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第62話 そして、邪悪は笑みを浮かべた

 やっとついた。


 港の優しい潮風が鼻腔をくすぐる。


 兄はこの魔導船に乗ることに憧れていた。


 だが、追放という形でこの学園に来たのだ、きっと複雑な心境だったろう。


 そんなお兄ちゃんに久しぶりに会えるのだ。


「待っててね、ロクトお兄ちゃん」


 いつになく胸が高鳴る。


 学園祭は6日後。


 それまで街の観光でもしようかな。


「お嬢様、こちらです」


「ありがとうね、おじさん」


「は、身に余る光栄です」


 護衛のおじさんは指ぱっちんで兵達に道を空けさせる。


 名付けて指ぱっちんおじさん、だろうか。


 さあ、せっかくの新天地なのだ。


 存分に楽しまなければ損だろう。



「そこの君、ちょっといいかな」


 ブロンドの美しい髪の青年が私に声をかける。


 どことなく胡散臭い雰囲気。


「ご機嫌麗しゅうございます。失礼ですが、どちら様で?」


「おっとこれは失礼。私はアリエル。この学園で生徒会長を務めさせていただいている者だ。そこの魔導船から不審な反応があったとのことで、調べに足を運んできたのだ。少し調べている間、お客様はそちらの待合室にて待機していただきたい」


 降りてそうそう、乗っていた人ならまだしも降りた先の人間が知っているとは思えない。


 魔術に疎いのでその辺はわからないが、どことなく何か不自然な感じだ。


 だが、怪しいが黒と決まったわけではない。


 ここは従う他ないだろう。


「貴様、この方がブラン家次期当主候補、アリス・ド•ブランと知っての狼藉か」


 指ぱっちんおじさんはアリエルと名乗る男の前に立ち、私たちいかけられた容疑を侮辱と受け取ったのか、反発する。


「いいのよ、下がりなさい」


「し……しかしお嬢様!」


「下がれと言った方が分かりやすいかしら」


「これは失礼を。この御無礼、何なりと断じてくださいませ」


 指ぱっちんおじさんは深く頭を下げる。


「気にしないでくださいな。それよりもほら、待合室、ご案内してくださいます?」


 この男は確かに怪しいが、だからといって恐れるまでもない。


 元より何かあればこの邪悪を祓う聖剣『原初の神の熱意(ブラネウシス・ハート)』で叩き切ればいい。


 それにここにはお兄ちゃんがいるのだ。


 迷惑かけたいわけではないが、いつもいざという時には助けてくれる。


 お兄ちゃんがいるのなら、私はきっと大丈夫。


 さあ、鬼が出るか蛇が出るか。


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