第59話 そして、モノマネが炸裂した
「なるほど、Eクラスはツモイを除いて出し物か。いいだろう、ではこの後にやる内容を決めるといい。誰かリーダーに相応しいのは……」
ヤライ先生の言葉を聞いたエリカの目は非常にキラキラしている。
ああ、リーダーやりたいんだなこれ。
「エリカ、お前に任せようか」
「え、いいんですか〜!?」
かくして、出し物大会のリーダーはエリカに決まった。
時にツモイは出し物に参加しなかった。
「なあツモイ、お前が参加しなかったのは闘技大会に出るためなんだろ?」
隙あらば僕にくっつこうとするツモイに僕は問う。
「はい、どこまでこの腕が通用するのか試してみたかったので」
やはりというか、ツモイらしい。
ツモイは時折強くなることに対して異様なまでのストイックさを見せる。
つまり今回もまた強くなるために戦いに挑む、そういうことだろう。
「では後はエリカに頼む。Eクラスが何をするのか決めてくれ」
「はい、任されました!」
エリカは教壇に立つ。
……一回立って見たかったんだな。
「では諸君、会議を始めるとしようか……!」
エリカのその立ち振る舞いというか、その仕草はヤライ先生のものだった。
つまり、モノマネ。
「なっ……。早く始めろ」
ヤライ先生は顔を恥ずかしさから赤くしながら会議を催促する。
さて、僕たちの出し物は何になるのかな。
*
「兄さん、どうかされたのですか?」
俺の兄であり生徒会長であるアリエルが俺を生徒会室に呼び出すとは、やはり何かがあるらしい。
「ああ、今回お前を呼んだのは他でもない。シュトリ、お前にはロクトを殺してもらう」
今、兄さんの口から聞こえた言葉は、強烈なパワーを持っていた。
今までに兄さんは殺せという言葉を発したことはなかった。
だが、今回は違う。
それもよりによって明確に『ロクト』だ。
何故? そう思った。
アイツに関係あるのは俺だけだと思っていたが、なぜ兄さんがよりにもよって『ロクト』の命を狙うのか。
「兄さん、どうしてロクトなんですか?」
俺はそれを確認しなければならない。
「ああ、そういえばお前にはまだ話していなかったな。あの収穫の世代の一人、ブラン家の長男の話を」
なんだ、収穫の世代って。
ブラン家って、なんだ。
「兄さん、俺には言ってる意味が分かりません。教えていただけますか」
「ああ、お前も知らなけらばならないだろうな。この世界の隠された機能を。——ああ、実に楽しみだ。神話の再現、か」
兄さんはこれまでに見せたことのないような不敵な笑みをこぼす。
俺は何も知らなかった。
無知が怖い、恐ろしい。
ロクトを殺すこと自体に躊躇いはない。
だが、その先に何が待ち受けているのか、知らなければならない。