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第73話 そして、尾をを巻いて逃げた

「逃亡とは恐れ入ったよ!」


 それをヴァルキュリオスは逃すまいと追いかける。


 さあこい、僕の元許嫁は最強だぞ。



 僕はリカンツちゃんとすれ違う。



「後は頼んだ」


「任せなさい」



 その時、ヴァルキュリオスの動きは止まる。


 リカンツちゃんが魔法で編み出した氷剣に止められたのだ。


「剣は魔法に適わない。そんな当たり前なこと、私も嫌というほど教えられたんだから」


 リカンツちゃんの剣と激突したヴァルキュリオスの剣はいとも容易く凍って砕けた。


 親衛隊の剣であれば相当いいものであろうに、リカンツちゃんの前では紙くず同然に散る。


「な……馬鹿な!」


 剣術と魔術では決定的な差がある。


なぜなら剣術を魔術で防ぐことは容易いが、その逆は極めて難しいからだ。


 正面から技がぶつかり合えば、勝つのは魔術と決まっている。


 確かに僕程度の素人が行う魔術の真似事ならばまだ切ることは出来るかもしれない。


 だが、リカンツちゃんの前ではそんなことは絶対に有り得ない。


 だから、ヴァルキュリオスの剣が砕けるのは必然なのだ。



「け、剣だ! 僕には剣が必要なんだ! ……剣、剣、誰か剣を!」


 ヴァルキュリオスは先程までの戦意はすっかり消え、恐怖に脅えた目をしていた。



「ヴァルキュリオス……」


 親衛隊のデカブツ、バロンはヴァルキュリオスに呼びかける。


「バロン先生、剣を!」


 ヴァルキュリオスの泣き叫ぶような、悲痛な声。


「バカめ、そんなものは無い!」


 バロンはニヤリと笑みを浮かべ、ヴァルキュリオスを罵る。


「なっ……」


「領主は二人と要らぬわ! お前も、誰も彼も死ねば儂が天下よ。共闘? はっ、くだらん。お前は騙されたのだよ、ロクト諸共死ぬがいい!」


 なるほど、じゃあこいつは殺していいやつだ。


「エル、行くぞ」


「えっ……あ、はい!」


 リカンツちゃんの生み出した氷に彼女を入れ、物質変更を発動する。


 物質変更、決して砕けない箱となれ。


 すごいな、この氷は元素の濃度が非常に濃い。


 これを変換すれば絶対無敵の防壁を作り出すことは容易い。


 効果変更、箱よ重力をねじ曲げて魔術師に落下(・・)しろ!


 完成した真っ白な箱は敵の魔術師へと一気に迫る。


「ええい、者ども止めよ!」


 兵士たちはそれを受け止めようとするが、為す術なく弾かれていく。


 そしてエルは魔術師に接近する。


 今だ、物質変更、箱から空気に。


「きゃああ! お、お姉ちゃぁぁん!」


「あ……あいたっ!」


 魔術師とエルは限りなく事故に近い形で激突し、抱き合いながら倒れる。


 瞬間、結界が解除されて僕の部屋が元に戻っていく。


「チィ……。止むを得ん、いったん引くぞ!」


 ブラン兵たちはヴァルキュリオスと魔術師を残して統率の取れた動きで撤退していく。


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