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第52話 そして、最初の復讐は幕を閉じた

「なあ、何か言い残すことはあるか?」


「……ないわ。いっそ殺してしまいなさい」


 アレクシアはぽつりと呟く。


 殺してしまえ、か。


 そう言われて殺すやつは甘い。


「なあ、生き地獄って知ってるか?」


「アンタ、何する気……」


「そのまさかだよ。そんな簡単に死ねると思うなよ。確かお前は使用人であることを心底嫌がってたな。お前の言うところの下民の下につくのがそんなに嫌か?」


「いや……やめて!」


 僕は都合の悪くなった彼女の態度を見て、吐き気を催した。


「実際はそうでもないさ。学園に来る前には下に見てた連中の靴を舐めて、媚びへつらって、身体を使って奉仕するのは気持ちがいい、そう思わないか、なあアレクシア」


「違う! そんなの私じゃない! いやあ!」


 アジェンダ変更──


「いいか。僕の命令は、絶対……」


 異なる視点から今一度世界を見つめ直せ。


 そして学園では二度と僕に顔を見せるな。


「……服従だ」


 その言葉を聞くと、アレクシアの顔から表情が消える。


「はい、ロクト様」


 彼女は立ち上がると、船を目指す。


 ついには姿が見えなくなり、僕の復讐はひとつ終わりを告げた。






      *






「ひと仕事終わったんだ、さっさと学園で祝杯と行こうじゃないか」


 すっかり元気になったアベルが僕の肩をぽんぽんと叩く。


 こいつ、演習中何もしてなかったくせに何を。


 もしかしてこいつ、演習の間一人だけ遊んでてアレクシアに利用されたんじゃ……。


 ああ、考えるだけで頭が痛くなってくる。


「学園にその減らず口を減らすアイテムが扱わていることを願うよ」


 僕は辟易してため息をつく。


「お疲れ様、ロクトくん」


「師匠。大立ち回り、見事でした」


 リカンツちゃんとツモイは僕を労う。


 ああ、こういうのでいいんだよこういうので。


 アベルのは無しだ。



「ロクトくん、教えて。アレクシアさんと何があったの」


 だが、エリカの目線だけは強烈だった。


 アレクシアと僕の間に出来ていた決定的な溝の正体を、エリカは知らない。


 だからこそエリカはこの結末に納得のいく答えを見つけられてないのだ。


「ああ、けれどここから先の語りは僕の黒くてドロドロした負の感情の話になる。それを聞いて僕を嫌いになるかもしれない。それでも僕はエリカに聞いて欲しい」


「うん、ちゃんと嫌ってあげるよ。だから安心して」


 それはよかった。


 僕にはリカンツちゃんがいる。


 だけれど彼女と僕の関係を語るとするならば魔導書一冊分の厚さにはなる。


 つまり彼女と僕の縁は深く、僕の決定を彼女は何でもはいと全肯定してしまうだろう。


 ツモイもまた剣を極めることにしか興味がないし、おそらく僕の行動の善し悪しなど気にしてはいないはずだ。


 だが、エリカは違う。

 

 エリカは学園のルールにも囚われず、使用人や主人、クラス、あらゆる固定観念を度外視して自分の尺度で物事を見ることができる。


  もし僕がエリカと出会わなければ善悪の区別がつかなくなり、アクセルしかない暴走列車そのものだ。


 そうだ、僕はずっとエリカに裁定をして欲しかったのだ。

 


「ありがとう、エリカは優しいな。話は船の中でしよう。……帰ろうか、学園に」


 島一つを舞台にした演習は僕の目標のひとつ、アレクシアへの復讐を成し遂げ幕を閉じた。


 最初の演習でこれなのだ、学園での生活、これから先にはどんなことが待ち受けているのだろうか。



 空を見上げる。


 いつもと変わらないはずなのに、今日は少しの雲を残してどこか透き通ったような清々しい青色だった。

無人島サバイバル編、これにて完結になります。


ここまでお読み頂き、本当にありがとうございます。


これでひとつの復讐は幕を閉じますが、ロクトの物語はまだまだ続いていきます。


ここで、ひとつ読者様にお願いさせてください。


ブックマークや評価をいただけますと、わたくしのモチベーションにも繋がりますし、とても嬉しいものです。


面白いと感じていただけたなら、もしよろしければ下の星をポチッと押してブックマークしていただけるとめちゃくちゃ嬉しいです。


最後に、ここまでお読みいただき本当にありがとうございます!


これからもロクトたちの戦い見守っていただければ幸いです、よろしくお願いします!

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