第31話★そして、俺は引き金を引いた
「どうも。100万ポイントきっちり受け取ったぜ」
俺はアレクシアから情報提供料として100万ポイントを受け取る。
「ええ。それにしてもまさかバッジが今回の鍵だったなんて驚きだわ。アベル、本当アンタの鼻は効くわね。……私の今のポイントは……98万ね」
俺がアレクシアに情報横流しにしたと知ったら、流石のロクトでもぶちギレて俺を殺すかもしれない。
今回は上手くいくといいが。
アレクシアは目論見通り、指輪を使ってポイントがマイナスになる100万のベットを選択する。
「まあな。ちなみに情報元はお前の大好きなロクトだよ」
その言葉を聞くと、アレクシアは態度を豹変させて俺の襟を掴む。
「アンタ、あんな下民なんかとつるんで何がしたいワケ!? 私の耳を穢す趣味でもあるのかしら」
いいぞ、もっと激昴しろ。
「いいやアレクシア、今回はお前の味方だよ。いいこと教えてやる、ロクトもまた100万のテーブルにいる」
俺は最大の餌をここで投入する。
「そう、あの下民がね。いいわ、今回の件は聞かなかったことにするわ。ただしアベル、アンタはこの一件に絡んできたら、即刻殺すわ」
「いいよそれで。俺は初めからロクトに興味がないからな。お前が興味津々だったから調べてやったまでさ。ほら、なんだっけ。お前の言葉でいう『下民』に俺は構ってられないのさ」
アレクシアは大きくため息をつくと、俺の襟から手を離す。
「それならいいわ。ロクト、ロクトロクトロクトロクト! あの目障りな害虫が気に食わない。絶対にここで殺すわ!」
残念だがアレクシア、お前のその儚い願いはきっと届かない。
ロクトはSクラスで見た誰よりも強い。
学園最強どころか、世界最強なんじゃないかって思えるくらいには強い。
お膳立てはした。あとはお前が力を示せよ、ロクト。
その時、突如茂みを掻き分けてぼろぼろになった大男がこの場に現れる。
「このグラズ様がどうしてこんな目に……! ちょうどいい、魔導船の中でぶるってた雑魚。お前にはグラズ様の八つ当たりに付き合ってもらうぜ!」
突如現れた男は俺に向かって猪突猛進する。
「……お前の敗因は、エリカが見ていないところで俺に挑んだことだよ。……死に晒せ」
俺は引き金を引く。
「あ……」
その一撃は脊髄を破壊し、確実に絶命させる。
「流石はアベルね、神殺しの末裔、悪魔の王子。容赦って言葉を知らないように見えるけど」
「そんなことないだろ。遅効性か即効性かだったら、殺しは即効性の方が優しいってもんだ。それに生徒会長さんも言ってたな。『この島では何をしても自由』だったか」
俺はもうぴくりとも動かず冷たくなったグラズからバッジを剥ぎ取る。
エリカたちには悪いが、もう後には戻れない。
さあ、狩りを始めようか。