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第58話 そして、異常事態が発生した

「面白そう〜! ね、みんな出し物やろうよ!」


 エリカが叫ぶ。


 もうこうなってしまえば、エリカを止めるものはいない。


 何せエリカの使用人は既に30人を超えている。


 もはや歩く学級と言っても過言ではなく、その発言力は極めて大きいのだ。


「エリカ様、流石です!」

「崇高なお考えです、エリカ様!」


 エリカの使用人たちが一斉にエリカを讃える。


「ふふん、そうでしょうそうでしょう!」


 エリカの使用人は女子が多い。


 そしてエリカの行動に合わせて黄色い声援が毎回飛ぶのだから、流石と言わざるを得ない。


 きっとエリカのことだから心底尊敬されているんだろう。



「ほう、随分と威勢がいいなエリカ。出し物に参加したい生徒は……」


 細く白い腕をピンとあげる生徒が一人。


 というかそれは、僕の大切な元許嫁、リカンツちゃんだった。


「はい……!」


 彼女が参加するといえば僕もする。


 何せ僕は彼女の使用人だし、第一に彼女が楽しんでいるのならそれに越したことはないからだ。


「ほう、リカンツか。他には?」


 残る使用人でない生徒はエルとクロエ、そしてツモイのみ。


 だが、あげたのは最初にクロエ、僅差でエルの二人ともだった。


 意外だ、クロエという人物は意図的に人との接点を絶ってきたように見えていたのだから。


 品行方正、容姿端麗。


 常に余裕のありそうな優雅な風格は彼女の他に持ち合わせる人物はそうそういないだろう。



 可もなく不可もないが、僕たちリカンツファミリーと同じ負債スタート組。


 僕たち程ではなかったが、彼女もまたポイントマイナスからのスタートだった。


 マイナス147万点、それが彼女の点数。


 僕はその点数を忘れた時は一度もなかった。


 この点数は、彼女は入学試験を合格しておきながらその日のうちにポイントを減らしていることを意味している。


 騙されたのか、取引したのか、決闘を申し込んだのか、挑まれたのか。


 僕は学園に来てからというもの、そのポイントを巡る考察が脳裏に焼き付いて離れなかった。



 最も、謎が深まる理由はもうひとつある。


 それはクロエ自身が全くといっていいほど他人と関係を築かないのだ。


 昼食の時間になれば寮へ帰宅、授業が終わればすぐに寮へ帰宅。


 とにかく人との接点を意図的に持たないようにしている。


 そんな得体の知れない彼女が僕は怖い。


 その彼女が明確に自分の意思で出し物に参加すると表明したのだ。


 そう、これは異常事態なのだ。


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