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第61話 そして、不干渉条約を締結した

「……で、話題はなんなんだよ」


 僕はクロエを問い詰めるような形で質問する。


「では猥談でいかが?」


 彼女は以前と表情を変えず淡々と告げる。


 いや、なんでだよ。


「もう少し取っ付きやすい話題で頼むよ」


「冗談よ、猥談は好きだけれど。そうね……では、家系の話とかいかがかしら?」


 掴みどころのない彼女から唯一と言ってもいいほど、明確な意味を含んだ言葉が出る。


 彼女は僕について知りたがっている。


 果たして、僕が自分語りをすることで何か僕にメリットがあるのだろうか。


 むしろ彼女に話すことは、デメリットが発生するリスクしかない。




「いや、その話題は僕にとって面白くないからやめておきたいな」


「そう、残念だわ。もしかして追放(・・)でもされたのかしら?


 そう言って彼女はまたも不敵に微笑む。


 その笑みが、僕は嫌いだ。


 

「さあどうだか。そう言うクロエさんはどうなんだよ」


 僕は話を逸らしたくて、クロエさんに話題をそっくりそのまま返す。


「それはできないわ。特に貴方にはね」


 なぜ僕に限ってできないのか、考える。


 昔から僕たちの家の領地が近くて拡張出来ずにギクシャクしていたとかそういうことかと思ったが、そもそも僕は身分を告げていない。


 いや、僕はブラン家の名はとうに捨てたのだ、もう僕には関係ない話か。


 それにしても、彼女の素性を僕に教えることができない理由に検討がつかない。


 一体どういうことだ……?


「後学のために簡単な理由だけでも聞かせてくれないか?」


「嫌よ。そうしてしまうと、私の悲願から遠ざかってしまうもの」


 初めから僕から聞くだけ聞いて何も教える気なんて微塵もなかったな、こいつ。


 授かりはするが、与えはしないということか。


 これじゃあ今僕が彼女としているのは世間話というより、尋問だ。


 とにかくクロエは何か嫌な感じがする。



 今回彼女との会話で得たものは何も無い。


 いや、僕は彼女と何かしらの接点があるという情報が得られただけ収穫か。


「やっぱり僕は君が嫌いだよ、クロエさん」


「あら、気が合うわね。私も心底貴方が嫌いよ。話しかけた私が悪かったわ。今後は互いに不干渉でいきましょう」


「ああ、そうしてくれ」


 彼女からは得体の知れない気持ち悪さを感じる。


 もう二度と話したくはない。


 だからこの会話が最初で最後。


 次にもし言葉を交わすことがあるとしたら、きっと命のやり取りとか、もっと慄然とした何かになるだろう。

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