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第40話 そして、仁義なき戦いが幕を開けた

「あ、あの……」


 そういえば僕に抱きつきっぱなしだったエルが僕に話しかける。


「こ、こわかったぁぁ」


 後ろで僕の影に隠れっぱなしだったエリカもまた僕に抱きつく。


「ロクトおにいちゃん。ロクトおにいちゃんって呼んでもいいですか?」


 何だこの子は、可愛い!


 エルは上目遣いのまま僕に問いかけた。


「ああ、いいよ」


 可愛いは正義、いいでしょう。


「やった! あの、今日は助けてくれてありがとうございました。なんてお礼をしたら」


 彼女はぴょこんぴょこんと飛び跳ねる。


 本当に純粋無垢なんだな。


「いいよ、お礼なんて。それより一人で大丈夫か? 多分浜辺までいけば安全だと思うけど」


「はい! 私は大丈夫です! 一人じゃありませんから!」


 彼女はにへへと笑ってみせた。


 少し心配だけれど、これなら大丈夫そうだな。


「それはよかった。ほら、落し物だぞ。今度は失くさないようにな」


 僕は足元に転がっていた指輪を彼女に投げる。


「これは私の……。いいんですか? 奪って逃げちゃった方が良かったと思うんですけど」


 僕がそんな小賢しく見えるってか、生意気な妹め。


「それは君が妹属性じゃなかった場合の話だな。僕はおにいちゃんなんだろ? 妹を大事にして何が悪いかよ」


「……えへへ。素敵なおにいちゃんで良かったです、またいつかお会いしましょう! ロクトおにいちゃん!」


 彼女は駆けていく。


 きっともう大丈夫。



「やっぱロクトくんは優しいね」


 エリカは僕を見つめていた。


 その情熱的な視線に、僕の脳が揺れる。


……行けない行けない、しっかりしないとな。


「ありがとう。さて、帰ろうか」


「うん!」


 僕たちは地下へと戻っていった。






     *






「むう〜。参りました」


「ふふ、さすがに風火の遊戯では私に有利すぎましたね」


「むうー! もいっかい!」


 僕とエリカが帰宅すると留守をしていたリカンツちゃんとツモイはボードゲームで随分盛り上がっていたようだ。


「ただいま。何やってたんだ?」


 なにやら楽しそうだったので、僕は彼女たちに聞いてみた。


「これは師匠、お帰りなさいませ。これなるボードゲームは風火に伝わる伝統的な遊戯、将棋というものです。師匠もお遊びになられますか?」


 うん、面白そうだ。


 ルールはチェスのようだったが、さて。


「いいね、やってみようかな」


「えー、ずるーい! わたしも〜! お願いツモイちゃん」


 エリカはツモイに泣きつく。


「ええ、もちろんエリカもどうぞ」


「やった! じゃあ行くよ〜! ロクトくん!」


 彼女は満面の笑みで対面に座る。


 その笑顔を見て海辺でのことを思い出す。


 だが彼女はどこ吹く風といったからっと晴れた青空のような表情をしていた。


 意識し過ぎだな。


 よし、やるか。


「エリカちゃん、ロクトくんはこういうの結構強いんだ。がんばってね」


 リカンツちゃんはエリカサイドか。


 まあ、幼少の時からいつもボードゲームではぼこぼこにしてたから仕方ないとはいえ、寂しい。


「分かった! よーし、負けないぞ!」


「やるからには全力でやるか。よし」


 負けず嫌いの血が騒ぐ。


 完膚なきまでに叩きのめしてやろう。


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