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第81話★そして、黒幕は姿を現した

「くそ、間に合わなかったか……!」


 その時、場外から一人の男が少女を背負ったまま僕たちの元へ駆け抜けてやってくる。


 その男は腰に携えた二丁の古代兵器エンシェントアーティファクトから魔弾を放つ。


 だが、やはりというか壁に弾かれる。


「ちぃっ……。悪いなロクトたち」


 頭を抱えていたのは背中にエリカを背負ったままのアベルだった。


「待ってて、今絶対助けるから!」


 力強く声を上げたのはエリカだ。


「気持ちは嬉しいよ、ありがとう。でもダメみたいだ、この壁急速に小さくなっていってる。もう時期僕たちは潰されてしまう」


 そう言いながら、僕はすでに物質変更も試みたが、こんな物質を扱えるわけもなく、効果を受け付けない。


「くそ、イージスを破るには地水火風に光を加えた破壊魔法でなければ突破できない……。無理だ……」


 アベルもいつになく弱気になっていた。


 もうここまでか、覚悟を決めたその時だった。



「それなら私にできるはず……任せて」


 観客席に特大の魔法陣が広がっていた。


 それは、僕の最高の元許嫁、リカンツちゃんのものだった。


「馬鹿な、五属性の同時行使など有り得るはずがない。まさかあいつは!」


 生徒会長アリエルはその魔力に震え、打ちひしがれている。


「なぜ生きている……? 今回の計画のために俺の使用人と協力者の兵によってリカンツは死んでいるはずなのに、どうしてのうのうと生きているんだぁ!?」


 シュトリがまたも取り乱す。


 それもそのはずだろう、僕が奴隷紋を消してやった一部のシュトリの使用人にはアジェンダ変更を使ってデマの情報を握らせているのだ。


 リカンツちゃんが手こずるとは思えないが、念には念を入れておいてよかった。

 


「はああ! 普通に魔弾!」


 リカンツちゃんはお構いなしに五属性それぞれの魔弾を一度に放つ。


 それは空中で融合し、僕たちを閉じ込めていたイージスを破壊する。


「今だ、出るぞ!」


 どでかく空いてしまった穴から僕たちは一目散に避難する。



「お前たちは化け物かよ、いったいなんなんだ……」


 シュトリは顔から生気を感じられない表情で呟く。


 もはや闘技大会どころではなくなってしまった会場だ、こいつを斬り殺したところで誰も文句は言わないだろう。


 さあ今度こそ本当に終わりだ、シュトリとその兄アリエル、綺麗に死体を並べておいてやるよ。


 僕は剣を振るおうとした。



「──いいえ、そのゴミクズの不手際は私が片付けるわ。そんなくだらないことで手を汚すことないんじゃない?」


「そん──」


「まってくださ──」


 アルと同じローブ姿で現れたそいつは人差し指で空間をなぞようにすると、すっぱりとシュトリとアリエルの首が床に転がり落ちる。


「やっぱり来ると思ってたよ、お前」


 僕の前には一人の女が立ち塞がる。


 何となくだ、何となくそんな気はしていたが、やはりお前が黒幕だったらしい。


「──クロエ」


 すらりと伸びた手足に歩むたびにさらりと靡く黒い髪。


「これで二度目。貴方も予感してたんじゃないかしら、次に言葉を交わす時は、殺し合いの中だって」


 彼女の凛としたその凍えるような声音に、魂が凍てつく。


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