第35話 そして、反撃の狼煙を上げた
11枚、大戦果じゃないか。
「やるじゃないかツモイ。このまま勝ち逃げしてもいい……いや、するべき枚数だろうな」
正直、ツモイがここまでやるのは予想外だった。
これは僕も負けてられないな。
「ちなみにロクトくんはいくつ稼げたの? 私はロクトくんの言いつけ通り1枚も獲らなかったけど」
リカンツちゃんは完全に僕の稼ぎに頼っている。
なぜなら、その方が確実だし安全だからだ。
「それなら見せるよ。確かベッドの下に……」
僕はベッドの下に箱を作っておいた。
そして事前に行動を操作するアジェンダ変更をかけておいた生徒には僕の指定したいくつかの場所にバッジを埋めさせておいたのだ。
後は物質変更でうまくそれを運んで、ベッドの下に送っていた。
この大作業のせいで僕は気絶していたんだろうな。
僕は完全に真四角で真っ白、開け口すらない直方体の箱を手に取り、物質変更で開ける。
「よし。開けゴマ」
そこには、箱いっぱいのはち切れんばかりのバッジが入っていた。
おお、かなりの枚数が入っているな。
1つ2つと数えていくと、合計56枚のバッジが入っていたようだ。
「す、すごい……」
「え〜! すごい! どうやったの?」
「流石は師匠です」
バッジを前にして、みなは思い思いの言葉を口にする。
「ざっと1120万ポイント分だな。僕とリカンツちゃんはこれで負債を返上する算段だよ」
これでようやくスタート地点に立てる。
「よ……よ……」
リカンツちゃんは目に涙を溜めていた。
「よかったぁぁぁぁ!」
彼女は勢いもそのままに、僕に抱きつく。
理由は考えずとも分かるよ、リカンツちゃん。
「私、本当はずっと不安だったんだ……。いつ異界送りになってもおかしくない生活の中で、どうやってこの学園生活を乗り切ろうかなって……。でもそのことをロクトくんに相談したら、ロクトくん自分責めちゃうなって……」
明るく振舞っていたリカンツちゃんだからこそ一番不安だったのは、僕でも分かる。
僕を使用人にしてくれたあの日、僕は彼女を後悔だけはさせないと考えていた。
「僕を信じてくれてありがとう。随分待たせちゃったね、リカンツちゃん」
「ううん……ううん……」
リカンツちゃんの手にはぎゅっと力が込められている。
無理もないか。
このバッジを持って学園に帰ればオールオーケーだ。
「さあ、反撃といこうじゃないか」
僕は燃えていた。
学校行事のポイントの増減はかなり大きいようだ。
これならこの地獄のような日々から解き放たれる日も近いだろう。
だが、まずは目の前のタスクから処理していこうか。
この演習、必ず成功してみせる。