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第53話 そして、夢を見た

「おい、冗談だろ……? アレクシアが戻ってないなんてあり得るはずがないんだ。俺の聞き間違いだよな。もう一度言ってみろよ、お前……! 笑えないんだよ!」


 主人(マスター)、シュトリはアレクシアの行方不明を告げた使用人の三人のうち一人を殴り、蹴り、罵る。


 その耳障りな音が部屋にこだまする。


 ああ、だから目立つのはやめておけと先輩使用人として忠告したのに。


 「がっ……。主人、ごふっ! 協力者曰くロクトという人物がアレクシアを倒したとのことです……」


「……! にわかには信じがたいが、アイツの情報なら……。ロクト、あのゴミクズはあの日に確実に殺しておくべきだった……。アレクシアの肉体は俺のものだってのにさあ!」


 後輩の顔はひどく膨れ上がっていた。


「丁度いいや、お前とそこのお前とお前。今からSランクダンジョンを攻略してこいよ」


 Sランクダンジョン、それは何でも無茶だ。


 確かにS以外は全てリカンツという同期に全て踏破されてしまったが、だからといってそれは不可能なのだ。



 この学園でSランクを攻略できる逸材は10年に一人と言われている。


 そんなところに放り込まれたら、特に秀でた能力もない通達役の三人は間違いなく死ぬ。


 ああ、また人が死ぬのか。


 もううんざりだ。


 何が使用人(コンパニオン)だ、何が主人(マスター)だ。


「流石にそれはないんじゃないか、クソったれのシュトリ」


 俺の口から自然に出た言葉だった。


 周囲の使用人たちが騒然とする。


 構うものか、俺はもうこんな日々にお別れができるならば、何でもいいのだ。


 それこそ、死でもだ。


「へえ。いいね……。お前!」


 シュトリは俺の胸ぐらを掴む。


「お前がこいつらを率いてSランクダンジョンに行ってこい。ほら、早く行けよ」


 俺の奴隷紋が光り輝く。


 それでいい。


 もう何もかもが終わる。


 最期は故郷で迎えたかったが、こいつに終始仕えるくらいなら犬死にのほうが数段マシだ。






      *






 迷宮門はいつもと変わらないのに、今日はいつもの数倍高く聳えているようなそんな感覚を覚えた。


「先輩まで付き合う必要なかったんですよ。あんなこと言い出すから」


 殴られ放題だった伝達役の後輩は愚痴を漏らすように俺へと語りかける。


「別に俺がやりたいようにやっただけだ。お前たちをかばった訳じゃないぞ」


「先輩、俺あんたリスペクトっすよ。本当はこんなこと言う予定は今後一切無かったんすけど、死ぬんだったら言っといた方がいいかなって」


 横にいた殴られてない方の二人のうちの一人が俺に呟く。


「そういうのやめろよ、俺は世辞が死ぬほど嫌いなんだ」


 ああ、分かってる。


 伝わってるよ、お前が本心で呟いたことは。


「へへ、すんませんす」


 今の会話を聞いて少し気が楽になったのか、唯一言も喋らずに部屋の片隅で震えていた男はこちらを向く。


「先輩、この学園を卒業した後の話をしませんか?」


 なんだ、どうした。


 そんな未来、俺達にはないというのに。


「俺たちはどう転んでもシュトリの使用人だぞ……。そんな未来——」


「いえいえ先輩、もしもの話ですよ」


 もしも、ここじゃないどこかへ行けたのなら。


「もしも……」


「そうです、もしも俺たちがここを卒業できて領地を貰ったら、立派な城でも建てましょうか。あーでもそれだと掃除が大変そうだなあ。洗濯物も大変そうだ」


 そんなありもしない将来の話は膨らんでいく。


「そうなったら誰か雇わないとな」


 俺はその夢物語に助言する。


「ええ、それは俺に任せてくださいよ。こう見えても俺、領地にいた時は人望に厚かったんですから」


 その時の俺たちは何も怖くなかった。


 たかだかSランクダンジョン、俺たちの夢には遠く及ばない。


 門が起動する。


 俺たちの冒険はここから幕を上げる。


 ……上がるといいなあ。


学園祭編ついにスタートです!


なにやら今回も一筋縄では行かない様子……。


おもしろい 続きが気になる


少しでもそう思われましたら、是非ともブックマーク、高評価をいただけると幸いです。


ブクマと高評価は、作者のモチベーションになり、励みになり、とても嬉しいものです。



そのワンアクションによって、私は書いていてよかったなと思いますし、今後とも面白い作品を目指して書いていけます。


繰り返しになりますが、ほんのちょっとでも面白いと思われましたら、ブクマ高評価、お願いします!

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