アップルの新製品
アメリカ、シリコンバレー。
かつてこの地に
今は伝説となった起業家がいた。
スティーブ・ジョブズ。
彼は電子機器の概念を塗り替えた。
彼は技術者というよりも
芸術家に近かった。
ジョブズの立ち上げたアップルは、
今ではこの地球で最も
価値の高い会社になっている。
そんな彼の立志伝は
多くの若者たちの心を揺さぶって
止まなかったが、
今また彼の生前の伝説が明かされた。
ジョブズが禅やヨガのような、
東洋的な神秘主義に親しんでいたことは
すでに伝記の中でも触れられている。
今度見つかった遺品は、
そんな彼の神秘主義の一端を
垣間見せるものだった。
「インドの腕輪」と呼ばれることになった
それは、亡くなったジョブズの形見として
後継のクックの腕に嵌められた。
すると、ジョブズのデッドコピーと揶揄されていた
クックの繰り出すアイディアは、
かつてアップルの黄金時代と呼ばれた頃の輝きを取り戻した。
それは間違いなくまだこの世にないものであり、
かつ絶対にひとびとの欲しがるものだった。
クックは、「インドの腕輪」を科学的に分析した。
東洋には呪術と呼ばれるものがあるが、
一説によるとそれはある種の統計学であるという。
この考えとビッグデータの概念を応用して、
クックは全く新しい製品をさらに送り出した。
“i-Luck”と呼ばれたそれは、
「インドの腕輪」をもとに開発された。
それがはじめてリリースされたプレゼンで、
彼は最新のビッグデータの資料を
スクリーンに映し出し、
自信満々に語った。
「運とはなんでしょう、みなさん。
我々はそれを今まで操れないものと
ばかり考えていました。
しかし、本当にそうでしょうか?
我々の手には今、
今までにはない強力な武器、
ビッグデータがあります。
かつてあるひとは言いました。
『占星術とは統計学である』。
我々はジョブズの遺品から発掘された
この「インドの腕輪」の謎を、
その観点から解析した結果、
見事その仕組みを解き明かしました。
統計的に悪いことが起こる行動は避けさせ、
逆に良いことが起こる行動はとらせるのです。
「インドの腕輪」からは微弱な電流が確認されていましたが、
それを人工的に再現したのが、この”i-Luck”です」
“i-Luck”は社の最大のヒット商品となり、
クックはジョブズからの重荷に応えるどころか、
電子製品の完全に新しい地平を開拓した。
“i-Luck”はほぼ全人類に普及し、
ひとびとを完全に正しく導き、
人類全体のGDPは跳ね上がり、
クックは地球のあらゆる問題を解決した、
とさえ言われた。
そんなクックの体に、
ジョブズと同じ腫瘍が発見された
というニュースを聞くまでは。




