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第72話 そして、勝利を確信した

 僕らとヴァルキュリオスらは再び見合う。


 僕の勝利条件は二つ。


 ヴァルキュリオスの撃破、もしくは結界の解除だ。


 結界さえ解くことができれば僕は闘技大会に出場することが出来る。



「劫火!」


 僕は大賢者の劫火を発動し、敵陣へと放つ。


「二度も同じ手を食らうと思うなよ!」


 だが、強力な魔術もヴァルキュリオスにはいとも容易く一刀両断される。


 くそ、やつの射程に入ってしまった。


「はああ!」


 僕は剣を構え、振る。


「やああ!」


 それに合わせるように、ヴァルキュリオスは剣を振る。


 剣と剣はぶつかり合い、凄まじい衝撃を産む。


 互角、そう思いたかったがとてつもなくヴァルギュリオスの一撃が重い!


 僕は姿勢を崩し後退するが、間髪入れずに次の斬撃がやってくる。


「くっ……!」


 なんとか剣が間に合ったが、力も技量も違い過ぎる。


 このままではいつか死んでしまう。


「ヴァルキュリオス様、援護します!」


 ブラン兵たちがヴァルキュリオスに続いてやってくる。


「させない!」


 リカンツちゃんは既に展開していた召喚獣の召喚をキャンセルし、暴風により敵の足止めを開始する。


「わ、わたしだって……!」


 エルもまた炎魔術でそれを援護する。


「よそ見とは随分余裕になったね、ロクト!」


「あっ……ぐ!」


 まずい、ヴァルキュリオスの攻撃を防ぎ切れない。


「物質変更、壁!」


 僕は咄嗟の判断で物質変更により壁を生成しヴァルキュリオスは壁に激突、一命を取り留める。


 だが、それも束の間。


 きぃんと気味の悪い甲高い金属音が響くと、壁に一点の赤い点が生じ、そこから斬撃が突き抜ける。


「そんな手品で僕の剣術を防げると思ったかい?」


 ヴァルキュリオスが僕に迫る。


 くそ、『名前をつける』を使えないんじゃ、アジェンダ変更が機能しない。


 どうする僕。


 ヴァルキュリオスの攻撃を防げるのはあと何回だろうか。


 ダメだ、ヴァルキュリオスは強すぎる。


 勝利条件その一、ヴァルキュリオスの撃破は事実上不可能であると僕は悟る。


 残る勝利条件はただひとつ、結界の破壊だ。



 ツモイ、やってくれるか。



「──く、手強い!」


 ツモイもまたブラン兵に苦戦を強いられていた。


 やはり30程の数、難しいか。



「大丈夫、わたしならやれます」


 そう呟いたのは、みんなの妹エルだった。


「く……。エルちゃん、何かあるの?」


 ほとんど全ての兵士を足止めしながらリカンツちゃんはエルに反応する。


「はい、わたしをあの魔術師のところに運んでくれればなんとか……」


 それは無茶だ、あのスピード特化のツモイでも接近が難しいのだ。


「うーん、一か八かだけど、やってみよっか」


 リカンツちゃんはそういうと、浮遊した人が一人入れるほどの大きな氷の塊を作る。


「この中に入って」


「はい……はい!」


 リカンツちゃんの指示に従い、エルは氷の塊に入る。


 ダメだ、それでは強度が足りない。


「リカンツちゃん、それじゃエルが……」


「大丈夫、ロクトくんなら」


 そこでリカンツちゃんは僕を指名した。


 見ると彼女の両手には氷で出来た剣があった。


 こんなやり方をニュアンスで理解できてしまった自分が悔しい。


 危険だが、それしかない。



「分かった。行くぞ!」


 僕は彼女の元へと駆け抜ける。


「逃亡とは恐れ入ったよ!」


 それをヴァルキュリオスは逃すまいと追いかける。


 さあ来い、僕の元許嫁は最強だぞ。



 僕はリカンツちゃんとすれ違う。



「後は頼んだ」


「任せなさい」


 この勝負、僕達の勝ちだ。


 ヴァルキュリオス。

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