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第65話  そして、妹が増えた

 妹には二つのパターンが存在する。


 ひとつは家系から生じるパターン、こいつは単純だ。


 要は親が同じで歳下の女の子なら誰だって妹だし、区別がつきやすい。


 だが、この世界には妹ならざる妹が存在する。


 もうひとつのパターン、それは属性としての『妹』だ。


 小さく愛らしく健気であるという本来の『妹』に望まれる性質を妹以上に獲得した人物である場合、それは血の繋がりなどなくとも真に『妹』たりえるのだ。


 まさか、そう思うかもしれない。


 僕はそんな与太話を風の噂で耳にした時、そんなことがあり得るのかと苦笑した。


 だけれどまあ、そんな人物が実際に目の前に存在したら、信じる他ないんだよな。


「ロクトお兄ちゃん、ありがとう!」


 僕が彼女の落としたメイド喫茶の飾り付けを拾って彼女に渡すと、彼女はそう答えた。


「ああ、別に気にすることはないよ。クラスメイトだろ?」


 僕がそう彼女に言葉を投げかけると、にこっと微笑んでこうこたえるのだ。


「いいえ、妹です!」


 妹には二つのパターンが存在する。


 ひとつは家系。


 そしてもうひとつは、エルだ。






     *






「む〜、ロクトお兄ちゃんずる〜い……」


 学園祭も近づいた今日この頃、いつものみんなと昼食を取るのが難しくなった最近の僕は、昼の休憩の時間が被っている席の近いエルと決まって簡単なゲームをする。


 ゲームと言っても簡単なゲームだ。


 守り側のプレイヤーは地水火風光闇雷、そして無属性の合計八種類の魔石を横並びに四種類並べて仕舞える小さなジュエリーボックスに好きなように仕舞う。


 次に攻撃側が同様のジュエリーボックスに八種類の魔石から好きなものを嵌め、守備側に見せる。


 この際、守り側の配置した魔石の位置と属性が完全一致していたらHIT。位置が違うけれど属性が一致していればBLOWとなり、それぞれHITとBLOWの数を伝え、再試行させる。


 これを繰り返し、ジュエリーボックスの属性と位置が完全に一致した時点で攻撃のスコアが確定、試行した回数がスコアとなる。


 このスコアの少ない方が勝ち、多ければ負けだ。


 そして今回は僕が5、エルが6で僕の勝ちだ。


「勝ちは勝ちだろ、エル。さ、食堂に行こうぜ。今日は僕のセンスに任せてくれよ」


「うわーん、次は勝ちます〜!」


 僕とエルには毎回ゲームで勝った方が一緒に食べるメニューを考えるという取り決めがある。


 というのも、僕の偏食ぶりに痺れを切らした彼女が僕の食生活を改善させるべく、指輪を用いた決闘を使って挑んできたのが事の始まりであった。


 偏食というか、和食に随分ハマってしまい、あれよあれよとうどん漬けにってしまった僕にとってはありがた迷惑な話である。


 けれど邪険には扱えない。


 何せ彼女は僕の妹であり、健気に食生活を気にしてくれているのだ、ここはお兄ちゃんとして妹の進言に聞く耳を持たねばなるまい。


 まあ、僕が負けたらなんだけどね、がはは。

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