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第78話★そして、一撃を放った

「さあ始まりました、闘技大会予選! 第一試合はこいつ! 最強! 無敵! 鉄壁の守りと最強の一撃を誇る岩石使い、クラス、戦闘ランク共にSのウォーロック・ロック選手とその使用人(コンパニオン)だぁぁ!」


 その実況に会場は大いに沸き立つ。


「……うるせえ奴だ。早くやらせろ」


 そいつは魔術師というイメージから大きくかけ離れた巨体の男だった。


 珍しいな。オーク、亜人か。


 そのオークは歓声に悪態をつくと、魔導書を開く。


 亜人は魔法適性がないものが多く、学園に来るものは少ないのだが……Sランクの魔術師、ウォーロック・ロックか。


「対するはぁぁ! なんと今大会のために使用人から脱却! しかも武器はなんと……剣だ! なんとチーム中二人も剣だ! 剣を持っている! 古き良き時代からやってきた太古の剣士だああ! なんと戦闘、クラス両方とも評価最低のE! あまりにも無謀過ぎる男の名は、ロクトォ!」


……なんだその解説は、言い過ぎだろ。


 観客からの視線が凄まじい。


 こういう時はなにか一言言った方がいいのかな。


「剣に誓って僕は優勝を目指す!」


 だが、その発言に対して会場のリアクションはブーイングで満場一致だった。


 その声に、ツモイは大分苛立っていたようだ。


「師匠の何が分かるというのか……。片っ端から斬り殺してもよろしいでしょうか」


「いやまて、落ち着け。剣士なら腕で黙らせてやろうぜ、ツモイ」


 僕は抜き身の剣をツモイに見せる。


「……そうですね。すみません師匠、冷静さを保つよう心がけます」


 そう言ってツモイは両手で自分の頬をぺちぺちと叩いて喝を入れる。


「な、なんか怖いです……」


 エルは小さく震えていた。


「大丈夫、お兄ちゃんに任せておけ」


 僕はエルの手を握る。


 負の勝負師のスキルは常時効果を放つ。


 だが、それを防ぐためにリカンツちゃんから封印の付呪がついたネックレスを作って貰っている。


 勝負事であればなんでも勝ってしまう勝負師である彼女の姉、アルとの対決に備えて彼女は欠かせない存在だ。


 絶対に守り抜かねば。


「時にツモイ、エル。初動は僕に任せて欲しい。こう見えて耐久力には自信があるんだ、剣聖相手だろうと初手では絶対に引けを取らない自信がある。まずはそれから作戦を立てようか。指揮はエル、隙があればツモイが仕留めてくれ」


 ツモイとエルは首を縦に振る。


「よし、行こう」


 作戦は完璧、後は戦うのみ。



「勝負は簡単。主人(マスター)の身に纏う保護魔法、シールドが破壊された時点でそのチームの負けとなります。さあ、長話もなんだ。胸が踊る戦いが見たいかぁ!」


 おおおおお! と威勢のいい歓声が各地から飛び交う。



「では始めよう! 両者、指輪に誓ってぇぇえ!」


 僕とオーク、ウォーロック・ロックは見合う。


「「この戦いに偽りなし(デュエル )!!」」


 試合が始まる。


 初動は作戦通り、僕が切り込み隊長を務める。


 当たり前だが、剣では到底魔法に敵わない。


 だから呪文を唱え終わる前に一撃を放ち、詠唱を中断させて離脱する。


 そうして敵の隙を分析し、徐々に追い詰めて行く、僕の想定ではこれが最善の戦略プランだ。



──だが、現実はそんなことを考える猶予を与えてくれなかった。


 僕は確かに踏み込んで一撃を放った。


 ただそれだけ。



 それだけなのに──



「……勝者! なんと無名のダークホース、ロクト選手ぅ!!!」



──たった一撃で倒してしまった。



「え……終わり?」


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