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第56話 そして、牙は古龍を穿いた

「師匠、ここはお任せを」


 ツモイは僕にそう呟くと、一歩前に出る。


「ああ、行ってこい。ちょうどいい練習になるんじゃないか?」


 学園迷宮、闇属性のSランクダンジョンボスはこの世のあらゆる術理を解き明かしたと言われる伝説の老古龍ドレイクだ。


 確かに一見すると強そうに見えるが、正直Sランクでも魔物はそれほど強いとは感じなかった。


 きっとそれはボスにも言えるだろうし、このダンジョンの雑魚はもう余裕で倒せるようになったツモイの修行の成果を見せるには丁度いい相手だろう。


「ツモイちゃーん、がんばれー」


「ファイトーッ! きっとできる!」


 後ろで控えているリカンツちゃんとエリカの声援が聞こえる。


「ではツモイ、参ります」


 ツモイは跳躍し、一気にドレイクへと距離を詰める。


「おい、仲間が行ってるんだ、何突っ立ってんだよ! 虐殺されるぞ! 見殺しにする気かよ!」


 先程助けたシュトリの使用人たちが声を荒らげる。


「別にそんなつもりはないんだけどな。ほら、よく見ろよ」


「何を言ってやが……る……?」


 ツモイは一人でドレイクに互角、いやそれ以上に押している。


 ドレイクは次々に魔方陣を展開するが、その全てをツモイに断ち切られ、強靭なドレイクの爪もツモイのスピードを捉えることが出来ない。


 対してツモイの斬撃は確実にドレイクの外皮を破壊していく。


 そう、一撃で仕留めるために。


「くっ!」


 瞬間、ツモイは逃げる方向を間違えて尻尾に弾き飛ばされ、壁に激突する。


「この程度のダメージなら丁度いいだろうな」


 僕はツモイの戦況を分析し、結果を呟く。



「狂ってやがる……。お前の世迷言を一瞬でも信じちまったのがバカバカしい! ええい、俺が助ける!」


 使用人はツモイの元へと駆け寄ろうとする。


 だけれど、僕はそれを肩を叩いて制止する。


「まあ見てろって、僕の最高の一番弟子の晴れ舞台をな。おーいツモイ、整ってるんだろ? 次で仕留められるか?」


 そう、ツモイの源流である八岐流はカウンターが基本。


 ドレイクは余裕たっぷりに灼熱のブレス攻撃と魔術でツモイを仕留めようとしている。


 つまり最大のチャンスだ。


 

 僕の呼びかけに応えるように、壁にめり込んだツモイは力任せに壁から這い出る。



「はい、ご照覧あれ。これなるは八岐流壱の型にして究極奥義、その先にある私だけの極地──」


 ツモイは右足を下げ、弓のように剣を番える。


「──│烈一閃牙突三連れついっせんがとつさんれん!」



 その放たれた一撃に、使用人の男は固まる。


 心臓を目掛けた鋭い一突きが三つの刃となり、ドレイクを襲う。


 その一撃を受けたドレイクは、自らが死んだことにすら気が付かずに魔方陣を展開させる。


 直後、ドレイクは目を開き、不気味に微笑んだまま横に倒れ、霧散する。



「師匠! やりました!」


 ツモイは僕にVサインを送り、にっこりと笑顔になる。


「ほらな、言っただろ?」


 僕は使用人に問う。


「は……ははは。こりゃもう笑うしかねえな」


 これで初回クリアボーナスは僕たちのものだ。


 シュトリの使用人は既に使用人でなくなっているため、シュトリには点が入らない。


 まあ、あいつは元々かなりの点数を持ってると聞くし、この程度好きにやったところでバレないだろう。



 こうして、ダンジョン初回ボーナスは全てリカンツファミリー一同が獲得した。


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