第67話 そして、明確な殺意が僕を掠めた
いよいよ学園祭開催が明日へと迫った今日、エリカの采配によりほとんど出し物の準備が終わってしまった僕とリカンツちゃんにツモイ、みんなの妹の異名を持つエルを加えたメンバーでリカンツファミリーの部屋にて集まっていた。
「わたし、Eクラスで本当に良かったです! こんなにお友達が増えたんですから!」
いつの間にかすっかり僕たちの輪に馴染んだエルが突然呟く。
「なに、どうしたんだよ急に改まったりなんかしちゃって」
僕はどうしたのか彼女に聞く。
「いえ、学園ですから何が起こるか分からないじゃないですか。ですから感謝の気持ちは早く伝えておいて損はないかと思いまして」
なるほどな、確かに一理あるな。
「確かにね〜。私も友達増えたし、がんばろっと」
リカンツちゃんはエルを抱き上げながら呟く。
「いよいよ明日が本番ですか」
ツモイの剣術もかなり仕上がっている。
この様子なら優勝も狙えるかもしれないな。
「ああ。僕たちはシンプルにメイド兼執事喫茶を楽しんでくるけれど、応援してるよ」
そうだな、一番弟子の晴れ舞台くらいは見に行こう。
あのアレクシアと決別した野外演習以来、僕の生活は明るく豊かなものになった。
剣を振るい、上達しない自分とそれに対する外野の叱責もなく、ポイントの負債も何もない。
確かに学園特有の緊張感こそあったが、たったそれだけ。
僕の身を焦がした復讐心さえも安らぎの中で和らいでいったことを実感する。
「ありがとうございます。さて、私はこの辺にしてそろそろ就寝しようかと思います」
「そうですね、じゃあ私も寝ようかな〜」
ツモイとエルは立ち上がり、玄関へと向かう。
「うん、そこまで送ってくね〜」
それに合わせ、リカンツちゃんも立ち上がりツモイを見送る。
僕も見送りに行こう。
立ち上がり、玄関へと僕も向かう。
その時だった、懐かしくも恐ろしい感覚が脳裏を過ぎる。
「ツモイ、リカンツちゃん、エル、頭を下げろ!」
明確な殺意が僕を掠める。
僕はツモイとリカンツちゃんの頭をわし掴みにしてそのままエルを抱くようにして無理やり下げ、僕も合わせるように姿勢を低くする。
瞬間、視覚では何も捉えられなかったが、第六感がそこに首があれば撥ねられていたと告げている。
もちろん扉には傷一つ付いてない。
だが、確かに斬撃はここまで達していた。
間違いない、僕の剣術と全く同じ流派だ。
「おいおい、マナーがなってないな。ドアがあるんだから、ノックしてから干渉したらどうなんだよ」
僕はドアを開け、誰に攻撃されたのか確認する。
お前は誰だ。