創世神話
遠き星の光輝より、原初の神である創造神は産まれた。
ここはどこか、とんと検討のつかぬ、ただ邪悪な獣が跋扈する殺戮の世界。
まず創造神は剣を携え、全ての獣を一匹残らず殺して周り、世界を一度踏破した。
そこに残ったのは真っ白でどこまでも平らな大地。
ただ、情熱のない大地は寒すぎた。
創造神は最初に情熱の火を灯した。
その火はやがて第二の大神、炎神となり、闘争と鍛治の概念を司った。
だが、神は寿命こそないが、権能を成長させるためには魂を喰らう必要があった。
だから原初の神は66の悪魔を植えた。
悪魔はすぐに神の寵愛を受けて実り、地上を埋めつくした。
悪魔たちは争い、血を流し、それでも繁栄を続け、強き文明を生み出した。
創造神は悪魔たちに試練を与えるべく産まれた時に殺した邪悪を寄せ集め、第三の大神、獣の神を生み出した。
獣は悪魔に立ち塞がり多くを殺すも、最後に悪魔は愛を以て獣を乗り越えた。
最後に褒美として悪魔に寿命を与え、繁殖の悦びを教え、そして悪魔は人間となった。
さらに全能の原初の神は自らの権能を分け、さらに小さな神を産み、8つの元素を世界に与えた。
ふとした時、創造神は自分の生みだした世界を眺め、その熟れた果実の食べ頃を理解する。
いずれ自らを産んだ星へと至るために、やれ豊穣の時期だと一人の悪魔に鎌を持たせ、収穫を行わせた。
全ての人は魂を刈り取られ、人の魂を刈り取った悪魔は豊穣と生命を司る最後の大神となった。
こうして産まれた豊穣、獣、炎、原初の四人の大神は人の魂を喰らい、それぞれの思惑から魂の搾りかすを膨らませ、それを植え、転生させた。
転生を繰り返せば、次々に魂の練度は上がる。
何度も何度も植え、育み、喰らう。
その過程で原初の神は人に慈愛を持つように変貌していき、やがて試練を与えなくなった。
これを幾星霜繰り返した時、大神の一人、死神デスシーンは進言した。
「このままでは人の魂は進化しない」
この一言に心を痛めた全能神は、悪魔を植える際に四大神自らもどれかひとつに転生することを決めた。
そして神々は覇を競い合うと同時に世界の魂を高め、最後に残った神こそが次の世界の方針を決めることとなった。
だが原初の神は強すぎた。
原初の神は情けを持って、転生する時は魔力を別の悪魔に分けるようにした。
さらに原初の神は本来の権能をほぼ全て削り、そのかすから概念として無数の小さな神を分割して産み、自らの切り離せない権能である創造の権能を改変の権能へ格を下げ、自らの剣を最弱の術であると定義した。
最後に、世界に終末をもたらすための67番目の悪魔の王子を生み出し、時が満ちた時、神が宿る子孫はその力を取り戻すであろうと予言を残し、下界へ転生した。
だが、時が来るまで身分を明かしてはならない。
我々の強すぎる力は時として人間を堕落させるから。
こうして世界は破壊と再生を何度も繰り返す。
神々の争いの地として、永遠に血を流す。
原神、ブラネウス。
──一人は剣を持つ世界改変の現人神。
焔神、スサノヲ。
──一人は刀を打つ戦の現人神。
獣神、アナイツィツィトリ。
──一人は人類に最大の災厄を与える現人神。
死神、デスシーン。
──一人は豊穣を呼び、生命を生かして殺す現人神。
巡る、廻る。
これが創世。
世界の始まりである──。