第57話 そして、優しくなってた
現在のポイントは401万か。
授業中の僕、ロクトは窓から見える大きな楓を眺めていた。
「──然るに四大神と呼ばれているが、まあ厳密には五大神になる。ここら辺テストに出るから覚えておくように」
ヤライ先生の授業がいい感じに心地よく、眠くなってくる。
思えばEクラスの生徒もだいぶ数を減らした。
弱いEクラスの生徒が一番先に誰かの使用人になるか死ぬかで敗れていくのはまあ普通に考えれば妥当だ。
既にもうEクラスは壊滅したと言っても過言ではない。
残る使用人でない学生はエリカ、リカンツちゃん、そして前回の演習でアレクシアに操られていたみんなの妹ことエル、そして大して接点はないが僕と同じ赤点スタートのクロエさんだけだ。
まあ、ほとんどのやつがエリカの使用人になってしまったんだけど。
エリカもまたとんだお人好しだ。
実質終身刑の異界送りになりそうなEクラスの負債だらけの生徒を演習で手に入れたポイントを余すことなく使って次々と配下に加えていく様は圧巻だった。
いまやエリカはEクラスの顔、学級の中心人物と言っても過言ではない人物となってしまった。
もう彼女とは放課後以外には全然接点がない。
……どこか遠くに行ってしまったような、届かない星のような存在になってしまったはずの彼女と会話できるだけでも贅沢ってものか。
「では、アーリアス史についての授業はこれで終わりとする。続けて一週間後の学園祭について説明しよう」
学園祭、そんなものもあるのか。
しかしこの学園のことだ、どうせポイントが増減するろくでもないイベントに違いない。
「野外演習と同じく一年が参加できる二大イベントの一つなんだが、基本的に前回の演習と違って大きくポイントが減ったりすることはないし、参加も任意だ」
ヤライ先生の説明を聞いた僕は、前回と比べて随分生易しくなったと思った。
何せ野外演習の無人島サバイバルは強制参加、人数こそ公表されてはないが、死人もかなり出ているはずだ。
それに比べれば任意参加であれば脱落も死亡もない。
これは学園の対応としては破格だ。
「学園祭の期間中、諸君らが参加できるのは二つ。一つはクラスの出し物大会。そしてもうひとつは闘技大会だ」
闘技大会ねぇ。
「出し物に参加した生徒はクラス毎に獲得したポイントの順位な応じてポイントが貰え、かつ稼いだポイントは参加した生徒で山分けとなる。そして闘技大会は優勝者総取りのトーナメント戦だ。参加は50万ポイントからだ」
50万か、つまり20人が参加していれば優勝者は1000万ポイントを手にすることになる。
確かにこれは大きいが、既に僕たちリカンツファミリーのポイントは401万ポイント、無理をする必要はない。
今回は不参加が安定、挑戦して出し物だろうか。
まあどちらにせよ、闘技大会にはわざわざ出る必要はない。
ここはひとまずダンジョンに潜って──
「面白そう〜! ね、みんな出し物やろうよ!」
エリカが叫ぶ。
そうだよなぁ。
面白いもの好きの彼女が参加を表明するのは、目に見えていたことだ。
今回は特にリスクがかなり小さいイベントだ、そういう運びになるのは妥当だろう。
さて、僕はどうするべきか。