたら


「いやあああっ?!」


マリアが急に悲鳴を上げた。私の横でピアソ中佐が構えている。勿論アイレンルーガ殿下も立ち上がって何か術を唱えているけど…私とヒルズ少佐はオロオロするばかりだった。


マリアは叫びながらライフェルーガ殿下の体を突き飛ばすと手を振り回している。


「嘘よっ…なんでここに来てっ…何の為に…王族になれないなら意味ないじゃない!」


あ………言っちゃった。やっぱりそう思ってたのか。


「いやよっ絶対にビアンレア公国には……きゃあ、何?やだ…」


ん?暴れていたマリアが座り込んでしまった。


あ…何か捕縛系の魔法がかかっている。アイレンルーガ殿下かな?


アイレンルーガ殿下はマリアの側まで行くと、茫然自失のライフェルーガ殿下に向かって少し微笑んでいる。


「残念だよ…お前がいつか気が付いてくれると思ってたけどな。…陛下、こちらにマリア=プーデ子爵令嬢によるフローア=ゼルベデシ公爵令嬢の暗殺計画の詳細とそれに関する金銭の授受の記録が御座います。暗殺の実行犯は既に捕縛済み、証言も取れています」


マリアは地面に平伏しながら絶叫している。


「いやあぁ?!違うわっ何言っているの?私はそんなこと…」


叫び出したマリアに向かってアイレンルーガ殿下は冷たく言い放った。


「お前がフローアに牙をむかなければ、そのままライフェルーガと一緒にビアンレア公国に送り出すつもりだった。人を貶めて命を脅かそうとする者に慈悲なんて与えはしない」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] >これほどに純真で優しく美しい妃は 他は兎も角純真? 純粋に下心とか野望とかしか無いって意味かな
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ